2025年度、北海道内でヒグマ警報などが出された17の市町村で、合わせて530頭と異例の数のクマが駆除された。
クマの駆除にどう向き合うのか、道南で取材した。
北海道北部の苫前町で11月、体重380キロの巨大グマが捕獲され、その後駆除された。
2025年度、ヒグマ警報や注意報が出された北海道内17の市町村で駆除されたクマは530頭にのぼる。
中でも多いのが北海道南部で、半分を超える約300頭が駆除されている。
「持ち込まれたクマや他の動物は、この台に置いて炉の中に入れて灯油で焼却する」(南部桧山衛生処理組合 上戸等場長)

江差町や上ノ国町など、周辺5つの町のゴミ処理を行うこの施設では、駆除されたクマの焼却処理も行っている。
2025年度は、上ノ国町で105頭ものクマが駆除され、焼却が間に合わない事態となった。
「今年は120頭くらい持ち込まれている、去年は30頭くらいだったので、4倍です。ちょっと焼却が間に合わないという状況が、9月10月は続きましたね」(南部桧山衛生処理組合 上戸等場長)

焼却炉はひとつで、焼却できるのは1日2頭である。
「焼却炉に入りきらなかったクマは、この冷凍庫に一時的に保管されます」(阿部空知記者)
冷凍庫にも収まらない時は、埋立地で処理をしたこともあった。さらに経費もかさんでいる。
クマの焼却に使う灯油は1回100リットルほどである。
2024年は年間で約3000リットルであったが、2025年はすでに7000リットルほどになっている。

「2025年度の灯油代の予算が40万円くらい、すでにその倍以上の90万円くらいかかっています。例年とは全く違う焼却回数なので、そういった部分で、(他の)業務に多少の影響は出ますね」(南部桧山衛生処理組合 上戸等場長)
一方で、駆除されたクマをおいしくいただく取り組みも行われている。

「これがヒグマのヒレ肉です」(北斗市猟友会 谷内田龍司会長)
北斗市猟友会の会長、谷内田龍司さんである。
谷内田さんは去年、会社を立ち上げ、ジビエ加工施設も作った。
ハンターとして活動しながら、新鮮なクマやシカの精肉にも取り組んでいる。
販売も行っていて、クマの肉は100グラム1100円である。

「数年前より、エゾシカが増えてきまして、捕獲しても処理しきれない。北斗市はハンターが結構いるので、有効活用しましょうということで5年くらい前から市と振興局と構想を練ってやりました」(北斗市猟友会 谷内田龍司会長)

駆除されたクマはハンターの手で現場で血抜きされ、1時間30分以内にこの施設に持ち込まれる。
鮮度の問題から、1時間30分を超えるものは受け付けないという。
その後、洗浄や解体などの過程を経て、数日熟成し、クマの精肉ができあがる。
2025年は10頭ほどを精肉したという。
新鮮な肉を求めてさっそくお客さんが訪れた。
「どこの部位?」(客)
「クマのモモです。どうです?」(谷内田さん)
「食べてみたい」(客)
「(Q.何を買った?)シカのランプ、背中の部分ですね。これはクマのモモですね。初めて買いました。やはり新鮮で、おいしいところの部位があるので。ジビエ流行ってますけど、これだけ新鮮でおいしい部位を売っているところはない」(客)

谷内田さんはハンターの育成にも取り組んでいる。
「捕獲したら食べるを基本に、今一緒に歩いて、伝授している」(北斗市猟友会 谷内田龍司会長)
クマにほんろうされた2025年の北海道。
駆除についてだけでなく、その後の対応についても考えていく必要がありそうだ。
