「やはり伝統って、すばらしいと感じました。驚きました」かつて日常の風景だった「馬搬(ばはん)」の古い映像を見た鈴木清彦さんは、こう語る。伐採した木材をウマの力で運搬する「馬搬」は、機械化の波にのまれながらも、福島県古殿町で息づいている。

代々受け継がれてきた「馬搬」の技術

林業が盛んな地域では、昔、伐採した木を山からウマで運び出す「馬搬」が日常の光景だった。1976年のニュース映像に映っていたその様子を見た鈴木清彦さん(47)は、「乗ってた。使ってる道具も一緒」と感慨深げに話す。

木材を運ぶウマ「馬搬」(1976年)
木材を運ぶウマ「馬搬」(1976年)
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鈴木さんの家では、祖父も父も代々「馬搬」を続け、その技術は脈々と受け継がれてきた。木材運搬の機械化が進むにつれ、「馬搬」は次第に姿を消していったが、鈴木さんは伝統を守り続けている。

伝統を守るための挑戦と挫折

林業の魅力や「馬搬」の技術を伝えるため、鈴木さんは16年前にNPO法人を設立。観光遊覧馬車などのイベントを通じて、古殿町に根付いてきた人とウマの関わりを発信してきた。

観光遊覧馬車
観光遊覧馬車

しかし2024年1月、長年パートナーとして活動を共にしてきたフルード号が息を引き取る。「やりがいも何もない。抜け殻みたいなところはありました」と、鈴木さんは喪失感を振り返る。

相棒のフルード号(2020年撮影)
相棒のフルード号(2020年撮影)

新たなウマを迎えるためにクラウドファンディングに挑戦したものの、目標額には届かなかった。活動の継続を諦めかけていた鈴木さんだったが、転機は思わぬところからやってきた。

地域の支援で復活する「馬搬」

2025年12月、古殿町の人々の支援によって新たなウマの迎え入れが決まった。「感謝も一つですけど、やらなければならないという。後世に残していかなくてはいけないなって」と鈴木さんは語る。
新しい相棒となるのは「トヨシゲ」(3歳・オス)。北海道のばんえい競馬にも出場した経験を持つ力強いウマだ。宮城県での調教を経て、2026年春に古殿町へやってくる予定となっている。

新たな相棒トヨシゲ
新たな相棒トヨシゲ

鈴木さんは「あとは丈夫に頑張ってくれればいい。商売にならなくても馬搬の技術だけは古殿町の独特の技術として残していきたい」と決意を新たにしている。

受け継がれる人とウマの絆

これから始まる新しい「人」と「ウマ」の物語は、古殿町の貴重な文化遺産として、これからも大切に受け継がれていく。

鈴木清彦さん
鈴木清彦さん

互いに信頼し合い、ともに働く人とウマの姿は、伝統の重みと未来への希望を同時に伝えている。機械化の時代にあっても、古殿町の「馬搬」は、独自の価値を持った技術として生き続ける。

(福島テレビ)

福島テレビ
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