鹿児島県鹿屋市の鹿屋中央高校で、調理師免許取得を目指す約70人の生徒が、卒業製作として1人1品、100人分の料理を作り、保護者らを招き食事会を開催した。40年以上続く伝統行事は今回も笑顔と涙にあふれていた。
大隅唯一の調理師免許が取れる高校
鹿屋中央高校の調理コースと食物コースは、知識、技術試験もクリアすると卒業と同時に調理師免許が取得できる大隅地域では唯一の高校だ。73人の生徒たちがそれぞれ1人1品、100人分の料理を作るという大がかりな卒業製作は、保護者や内定先の関係者に感謝を伝える重要な機会となっている。
工夫を凝らした個性あふれる料理の数々
会場には、イセエビのチリソースやステンドグラスと見まごうばかりの華やかな巻きずし、タレにこだわったウナギの蒲焼きと、バラエティ豊かな料理が並んだ。中には、地元・南大隅町でくんだ海水から3日間かけて手作りした塩を使った焼き鳥を提供する生徒もいた。


「夜遅くまで残って作っていたので、2回目でもっといい塩ができたのでよかった」と話す生徒も。1度目に作った塩は冷蔵庫の掃除で誤って捨てられてしまったそうだが、文字通りの”苦労の結晶”が詰まった袋には「塩捨てるな、使うな」と大きな字で書かれていた。
家族への感謝を込めた特別な一皿
母親に感謝を伝えるためハンバーグを作ったのは4姉妹の長女だという小薗莱花さん。「私が小学校に上がる前に父が事故で亡くなってしまって、そこからお母さんが一人で育ててくれました」と振り返るが、中学生時代には反抗期もあったという。
「何日か口をきかない日も結構あった。お母さんは何も言わなかったけど一人で抱え込んでいたと思う」と当時を振り返った。これまでの思いを込めた一品の紹介は後ほど。
先生へのサプライズも
会場には思わぬ作品も登場した。たっぷりのイチゴやキウイで彩られた長方形のケーキ。ハート型のプレートには「ハッピーウエディング・たくむ&まゆ」の文字が。なんと、調理コース3年の担任、杉之尾拓夢先生と食物コース3年の担任、小迫茉弥先生の名前が書かれ、参加者の目をひいた。
「2人が結ばれるきっかけづくりになればいい」との願いを込めたそうだが、ケーキを見た2人は思わず「えーっ!?」と声を上げた。杉之尾先生は「えぇっ!すごっ!ハッピーウェディングだし。ハッピーバースデーかと思った」と驚き、小迫先生は「アハハッ(笑)」と照れ笑いを浮かべた。
涙と笑顔にあふれた感動の食事会
73品の料理はバイキング形式で提供され、保護者たちはしっかりと味わった。「最高にしみこみました」「すごくおいしい。今夜また作ってもらう」と喜びの声が上がる中、小薗さんの母・由香利さんも駆けつけた。お皿にいろんな料理が盛られる中、最初に口にしたのは、やはり娘の作ったハンバーグだった。

「料理なんて全然しなかったけど、今こうしておいしいのをつくれるようになってうれしい」と由香利さんは娘の成長を喜んでいた。
手紙で伝える感謝の気持ち
手紙のプレゼントで締めくくられた食事会。小薗莱花さんは「世界で一番大好きな最高のお母さんへ。パパが亡くなってつらかったはずなのに、どんな時でも子供たちのことを考えてくれて、大変なのに反抗期にたくさんけんかして、ぶつかって、悩みを増やしてごめんね。これからもたくさん迷惑かけるけど、ずっと一番の味方でいてね。私もお母さんの一番の味方だからたくさん相談してね。愛してるよ。世界で一番かわいい娘より」と涙ながらに読み上げ、由香利さんも目頭をぬぐった。

涙と笑顔にあふれた感謝の食事会は、参加者にとって忘れられない一日となったようだ。前日も夜遅くまで準備に励んだ生徒たち、これからも「いつもありがとう!」という感謝の気持ちを胸に、愛情たっぷりの一皿でみんなをハッピーにしてもらいたい。
(動画で見る▶“将来はプロの料理人に” 大隅唯一の調理師取得高校で行われた感動の卒業食事会)
