2024年から始まった「令和の米騒動」は、2025年も日本の食卓を大きく揺るがし続けている。この状況に対応するため、災害対応ではなく初めて「流通不足解消」を目的とした備蓄米の放出が行われた。生産者や消費者などにも変化をもたらした米騒動は、今後はどうなっていくのだろうか?

備蓄米を求めた消費者

2025年6月、福島県会津若松市の店舗では、用意された300袋の備蓄米がわずか1時間で完売する事態となった。午前3時から並び、一番に備蓄米を手にした鈴木一雄さんは現在、「備蓄米は食べていない。銘柄どうこうじゃなくて、あの時は備蓄米が安いから買う気になった」と振り返る。

2025年6月 会津若松市での備蓄米販売の様子
2025年6月 会津若松市での備蓄米販売の様子
この記事の画像(8枚)

現在は親戚からもらったコメを食べているという鈴木さん。2024年夏から上昇を続けたコメの価格は高止まりし、消費者にとって大きな負担となっているが、「主食としてのコメ」は手放せないという。「元々が農家でコメを食べて育ったから、やっぱり麺類だって飽きるのは飽きてしまう。価格が上がっても、なくなったら買うほかない」と鈴木さんは語った。

流通業界にも広がる変化の波

コメ騒動は消費者だけでなく、流通業界にも大きな変化をもたらした。福島県いわき市のコメ専門店「相馬屋」では、備蓄米12トンが約1カ月で完売。営業部の井塚雄三さんは「一瞬でした。当時は新米が出る前で、世の中はコメが無いと騒がれていた時期だったので本当に一瞬でした」と当時を振り返る。

流通業界では新米の行方が気がかり
流通業界では新米の行方が気がかり

現在は消費者の関心が新米に移るなか、井塚さんは「今年の新米からさらに高騰して、銘柄米の販売かなり苦戦している。こちらに力を入れていきたい」と語り、変化する市場への対応に追われている。

生産者の大きな決断

食卓を揺るがした「令和の米騒動」は、生産者にも大きな決断を迫った。福島県大玉村の西村農園代表・西村忠男さんは「飼料用米も備蓄米もやめてしまいました」と話す。これまで「食用米」と並行して作っていた「飼料用米」をやめ、需要と価格の高い「食用米」に全集中したのだ。

生産者にも変化 食用米だけを作るように
生産者にも変化 食用米だけを作るように

東北農政局によると、令和7年産米の福島県内での作付面積は6万7000haと前年から2割ほど増加し全国トップの増加率となった。予想収穫量も38万1900tと、6万トン以上の増加を見込んでいる。

福島県の令和7年度米の作付面積と収穫量
福島県の令和7年度米の作付面積と収穫量

西村さんは「おいしいコメをお客さんに直接売ることによって『おいしいよ』と言われるのが一番うれしい。価格がどんどん下がっても困りますし、消費者のコメ離れっていうのが一番困ります」と思いを語る。

揺れる政策と今後の見通し

コメ騒動は政治的にも大きな影響を及ぼした。石破前総理が打ち出した「増産」方針から一転、「需要に見合った生産」へと政策が転換。
鈴木農林水産大臣は「大幅に増産して、これからもずっとこの増産のスピードが同じで、果たして本当にそれに見合った需要がすぐにあるのだろうか。需要を見誤らないように、そしてそれに合わせた生産をするということが、安定的な翌年への生産につながると思う」と述べている。

鈴木農林水産相
鈴木農林水産相

今後のコメ価格について、福島大学食農学類の小山良太教授は「昨年まではコメが無いから値段上がっていたが、今コメはある。今年豊作で。実際、高すぎて今売れてないので、大方の見方で言うと年明けぐらいから段々値段は下がっていくのではないか」と予測する。

年明けからは値段が落ち着く?
年明けからは値段が落ち着く?

また小山教授は、持続可能な農業のためには5キロあたり3500円ほどが安定ラインになるのではと指摘。「少なくとも通常の食料品の物価高騰の幅、1.5倍とか1.7倍の範囲に収まっているかとか、そういうところは全体でしっかり検証する必要がある」と語った。

福島大学食農学類の小山良太教授
福島大学食農学類の小山良太教授

「令和の米騒動」は依然として続いている。生産者、流通業者、消費者が納得できる安定した未来へ向けて、日本のコメ産業は大きな転換点を迎えている。
(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。