ウクライナとロシアの戦争では、ドローンが現代戦で欠かせない兵器となった。
ドローンを迎撃するために高度なAI(人工知能)技術を使い開発された迎撃ドローンが戦場を闊歩する一方、取り付けられた「棒」を使い、敵無人機を撃墜する“アナログ”な手法も模索されている。

ドローンが欠かせない兵器に

2026年6月18日、ウクライナ軍は、モスクワの南東17kmにある製油所などに、複数の機種、総数約200機の自爆ドローンで攻撃を仕掛けた結果、石油タンクの巨大な“ふた”が吹き飛んで、霧雨のようなものが降り、モスクワ近郊の住民の服に黒いシミがついた(BBC・2026/6/19付)という。

ウクライナのドローン攻撃で炎と黒煙を上げるモスクワ近郊の製油所。円内は、吹き飛んだ石油タンクの“ふた” ゼレンスキー・ウクライナ大統領公式X(2026/6/18付)より
ウクライナのドローン攻撃で炎と黒煙を上げるモスクワ近郊の製油所。円内は、吹き飛んだ石油タンクの“ふた” ゼレンスキー・ウクライナ大統領公式X(2026/6/18付)より
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ウクライナでの戦いは、従来ホビーのような存在だったドローン(無人機)をこれからの戦争で無視できない兵器に変えた。

迎撃ドローン:AI搭載化技術とアナログ化の技

前回、筆者は、このプライムオンラインへの寄稿「ウクライナの戦場で浮上する100年前の「奇策」 レーダー防護強化で注目される新たな自爆ドローン対策」で、ウクライナの戦場で、最新鋭のセンサーや通信技術やAIを組み込んだ迎撃ドローンが闊歩(かっぽ)する一方で、ウクライナもロシアも低速のレシプロ練習機を活用し、まるで、第一次世界大戦(1914~18)初期にタイムスリップしたかのように、後部座席からショットガン等を突き出し、敵の無人機(ドローン)の撃墜を狙う例を紹介した。

ウクライナ軍Yak-52練習機の後部座敷から、ロシアの自爆ドローンを撃墜(ウクライナ第11陸軍航空旅団 公式Facebookより) 
ウクライナ軍Yak-52練習機の後部座敷から、ロシアの自爆ドローンを撃墜(ウクライナ第11陸軍航空旅団 公式Facebookより) 

自爆ドローンによる攻撃・破壊をかわす手段には、迎撃ミサイル、機関砲、電波妨害などがあるが、数十km飛行する短距離の自爆ドローンの場合、誘導方式を電波から光ファイバーに切り替えたものもあり、これを防ぐには、電波妨害は通用しない。
迎撃ミサイルは、自爆ドローンより、総じて価格が高いとされ、コスト面で難がある。
大量に襲いかかってくる敵の自爆ドローンからの効率的な防御手段としては、迎撃ドローンや機関砲がある。
しかし、自爆ドローン迎撃手段は、これらにとどまらず、ウクライナ、ロシアともに新たな手段を探っている。

標的を“棒”で突く、“棒”で引っかける迎撃ドローン

その1つが、取り付けられたカメラの映像を見ながら操縦するドローンに「棒」を取り付けるという方法。

ウクライナ軍のFPVドローンに取り付けられた棒(UNITED24 MEDIA 2026/6/16付)
ウクライナ軍のFPVドローンに取り付けられた棒(UNITED24 MEDIA 2026/6/16付)

しかし、ロシア軍とウクライナ軍では取り付ける「棒」の種類が異なる。

敵ドローンの4枚ある回転翼に「棒」の先端を近づけ(左画面)、引っかけて墜落させる(右画面)(UNITED24 MEDIA・2026/6/16付)
敵ドローンの4枚ある回転翼に「棒」の先端を近づけ(左画面)、引っかけて墜落させる(右画面)(UNITED24 MEDIA・2026/6/16付)

ロシア軍は、金属の棒をドローンに取り付け、「ロシアのドローンが、ウクライナのドローンを串刺し」((英メディアThe Telegraph 2026/3/31付)にして、時に、燃料タンクに穴を開けて、空中で燃やし、墜落させるのに対し、ウクライナ軍では、先端が曲がったり、二股に分かれた、おそらくは、木の「棒」を取り付け、敵自爆ドローンを引っかけたり、絡ませたりして、墜落させる(UNITED24 MEDIA 2026/6/16付)というシンプルなもの。

ドローン迎撃手段について、AIを導入するなど高度な技術を導入する一方で、ウクライナもロシアも、低速飛行する練習機からの射撃や敵ドローンを、「棒」を使って、墜落させるアナログ的手段の開発も進めていることになる。

背中の95式小銃を射撃しながら走る中国軍四足歩行ロボット「機械狼」
背中の95式小銃を射撃しながら走る中国軍四足歩行ロボット「機械狼」

ところで、集団で襲ってくる自爆ドローンを効率的に撃墜するためにAIが利用されるのは、ほかに手段がないなら、正当防衛の強化ということになるのかもしれないが、自爆ドローンや地上で活動する無人車両、それに、ヒト型ロボットや四足歩行ロボットが武装し、人間が操縦するのではなく、完全にAIがコントロールする攻撃手段ということになれば、どうなるのだろうか。

AI制御なのか、それとも、何らかの形で人間が制御していたのかは不明だが、中国の四足歩行型ロボットが、自動小銃を射撃している映像が公開された例もある。

AI制御「ターミネーター」モード・ドローンの試験

ウクライナの戦場では、「ウクライナ戦争の最前線で10機のAI制御『ターミネーター』ドローンを使い、ロシア兵が死亡した」「2年前(の試験で)、クアッドコプタードローンが前線に向かって飛行し、約10分間で3〜5kmをカバーし、『ターミネーターモード』を起動するようプログラムされていた。このモードではAIモデルが目標を探索・射撃・・・発射すれば、この地域で見つかるものはすべて死ぬとわかっていた」(NewScientist・2026/6/10付)と報じられている。

そして、「ウクライナの現行規則では完全自律運用を禁止し、迎撃の最終段階で人間による目標の確認を義務づけている」として、AIのターミネーターモードはウクライナ軍では使用できなくなったとしたうえで、「人間が介入せずに殺害可能な自律兵器に対する公式な国際禁止法はないが、グテーレス国連事務総長はその禁止を求めており、『われわれの世界には、致死性自律兵器システムの居場所はない』と述べた。国連は、このような兵器が戦争から人間の判断を奪うことで国際人道・人権法に違反する懸念があるとしている。また、自律システムが…民間人を攻撃したりするリスクもありえる」(NewScientist・2026/6/10付)というのである。

日本は、2026年中に安全保障政策の基本文書「安保三文書」を改定することになっているが、兵器・装備へのAI搭載について、どのような考え方を打ち出すのか、興味深いところではある。

能勢伸之
能勢伸之

情報は、広く集める。映像から情報を絞り出す。
フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。