2026年5月、防衛省は、レーダーサイトを敵の自爆ドローンから防衛するためのUAV(無人機)に関する提案を求める要求書を正式に発出した。
防衛省・自衛隊内部からのみならず、外部からも「提案」を求める、というのである。
2026年3月、イランの無人機(UAV:自爆ドローン)による攻撃で、カタールのアル・ウデイド基地に設置されていた弾道ミサイル等の飛翔を追跡する米国製の巨大な戦略レーダー「AN/ FPS-132 UEWR」が損傷した。
アンテナ面の直径30メートル、探知距離は約5000キロメートルにおよぶ。
この戦略レーダーは、ミサイル防衛の基底になる重要な存在だ。
巨大すぎて移動できないことが、自爆ドローンの標的になったと思われる。
自衛隊や在日米軍は、日本に向かって飛んでくる弾道ミサイルや極超音速ミサイルをも捕捉できそうなレーダーを日本国内に配備している。
しかし、これらのレーダーも移動できないことや移動困難なモノが少なくない。
低空で方向を変えながら接近するドローンを感知できず、その攻撃で損傷することになれば、ミサイル防衛が困難となり、さらなる攻撃を受けやすい事態となりかねない。
このため、前述の防衛省の提案要求書には、「彼のUAV(≓無人機、ドローン)を探知・識別し、我の迎撃UAVにより対処することでレーダーサイト等を防護し得るシステムについて、製造・販売に関連する実績又は技術的な知見、能力等を有する企業等から情報・提案を広く募集する」と記述されている。
防衛省は、特にレーダーサイトの防護を重視した「迎撃ドローン」のプロジェクトに踏み出す姿勢を示したことになる。
迎撃ドローン先進国のウクライナ
自国が戦場になっているウクライナは、ロシア軍の戦車や自走砲等、強力な地上部隊を迎え撃つために活用した「自爆無人機(UAV)」の先進国とも言えるだろう。
それに苦しめられたロシアも「自爆無人機(UAV)」技術をイランから導入したとされ、ウクライナ各地に大量に投入している。
ウクライナは、米国や欧州NATO諸国から、迎撃ミサイルの供与を受けているが、ロシアが投入する大量の自爆UAV(ドローン)対策には、追いつきそうもない。
そこで、ロシアの自爆ドローンを迎撃するために、ウクライナは比較的安価とされる迎撃ドローンを次々と開発、生産し発展させてきた。
2026年6月9日、ウクライナ国防省が公式Xに迎撃ドローン「LITAVR」の画像を投稿した。
この迎撃ドローンは最高時速350kmで空中脅威を追跡し、GPSを使用せずに運用でき、飛行の最終段階で自動終末誘導を用いて目標を捕捉するように設計されている上に、標的を捕捉出来なかった場合には、安全に機体を帰還させることもできるとも報じられている。
これが正しければ、「再使用できる迎撃ドローン」ということになる。
さらに、ウクライナ軍が開発したオクトパス迎撃ドローンは、ウクライナとイギリスで生産されているが、最新バージョンでは、「AIベース」の制御システムを使用していることをウクライナ国防省が公式Xで明らかにしていた。
迎撃ドローン(無人機)と、その戦術が発展すれば、それをかわすように自爆ドローン(無人機)は発展する。
イタチごっこになれば、新たに生産・配備した迎撃ドローン(無人機)も、すぐに時代遅れになるのではないだろうか。
第一次世界大戦初期の戦術の復活
ウクライナ軍は、パイロットの初期訓練用に、旧ソ連で1970年代に開発された二人乗りの「Yak-52」訓練機を使用している。
プロペラ機である「Yak-52」型機は、最高速度時速285キロメートル。
ウクライナ空軍に西側諸国から供与された「F-16AM」戦闘機の最高速度が、時速2400キロメートル以上と言われるのと比べると速度は段違いに遅い。
ただ、それ故に、速度の速いジェット戦闘機では不可能なこともできる。
飛行中に後部座席の窓(キャノピー)を開くことが出来るのもそのひとつだろう。
そして、振動する座席に座りながら、ショットガン等の銃を突き出し、敵のUAV(自爆ドローン)に狙いをつける。
第一次世界大戦(1914~18年)の初期には、航空機の乗員が、手にした小銃や拳銃を敵機に向かって撃っていたとも伝えられるが、この100年以上前の戦い方を彷彿とさせるといえよう。
なお、第一次世界大戦では、その後、機体に取り付ける機関銃が開発され、敵機に照準を付ける問題は、多少なりとも改善されたという。
ウクライナが採用した100年以上前の戦い方、一種の奇策が、どれほど効果を上げているのかは、筆者には不明だが、2025年9月までに、ロシアもウクライナを真似て、自国の「Yak-52」練習機の後部座席に銃手を乗せて、ウクライナ軍のUAV(無人機、ドローン)撃墜を図っているとも報じられている。
ロシア側も、すでに、結果として、100年以上前の戦術を再評価したと言えるかもしれない。
閑話休題、冒頭で記述した通り、自爆ドローン(無人機)対策が、日本で急がれることだとすれば、これから開発、導入、配備を行う最新鋭の「迎撃UAVシステム」だけでなく、既存の装備を前提にした「奇策」にも並行して目を向けることが必要になるのではないだろうか。
(執筆:フジテレビ特別解説委員 能勢伸之)

