正月に欠かせない『餅』の価格が高騰している。2025年ならでは、ともいえるその理由を取材した。
「ここまでの上がり方は初めて…」
“博多の台所”ともいわれる福岡市中央区の柳橋連合市場の午前7時。まだ空は、明け切れていない。

そんななか、早朝から慌ただしく開店準備を進めているのは、老舗和菓子店の『蛸松月』だ。

店の人たちが、黙々と作っているのは、毎朝、搗き立てを提供する看板商品の『杵つき餅』。

『杵つき餅』は、正月用としても人気が高い。これから迎える年末の繁忙期には、1日に2万個もの餅が作られる。

この店で使われているのは、佐賀県産のもち米の『ひよくもち』だ。

店では、この年末も例年と同じ量の餅を作る予定だが、2025年はもち米の価格が大幅に高くなっているという。

『蛸松月』の松尾健一郎さんは「今年度の新米を使っているが、昨年のもち米の仕入れ価格から約2倍になっている。これまで2~3割、上がったことはあるが、ここまでの上がり方は初めて」とため息を吐かんばかりの表情だ。

背景にあるのはうるち米の値上がり
餅を長年扱う店の人も、経験がないというほどの値上がり。その背景にあるのは、私たちが普段、食べているうるち米の値上がりがある。

2024年のコメ不足を受け、もち米を作っていた生産者がうるち米を作るようになった。農林水産省によると2025年のもち米の検査数量は、前年と比べて1割も減少している。

この店では、年末ともなると1日に900キロものもち米を使用するが、原料の大幅な値上がりで利益が出なくなってしまうことなどから、やむを得ず12月から値上げに踏み切った。

『蛸松月』の松尾さんは「4割ぐらいは上がる。餅は100%、材料がもち米だけなので、直結するので致し方ない。大幅な値上げなので、販売するにあたって心苦しい思いはある」と苦渋の選択だったことを口にする。

『蛸松月』では値上げに伴い、2024年に20個1800円で販売していたもちを、手に取りやすい15個2000円にして販売する予定だ。

「正月は家族揃って美味しいお雑煮とあん餅と食べてもらって、良い年になるようにという思いで、心を込めて餅を作っている」と『蛸松月』の松尾さんは話す。

美味しい餅とともに心豊かに新年を迎えたいが、財布には少し厳しい新年となりそうだ。
(テレビ西日本)
