福岡市で男女2人が刃物で刺された事件で、警察は、このうち男性に対する殺人未遂の疑いで30歳の無職の男を緊急逮捕した。男は「殺そうと思って刺した」と容疑を認めている。

異様な雰囲気の未明のコンビニ

取材班が入手したドライブレコーダーの映像には、福岡・春日市内のコンビニエンスストアに警察車両が集まっている様子が映っている。

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時間は2025年12月15日午前2時半過ぎ。さらに近づいた映像には、大勢の警察官の姿が見える。

この中に、男女2人を刃物で刺した疑いで行方を追われていた男がいたとみられ、その後、警察署に任意同行された。

刺されたのは『HKT48』のスタッフ男性

事件が起きたのはこの前日、12月14日の午後5時頃だった。

福岡市中央区の『みずほPayPayドーム』1階の駐車場のエレベーターホールで、44歳の男性が男に包丁で胸を刺されたのだ。ブルーシートが張られた場所では、鑑識作業が行われていた。

刺された男性を見た人は「スタッフの男の人がおなかを手で押さえていた。大きい絆創膏のようなものを貼られていた」と話す。

刺された男性は、隣接する商業施設内に劇場を構えるアイドルグループ『HKT48』のスタッフ。オンラインイベントが開催される中、男性が男に「関係者以外がいてはいけませんよ」と声をかけたところ、無言のまま、いきなり左胸を刺されたという。

入り口付近に飛び散る血痕

犯人の男は、そこから商業施設に移動し、ドームでのライブ帰りに友人と待ち合わせをしていた27歳の女性の背中も刃物で刺した。

刺し傷は肺まで達し、女性は重傷を負ったが、先に刺された『HKT48』のスタッフ男性と共に命に別条はないという。そして男はそのまま逃走した。

男を目撃した人は「逃げている人が『刺された』と言って『こいつナイフを持っている』と。逃げていた人を追いかけていた男(犯人)がいた。(男の印象は)落ち着いた感じでスタスタと。淡々と歩いていた感じ」とその時の状況を話す。

現場周辺には警察犬も投入され、捜査員たちの端末には逃げた男とみられる画像が送られていた。

捜査員たちの端末には逃げた男とみられる画像が…
捜査員たちの端末には逃げた男とみられる画像が…

警察による懸命の追跡が続く中、事件発生から9時間がたった15日午前2時過ぎ、事態が大きく動く。

「事件を見た」110番通報したのは…

現場から10キロ以上離れた、福岡県春日市内にあるコンビニエンスストアの公衆電話から男が「事件を見た」と110番通報してきたのだ。

男は、その電話の中で「自分が犯人だ」という旨の話をしたため、警察が駆け付け、店内にいた男の身柄を確保した。

男は、事件現場から約12キロ離れたコンビニに歩いて入り、店の前にある公衆電話から警察に電話をしたとみられている。

男の身柄が確保されたコンビニのオーナーは「男は、外の様子を気にしながら店内をうろうろしていた。駆け付けた警察に、抵抗することなく連れていかれた。男の上着は、パーカーか何かでフードを被っていた。持っていたカバンはちょっと大きめ。“ぱっと見”は普通の人」と当時の様子について話す。

また男が警察車両に乗り込む様子を目撃した男性は「男が警察官に囲まれながら、白い覆面パトカーに乗せられていた。ボサボサ頭で全然、整えていない感じ。見ていたら、向こうもこちらを見る感じでギョロッと目が合った」と話す。

男は『HKT48』のメンバー狙ったか

男は、糸島市の無職、山口直也容疑者(30)。犯行を認めるような発言に加え、凶器とみられる包丁2本を持っていたことから男性スタッフへの殺人未遂容疑で緊急逮捕された。

アパートで1人暮らしをしているという山口容疑者。容疑者と同じアパートに住む人に話を聞くと「僕もあまり見たことがない」ということだった。

捜査関係者によると山口容疑者は男性と面識があった可能性が高く「殺そうと思って刺した」などと殺意を持って刺したことを認めているという。

劇場に、月に5〜6回来るほどの常連客だったという山口容疑者。その後の捜査関係者への取材で、刃物を所持した山口容疑者は事件前、『HKT48』が出入りする場所を徘徊していたことなどから、メンバーを狙っていた可能性もあるということが分かった。男性スタッフに出待ちを注意されたことに腹を立て犯行に及んだとみられている。

一方で、刺されたもう1人の女性は「山口容疑者との面識はない」と話しているという。警察は女性に対する殺人未遂容疑も視野に動機の解明を進めている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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