2024年12月に北九州市のファストフード店で中学生2人が殺傷された事件から1年。市民に与えた“恐怖”は未だ拭いきれていない。
「事件から1年を迎えて」
突然、命を奪われた中島咲彩さん(当時15歳)の父親が「事件から1年を迎えて」と題したコメントを寄せた。全文は以下の通り(原文のまま)。
『令和7年12月14日で事件から早くも一年が経とうとしています』

『咲彩がいなくなって過ごす日々は、変わらず受け入れ難いものであり、また、咲彩がいたらどんな高校生になっていて、どんなに楽しい生活を送ることができただろうと思う毎日です』

『事件について、一刻も早く審理が尽くされ、二度と被告人がこのような事件を起こすことができないように、私たち家族や地域の方、そしてこの事件を知っている方々が安心して生活ができるように、刑罰に処されることを切に願っています』

8カ月間にも及んだ鑑定留置
2024年12月14日午後8時25分頃。北九州市小倉南区のファストフード店で、店内に入ってきた男に、学習塾から帰宅途中だった中学3年の男女がナイフで襲われた。

腹部を刺された中島紗彩さんが死亡、男子生徒が重傷を負った。

警察に逮捕された平原政徳被告(44)は、被害者2人と面識はなく「事件直前に2人と目が合って笑われ、ばかにされたと思った」などと供述。

検察は平原被告の精神状態を調べるため2025年1月以降、2回の鑑定留置を実施し、期間は異例とも言える8カ月間に及んだ。その鑑定結果などを受けて刑事責任能力を問えると判断した検察は、2025年9月に殺人などの罪で平原被告を起訴した。

教室内に置かれた『さすまた』
受験シーズン真っ只中の12月10日、事件現場から約400メートル離れた場所にある学習塾『九大進学ゼミ・徳力校』には、真剣に勉強する生徒の姿がみられた。

教室には、無言で見詰める防犯カメラと『さすまた』が置かれていた。
塾長の佐多博隆さんは「帰って行く子たちが、事件に遭遇していたかも知れないと考えたら、もうとてもじゃないけど居ても立ってもいられないようなそんな気持ちで…、私たちができることを最大限やっていこうとしている」と話す。

事件以前は、個別指導や自習で訪れる生徒が気軽に入れるように出入り口を開放していたが、施錠することにするなど塾帰りの中学生が被害者となった事件を受けて、防犯対策を大幅に見直したという。途中で来た生徒は、チャイムを鳴らしてカギを開けてもらってから入室する。また、外出中に事件に巻き込まれないために、食事は自宅で済ませるか、持参するよう徹底している。

事件後は、送り迎えをする保護者は、8割ほどに増加したという。

中学3年生の保護者は「事件当時、子どもの精神状態も安定しない時期が続きましたので、塾に通わせることに関しては恐怖が強くて…。しっかり塾の中に入って、帰る時も塾から出てくるのを見守って、家の中に連れて帰れるっていう安心感がすごく大きくて、ありがたかったです」と話す。

見出したのが「ながら見守り」
いつ、どこで起きるかわからない通り魔的犯行。次の事件を防ぐために何ができるのか。
平原被告が住んでいた校区(長尾校区)の自治連合会長、藤田比呂志さんは「『何ができたのか』と聞かれるけど、何もできなかったということですよね」と肩を落とす。

藤田さんが、自問自答を続ける中で見出したのは『ながら見守り』というかたちだった。事件以降、藤田さんは、ゴミ出しの時間を小中学生の通学時間に合わせて行い、そのまま子どもたちを見守るようにしている。日常生活に溶け込むかたちでの見守り活動を始めたのだ。

「地域が社会を見守っているという姿勢が、やっぱり犯罪の抑止に繋がるんじゃないかなと僕は信じています。世界の平和を祈るようなもんですよ。答えはないですよ」と藤田さんは話す。

世間を震撼させた事件から1年。二度と悲惨な事件を起こさないために1人1人の少しの意識や行動が、誰かの犯行を、そして命が失われることを止めることができるのかもしれない。
(テレビ西日本)
