仙台市宮城野区で地域の子供や住民に食事を提供する子供食堂が開かれました。
その場所は普段、保育園です。
企画した園長は、食事だけではなく地域で支え合える関係を目指しています。
仙台市宮城野区の住宅街にある「鶴ケ谷はぐくみ保育園」。
園児たちが自宅へ帰り始めるころ園内のホールが子供食堂になりました。
Qどうですかカレーは?
男の子「うまい!」
中学生2人組「おいしいです!」
企画したのは、園長の高橋祥子さんです。
きっかけは、10年ほど前保育園の研修で子供の貧困問題に触れたことでした。
鶴ケ谷はぐくみ保育園 高橋祥子園長
「1日一食のお子さんが多いという話を聞いて衝撃を受けて。3食食べるのが当たり前という感じで育って来たのが、思うようになり」
厚生労働省の調査によりますと、18歳未満の子供の貧困率は11.5パーセントで9人に1人が貧困状態とされています。
また、18歳未満の子供がいる世帯で生活が「大変苦しい」と答えた世帯は33.9%。「やや苦しい」と答えた世帯と合わせると6割を超えていて子供たちの食生活を支える仕組みが求められています。
料理が大好き、という高橋さん。
「好きなこと」=「食べることや料理を振る舞うこと」が、子供食堂と結びつきました。
これまでも地域住民を招待しピザ焼き会や芋煮会など地域との交流を大切にしてきました。子供食堂も地域がつながる場にしたいと話します。
鶴ケ谷はぐくみ保育園 高橋祥子園長
「ここに来たら誰かと話せるとか、このご飯おいしいねって言い合える、楽しいほっこりした場であってほしいし、やはり地域とのつながりというところで、みんなが集まれる場所であってほしいと思っています」
共感した職員2人も運営メンバーに加わりました。
鶴ケ谷はぐくみ保育園・主任保育士 永坂恵美さん
「地域との繋がりを深めつつ地域貢献・社会貢献ができたら、自分にとっても幸せだなと思って(賛同した)」
鶴ケ谷ほぐくみ保育園・看護師 安達和歌さん
「今のお父さん、お母さんは一生懸命働いて帰ってきて疲れて、作って食べさせてというところがすごく大変だと思ったので、ホッとできるところが作れたらいいなと思いました」
オープンの前日、高橋さんたちが訪れたのは子供食堂に必要な食材を提供してくれるフードバンク。
ここでは、県内外の企業や個人から寄付された食料などを子供食堂や生活困窮世帯に届けています。
ふうどばんく東北AGAIN 富樫花奈副代表理事
「企業さんからいただいたものや、備蓄の食料品で箱単位が多いものとかをこちらの倉庫にストックしています」
2024年度は1851件、224トンの寄付があり、家庭など3135件に提供しました。
2019年からは子供食堂も始め、お正月には餅つきなど食の支援と居場所作りを同時に行っています。
ふうどばんく東北AGAIN 富樫花奈副代表理事
「地域の人たちはなかなか忙しかったり、コミュニティをみんなで形成するのはすごく難しいので、子供食堂はひとつのきっかけになると思っていて」
今回はコメやカレールウ、新鮮なピーマンなどの様々な食材の提供を受けました。
迎えた当日、園児のお昼寝時間…運営メンバーの3人は調理にとりかかります。
フードバンクから提供された食材に加えて、ひき肉など必要な食材を買い足し、メニューを考えました。
できあがったのはピーマンの彩りを添えたキーマカレーや、なんちゃってチャプチェなど4種類。
鶴ケ谷はぐくみ保育園 高橋祥子園長
「おいしいの一言が!あとは言わなくても、ほっこりしてもらえれば。顔を見ればあぁ満足しているんだなというのが分かるので」
初めての子供食堂には、園児と保護者だけでなく、学校帰りの中学生、地域の高齢者など幅広い世代の20人あまりが訪れました。
男の子「おいしい!」
保護者「家だとどうしても自分自身も家のことでバタバタしてしまうので、ここだとみんないるし、普段から通い慣れている場所なので安心して。こんなに普段食べることないんですよ」
高橋さんが声をかけた女性は、94歳。
南三陸町出身ですが、東日本大震災で自宅が全壊し今は近くの災害公営住宅に1人で暮らしています。
94歳の女性
「にぎやかでいいですよ~!(私は)毎日1人ですからね」
ホールに響く子供たちと地域の人たちの声。
高橋さんが思い描いていた、地域の拠点となる子供食堂が実現しました。
鶴ケ谷はぐくみ保育園 高橋祥子園長
「私たちとの交流だけではなく、地域全体が子供たちを見守るような、そういう社会、雰囲気、関係作りができればいいなと。そのきっかけ作りの場となれば良いと思います」
地域の新しいつながりが広がっていきます。