人口減少が進む広島県北部の山間地域に、待望の“遊び場”が誕生した。
スーパーの一角にカラオケルームを設置したところ、世代を超えて地元客が集まる人気スポットに。買い物と歌を一緒に楽しめる、地域密着の店舗を取材した。

「買い物ついでに歌える」

広島・世羅町の中心部にあるスーパー「ショージ世羅店」に11月、買い物客が利用できる“カラオケルーム”がオープンした。地域の遊び場不足を背景に生まれた新サービスで、小さな町に新たなにぎわいが広がっている。

地域に愛されるスーパー「ショージ世羅店」
地域に愛されるスーパー「ショージ世羅店」
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バックヤードとして使われていた場所を改装し、6人ほど入れる個室を3部屋整備。防音扉を備えた本格仕様で、店内への音漏れはほとんど感じられない。

バックヤードを改装し、カラオケルームが3室
バックヤードを改装し、カラオケルームが3室

中原光弘店長は、地域で感じてきた課題をこう打ち明ける。
「世羅は観光にはすごくいいところですが、地元の人が遊べる場所が少なくて困っていると思い、やってみようと決断しました」

料金は1室30分550円(利用は午後7時まで)。オープン以降、町で話題となり、順番待ちが出る日もあるほどの盛況ぶりだ。
20代の利用者は「自分が生まれてからは世羅にカラオケがなかったので、遊べる場所ができてうれしい」と話す。

週に3回ほど利用する70代の常連客
週に3回ほど利用する70代の常連客

また、70代の買い物客はすでにカラオケの常連になり、週3回ほど通うという。「買い物ついでに歌って帰るとかね。歌は楽しいし、健康にもいい」と気持ち良さそうに歌っていた。

客層に予想外の変化が…

“スーパーならでは”の強みは食料品売り場と隣接している点だ。この店で買った商品なら、惣菜や飲み物も持ち込める(アルコール飲料は持ち込み禁止)。

ポテトやたこ焼きが並ぶ惣菜売り場
ポテトやたこ焼きが並ぶ惣菜売り場

売上の増加につなげようと、店内の売り場づくりにも工夫が生まれた。惣菜売り場には「カラオケにおすすめ」のポップが立てられ、手軽に食べられる唐揚げやポテト、特にオリジナルのたこ焼きが人気だという。買い物カゴをそのまま持ち込んで、歌いながら食事を楽しむ家族の姿も見られた。

店内購入品をカラオケルームに持ち込む家族
店内購入品をカラオケルームに持ち込む家族

“スーパーとカラオケ”という異業種の組み合わせ。改装に苦労もあったが、買い物客とカラオケ利用者が互いに心地よく過ごせるよう、防音設備にはこだわった。

オープン後、客層は予想外の世代に広がっている。
「10代・20代の利用が多く、これまで見かけなかったお客さんが来てくれるのが本当にうれしい。店の裏に世羅高校があるので、放課後に『30分だけ歌おう』と気軽に寄ってくれるんです」と中原店長。

買い物、食事、歌で町を元気に──。スーパーが地域のコミュニティとして新たな役目を果たしつつある。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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