開会中の北海道議会で、北電・泊原発3号機の再稼働を電気料金引き下げ見込みなどの理由から、「当面とりうる現実的な選択」と、鈴木直道知事が”容認”する発言をしてからまもなく1週間。道は12月4日、立地4町村(泊村、神恵内村、共和町、岩内町)以外の後志地方16市町村に再稼働に関して、賛成や反対にとどまらない様々な意見を聞いた結果を明らかにしました。立地4町村や道の判断を尊重すべきや肯定的な意見のほか、安全対策や事故時の避難方法を要望する声、慎重な判断を求める声もありました。(以下、全文)


<小樽市> 

 泊発電所3号機は、電力供給の面から考えると、道民生活や北海道経済を支える社会インフラであり、化石燃料の抑制は社会的な要請であると認識している。この点を踏まえると、 北海道が全道的な視点で、かつ総合的に再稼働の是非を判断すべきと考える。

<島牧村> 

 原子力規制委員会と北海道電力が12年間の時間をかけ、 敷地内の活断層や津波対策を協議した結果、 3号機については本年7月30日に新規制基準に適合している安全対策を実施することができると原子力規制委員会が正式合格を認めたことと認識しています。そのため、新規制基準に適合している安全性対策を実施する3号機の再稼働については賛成の考えです。

<寿都町>

 北海道電力株式会社泊発電所3号機の再稼働については、これまでの経緯も勘案し、周辺4町村の意見を尊重するべきである。一方で、国策で進められている再稼働に向けた原発の強靭化について、負担を国民に求めるのは疑問に感じるところである。 国交省の国土強靭化はこれまでも予算づけから実施いただいているが、 なぜ原発の強靭化は使用者である国民負担となっているのか。相当の額がこれまで整備にかかっているが、国策であるのなら国が持つところは持つべきと考える。また、原発の再稼働には更なる高レベル放射性廃棄物が発生することとなることから、 最終処分についても同時に考えなければならない。 処分場の選定に対し全国的な議論の必要性をこれまでも伝えてきているところだが、 国の責任において主体的に取り組んでいく必要があると考える。

<黒松内町>

 再稼働に当たっては、住民の理解と信頼を得ることが欠かせないので、国は、そのことに特段の注力が必要だと感じている。本町においては、 特に、 事故時の避難に関して次の点について大きな懸念がある。万が一の事故時には、 本町は広域避難先としては指定されていないところだが、 PAZ・UPZ圏内の住民のうち一定数はマイカー等による自主避難をすることが考えられ、その際、 道南方面へ避難する場合は、 ほとんどの方が国道5号・229号を利用し、 本町を通過することになる。しかし、 UPZ圏に接しているが、その圏外に位置している本町は、これまでの道の避難訓練では通信訓練程度しか関わりがなく、 避難に関する十分な対応力が備わっていない。圏外最初の市町村である本町内で被曝スクリーニングを行うのであれば、 原子力災害医療協力機関である国保診療所1か所で作業を担うことになるが、スペース・人員ともに受け入れ能力には限りがあるため、 本町を含むUPZ圏を脱したところで混乱が生じるのは容易に予測できる。このため、 再稼働に当たっては、万一の事態に避難者が安全に移動でき、受け入れ側が安心して対応できるよう現実に即した方策を講じる必要性を感じている。具体的に、大勢の避難者に対応できるスクリーニングの場所・設備等について、避難路の整備と同様に、 再稼働に合わせて整備することが必須と考える。まずは、早急にその必要性を検証し、 UPZ圏隣接自治体の避難者受け入れ環境の整備に向けた具体的取り組みを進めてもらいたい。付け加えるならば、 大規模災害に備えて、 自衛隊や国等の関係者や、 一時的な物資を保管できるスペース・設備の整備についても検討しておくべきである。

<蘭越町>

 原子炉設置変更許可がなされても、原子力発電所の安全性が保障されるものではなく、 絶対に事故が起こらないとも限らないので、 電力会社は自らの企業責任として、さらに厳格な安全対策を講じてもらいたい。国においては、エネルギー政策に責任を持ち、 地元住民はもとより、 道民に対しても、安全性や必要性を丁寧に説明し、理解促進に努められたい。また、関係する機関においては、住民説明会においてだされた疑念や意見に真摯に向き合い、 住民の不安解消に努めてもらいたい。


<ニセコ町>

 泊発電所3号機の再稼働については、既にPAZ (4か町村)が同意しているところですが、 UPZ 地域への同意拡大は、以前からニセコ町が要望していることであります。 これは、 従来の単なる距離に基づき同意自治体を決めるのではなく、東日本大震災の教訓を下に、 範囲を設定すべきであり、同意町村の範囲の設定の考え方を見直す必要があると考えます。また、依然として、 同意手続きが煩雑になるという理由であるかは定かではありませんが、UPZ地域の再稼働の同意プロセスの中に入れていただけない状況にあります。 UPZ 地域においても同意自治体と同様に意見の反映をお願いしたい。また、財政的な支援も含めて、 防災対策や地域振興も同様な対応をお願いしたい。原発の稼働が停止して10年以上経つ中で、町民の意識が薄れ、原発の再稼働への関心が少し遠のいている感じも受けますが、 再稼働の反対、 賛成は別として、再稼働させることでのより高い安全性の確保に努めていただきたい。 加えて、有事の際の避難路の整備拡充など防災面でのインフラ整備等の促進や地域住民の安心につなげられる活動をしっかり進めてもらいたいと思います。

 具体的には、東日本大震災の例から、ニセコ町において現在設定されている白石区への避難経路だけでは十分とはいえないと考えます。 また、 札幌市も汚染地域となりえる可能性もあることから、 避難先においても地域住民にとって被ばくの恐れやさらなる二次避難の恐れが拭えないと考えるため、 少なくとも多様な避難ルート設定や避難先の見直しを進め、より現実的な避難場所や避難ルートの策定が必要と考えます。 そのため、 後志道 (高速道路) の早期整備や新幹線の開通後の活用なども含めて、より現実的な避難経路などの確保に向けた取り組みを早急にしていただくよう要望します。ニセコエリアは、国内外から多くの観光客が訪れており、より質の高い防災対策の拡充が観光振興につながると考えます。 原発事故の際の観光客の避難においては、多様な避難ルートが観光客から求められることとなります。 国内外の観光客が常に即座に理解し、行動できる取り組みが急務と考えていますので、観光客向けの原子力防災に尽力してほしいと思います。 加えて、 ニセコエリアは、冬期に観光客が大幅に増加するため、夏の防災対策とは大きく異なります。ニセコ町だけでは、具体的な対策の実施は難しいところがあるため、町内の対策では十分な避難場所の確保は難しく、 避難先等の選定や確保ができない場合を想定して、 広域での具体的な対応策を考える必要があります。 地域住民のみならず、観光客を含めた多くの命や安全を守りきるため、 積極的な対応を自治体個々に考えるのではなく、 広域で議論していく必要がありますので、早急に広域連携の体制づくりを進めていっていただきたいと考えます。 常に広域で意見交換や訓練ができる体制を設けていただき、 近隣自治体だけではなく、避難自治体とも議論できるよう防災対策を展開していくよう要望します。


<真狩村>

 将来の電力需要の増大に不安がある。 また、 気候変動も現実味を帯びてきている。再エネルギーも十分ではなく課題が多い中、 住民生活を守ること、 今の経済情勢を考えると再稼働には賛成する。しかし、北電には十分安全な再稼働に努めてもらいたい。


<留寿都村>

 北電泊原発の再稼働に関して、北海道内での住民説明会等を通じて北海道としての考えを持っていると思うが、 後志管内に位置する村として、また北海道民として再稼働の条件はただ1つ、 「安全対策を万全に」 ということである。これに関しては、現段階において原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断されたことにより安全性が確保されていると考えるが、 今後において、 あらゆる国民の不安を払しょくする検証と対応は北海道としても国としても必要と考える。

<喜茂別町>

 1 開業時に4町村の同意としているのであれば、 再稼働も4町村との同意で良いと思料する。
 2 30キロ圏内の町村には更に説明を継続(倶知安町まで。) する必要があり、喜茂別町は30キロ圏外であり、30キロを超えても後志の枠組みの中で重点区域や4町村のような同意は求めず、このことについては、国や道が方針を示すべきだと思料する。
 3 再稼働に向けて技術者の人材育成が課題の報道もあり、再稼働をするのであれば、効果的な訓練の経験が必要であると思料する。(機械は長い間動かさないと必ずトラブルが発生し、動かしながらの修理が必要であると思料する。)
 4 再稼働に向けて多額の費用を要しているため、 再稼働による料金の値下げについては、道民に対して継続的かつ丁寧な説明が必要であると思料する。

<京極町>

 立地4町村の意向を尊重して判断していただきたいと考えている。 また、泊発電所の安全確認協定に関する連絡会の開催は引き続き継続していただきたい。

<倶知安町>

 引き続き、 国や事業者においては、安全確保を最優先とすることを大前提に、新たな知見等が示された場合は即時に対応するなど安全対策を継続すること。また、避難訓練を含めた防災計画については、 実効性を確保し、地域住民の不安の解消に努めるよう国が責任をもって取り組むことを求めます。

<積丹町>

 I 福島原発の過酷な避難対応や14年経過した現在も多くの帰宅困難者、除染対策等への関係自治体対応の厳しい現状や、本町の厳冬期の半島地域の立地条件と夏期間の観光客 海浜遊楽者の集中等の現状を考慮するとき、 実効性のある避難対策を構築したとしても、それをもって「原発の安全性」 に対する住民理解が深まったと判断することは現時点では難しいのではないかと考えている。また、当町議会は、平成11年9月に泊発電所3号機増設に反対する意見書を議決した経緯にあり、 住民を代表する議会の議決の重みを考慮すると、 歴史的に「反対」としてきた経緯にあるため、 特に慎重な判断であるべきと考える。
 Ⅱ 令和7年6月3日公表の 「日本海沿岸の地震・津波被害想定」 との複合災害を想定した住民避難対策の構築強化が極めて遅れており、 次のような対策が急務と考える。
 (1) 能登半島地震災害の教訓を踏まえ、 半島の条件不利地域としての国道の横断的・総合的な防災対策を緊要としている。
 ①避難階段、避難場所、避難施設、公共施設等及び防災備蓄品等の充実強化
 ②国道、道道、 漁港、 治山施設等の耐震補強及び津波対策の強化
 ③福祉避難施設対策 と災害関連死抑止対策の充実強化
 ④水道、下水道等生活インフラ施設の耐震強化促進
 ⑤木造住宅や民間建造物等の耐震化促進財政支援制度の充実強化
 (2) 自治体の財政負担の軽減と安定財源対策の確保


<古平町>

 再稼働については、国や事業者、関係機関が総合的に判断すべきと考えている。また、不測の事態に備えて避難経路の確保や備蓄物資の支援など継続的な取り組みを求めるとともに、 何よりも安全性の確保を最優先として、住民の一層の理解を得ながら対応することを要望する。


<仁木町>

 泊原子力発電所3号機の再稼働については、原子力規制委員会により新規制基準に基づく審査が終了し、 設置変更許可がされたものと認識しているが、地元同意の範囲としては、泊発電所周辺の安全確保及び環境保全に関する協定書(以下「安全協定」という) 第2条(計画等に対する事前了解)に基づくものであり、事前了解については安全協定を締結している北海道を含めた5自治体が、最善の判断をするものと捉えている。UPZ内の自治体としては、再稼働の有無に関わらず、 泊原子力発電所が存続する限り原子力災害の発生を防止する取組を進めるとともに、 施設整備、各種計画策定及び防災訓練の取組等を継続的に進めていただきたい。


<余市町>

 泊発電所の停止以降、電気料金高騰が町民生活や水産加工業等の基幹産業経営を深刻に圧迫しています。 エネルギーの安定供給と経済性は道民生活の基盤であるため、 再稼働の議論にあたっては、原子力、 火力、 再生可能エネルギーを組み合わせた北海道全体のエネルギーミックスの将来像を熟考し、二酸化炭素排出削減も見据えた総合的な判断とされることを要望します。防災対策に関しては、住民の多くが泊発電所の安全性に対して強い関心と不安を抱いています。 当町としては、住民の命と暮らしを守ることを最優先とした慎重な対応を求めるとともに、今後実施する安全対策についても丁寧で分かりやすい説明を要望します。また、万が一の事態に備えて避難経路や避難手段の確保、 要配慮者支援、通信交通インフラの強化など継続的な取組を要望します。


<赤井川村>

 安全性への不安は払しょくできるものではないが、国の規制委員会が専門的見地から再稼働を認めた以上、 現実的な対応として昨今の社会情勢を鑑み、 再稼働はやむをえないと考えている。北海道知事もここに来てようやく、 再稼働に向けた考え方を表明するとの報道もあり、再稼働にあたって国はもちろんのこと、 北海道として泊原発の安全監視や事故発生時の避難や事故後の対応について、 自信と確信をもって対処できる体制を確保することを明言してもらいたい。
今回意見を求められている16市町村はあくまでも受け身であり、主体的に何かができる訳ではない。 北海道としては、この事実を重く受け止め、再稼働を容認するのであれば、 広域自治体の責任として主体性を持って再稼働後に起こりうる全ての事象に誠実に対応してもらいたい。


 早ければ12月10日にも再稼働に対する最終判断を出すとみられる鈴木知事ですが、こうした関係自治体の意見も判断材料にするということです。

北海道文化放送
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