地域の宝は“富士山だけじゃない”。
伝統の繊維産業がアートとコラボすることで街を元気にします。

富士山を背にする商店街に集まる観光客。
商店街と雄大な富士山とのコントラストが「映える」と人気ですが、通行に支障をきたすなどの弊害も起きています。

そんな喧噪から少し離れた静かな街並みの中にある建物に入ると、布のアート作品が展示されていました。

現在、山梨県の富士吉田市で開催中の「FUJI TEXTILE WEEK 2025」。
街全体を会場とした布をテーマにした芸術祭で、市が直面する課題の解決にもチャレンジしています。

「伝統産業の衰退」「空き家問題」「オーバーツーリズム」などの課題を抱える富士吉田市。

この地域は1000年以上続く織物の産地ですが、外国産の安い織物が輸入されるようになると次第に衰退していきました。

山梨県の空き家率は20.4%で全国4位。
混雑する商店街にも空き店舗が目立ちます。

2024年に市を訪れた観光客は約570万人。
しかし、多くが富士山や特定のスポットに集中し、街での消費が少なく地域経済への貢献が少ないといいます。

富士吉田市富士山課・勝俣美香観光担当課長:
写真を撮ってちょっと滞在して帰ってしまうというのが大きな悩みでして、町の中心市街地に織物を使ってどう人に来ていただくか。

そこで2021年に始まった「FUJI TEXTILE WEEK」では、街の活性化を目的に点在する空き店舗や空き家にアーティストの作品を展示し、見る人に街歩きをしてもらいます。

また、富士吉田市には長期間滞在して創作活動を行うアーティストのための施設が2つありますが、今回はこれまでに長期滞在したアーティストや、現在滞在中のアーティストの参加枠を設けました。

台湾出身のテキスタイルアーティスト、ジャリン・リーさんは「富士吉田市の歴史に魅了されました。織物の母は水だと思います。そこで今回FUJI TEXTILE WEEKのために、噴水をイメージしたソフトスカルプチャーの新しい作品を作りました」と話します。

2024年に富士吉田市を訪れたことをきっかけにFUJI TEXTILE WEEKに参加したジャリンさんは、今回も11月14日から市内に滞在しています。

市内にたくさんあるお気に入りの場所を紹介してくれたジャリンさんが、山梨名物のほうとうを食べて「めちゃおいしい!」と一言。
日本に来てから覚えた日本語だそうです。

こうした交流も長期間の滞在ならではです。

FUJI TEXTILE WEEK・八木毅事務局長:
地域の人たちとの交流だったり、地域をより知ることができる時間がつくれる。そういう人たちが関係を深める、そういうジャンルの関係人口が増えるという社会の1つの役割として担えるのではないかなと思う。

布が織りなす課題解決への道筋。
富士山だけじゃない富士吉田市を体験できるFUJI TEXTILE WEEK 2025は12月14日まで開催されています。