暗証番号忘れ「顔で」認証、91歳男性

従来の健康保険証が期限切れとなり、12月2日からマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を原則とする制度に移行された。この制度変更に伴い、富山県内の病院では窓口に列ができるなど一時混乱が見られた。

「マイナンバーカードを白い機械に通してください」

富山市の富山西総合病院では、受付スタッフがマイナ保険証の提示を呼びかけていた。同病院では8月時点でマイナ保険証の利用率は5割程度にとどまっていたが、この日通院した患者の多くはマイナ保険証を利用していた。

一方で、制度変更を知らずに従来の健康保険証を持参する人もいた。予防接種のため来院した68歳の男性は、「知らなかった。そんなに急がなくていいと思っていたけれどきょう来たらダメと言われた」と話し、駐車場の車までマイナンバーカードを取りに戻って登録したという。
本人認証に課題、端末増設へ

さらに課題となったのは高齢者の本人認証だ。半年前にマイナ保険証への移行を済ませたという91歳の男性は、暗証番号を思い出せなかった。
「えっとね、違うみたいですよ暗証番号」と受付スタッフに指摘された男性は、「違う?じゃあ顔で」と応じ、車いすから立ち上がって端末での顔認証を行うことになった。

「ド忘れしてますね。暗証番号はいくつもあって複雑。ややこしいことになった」と男性は語った。

こうした本人認証に時間がかかり、富山西総合病院の受付は一時混雑する場面も見られた。同病院の藤田哲朗事務長は「今回かなりの方がマイナ保険証の顔認証に移行したので、動線が交錯して不便をかけたり、車イスで一人で顔認証ができなかったりスタッフの介助が必要なことがあった」と説明。「当院としては各受付に資格確認の端末を置いているが、今週末を目途に端末を増やしてもう少しスムーズに流れるように対応したい」と語った。
マイナ保険証の県内での利用率は10月時点で46.79%にとどまっている。厚生労働省は混乱を防ぐため、期限切れの保険証を持ってきた場合でも2026年3月末までは保険診療を受けられるとしている。
マイナ保険証の利用方法

マイナ保険証への原則移行により、2日からは「マイナ保険証」か、健保組合などから発行される「資格確認書」で医療機関を受診する必要がある。制度の認知度はまだ十分とは言えず、今後も窓口での混乱が予想される。

医療機関では端末の増設や受付スタッフの増員など、混雑緩和に向けた対策が進められている。特に高齢者の本人認証については、暗証番号の忘却や操作の困難さなどの課題があり、サポート体制の強化が求められる状況だ。
(富山テレビ放送)
