「逮捕されてホッとした」――富山県内で違法薬物事件に関わった少年の証言である。従来のイメージとは大きく異なる現代の非行少年の実態が、専門機関の取材で浮かび上がってきた。

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富山県内の少年犯罪検挙数が増加する中、特に深刻なのが違法薬物事件への関与だ。去年9月には違法薬物の使用や密売の疑いで10代から20代のグループが摘発され、密売人5人のうち4人が高校生だった。この背景には何があるのか。

変わる非行少年の「見た目」

富山市にある富山少年鑑別支所で、22年間にわたって非行少年たちと向き合ってきた川田幸司支所長は、罪を犯す少年の変化を肌で感じている。

「昔だと特攻服を着たり、リーゼントをあてたり、見た目からしてつっぱりですよ、非行少年ですよという印象が強かった。最近の子たちはオシャレなパーマをあてていたり、見た目から非行少年という感じはしなくなった」

少年鑑別所は、事件を起こした疑いのある少年を収容し、医療や心理学などの専門知識に基づいて非行に至った原因を分析する法務省管轄の施設である。川田支所長の証言は、現代の非行少年が従来のステレオタイプから大きくかけ離れていることを物語っている。

SNSが下げる犯罪へのハードル

県警の統計によると、去年検挙された少年は301人で、なかでも違法薬物での検挙が10年前と比べて大幅に増加している。川田支所長は、SNSの普及が犯罪に関わるハードルを低くしていると分析する。

さらに深刻なのは、違法薬物に関する誤った情報の拡散だ。「依存性がない、害がないというのは誤った認識だと気付いたり、仲間関係を優先させて薬物を拡大させる手助けをしたと後悔する子どもたちも多い」と川田支所長は語る。

少年たちが薬物に手を出す心理も複雑である。「仲間うちで断って疎外されたくない、おじけづいたと思われたくない。断ってその場の雰囲気を壊したくない。目先の仲間との関係を優先させてしまう」。仲間との関係性を重視する年頃特有の心理が、犯罪への入り口となってしまっているのが現状だ。

失われた「居場所」が招く問題

川田支所長が最も重視するのは、少年たちの「居場所」の確保である。

「学校に行っても勉強が苦手、先生に怒られることが多い。お家でも学校行きなさい、仕事行きなさいと叱られることが多い。それがくり返されると家や学校は健全な居場所にはなりにくい。そうなると気心の知れた仲間が拠り所。本人にとっての居場所」

健全な居場所を失った少年たちにとって、問題のある仲間関係であっても、それが唯一の心の支えとなってしまう構造が見えてくる。

リアルな関係性の重要性

高岡市でコミュニティハウスひとのまを運営する宮田隼代表は、15年前から不登校の子どもや生活困窮者、行く当てのない出所者などを受け入れてきた。その経験から、「SNSではなくリアルなところで、色んな人がちゃんと話を聞いてくれて分かってくれる場所が必要」だと訴える。

宮田代表によると、SOSが言えない、言う気にならないという人が多いという。しかし、「ここで色んな人が、誰かが誰かを助けている場面。何かあったら話聞くし、困っていることがあれば手伝うという関係性を見ている中で、ようやく『しんどい』と言ってみてもいいのかもとちゃんと思えたら、子どもの方からSOSがでてくる」。

社会全体での取り組みが急務

宮田代表は、SNSと現実社会の関係性について警鐘を鳴らす。「誰も分かってくれないと思っているときに求めるのは、分かってくれる場所。SNSには自分の考えと似たようなものがいっぱい書いてある。『誰も信じられない』だとか。SNSが全部だと思ってしまったらけっこう危ない」

そして、「SNSの方が分かってもらえると思っている社会にちゃんと目を向けないといけない」と、社会全体での意識改革の必要性を強調する。

現代の非行少年問題は、見た目では判断できない複雑さを抱えている。SNSの普及により情報が氾濫する中で、顔の見える関係性を築き、すべての子どもたちに健全な居場所を提供することが、今後の重要な課題となっている。

(富山テレビ放送)

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