「グリーンリボン」をご存じでしょうか?臓器移植医療の普及・啓発を目的としたものです。突然、移植医療が必要になった子を持つ母親の想いを取材しました。
11月8日、広島市内で行われた講演会。
ひとりのお母さんが登壇しました。
そのタイトルは「さほちゃん日記」です。
【さほちゃん(当時2)】
「さほです」
【母・由利子さん】(会見)
「皆様のお力で娘の命を救ってください。皆様のお力で娘に未来を与えてください」
13年前、苦渋の決断の末、始まった募金活動。
その目標額は1億4400万円。
海外での心臓移植でしか助からない命を救うための募金でした。
【さほちゃん】
Q:何歳?
「2さい」
さほちゃんは2歳のとき、突然50万人にひとりの心臓の病気だと診断されました。
【母・由利子さん】
「(医師から)海外に行って心臓移植するしかないというご説明を頂いて」
移植をしないと4歳まで生きられないといわれました。
臓器移植は、移植でしか治らない人に他の人の臓器を移植し健康を回復する医療で、心停止や脳死で亡くなった人からの臓器提供と健康な人からの生体移植があります。
心臓が停止した場合は、腎臓やすい臓、眼球の3つが脳死の場合はさらに肺や心臓、小腸、肝臓を加えた7つが移植可能となり、1人の身体から最大で11人の命を救うことができます。
しかし、当時、国内に子供の提供者はほぼいませんでした。
最後の頼みの綱だった海外移植のための募金。
9日間で目標額が集まりました。
【母・由利子さん】
「広島の人はあたたかい人ばかりだなと。感謝しています」
命をかけた渡航でした。
移植医療が進むアメリカ。
病気と闘いながら移植を待って1ヵ月。
ドナーが現れました。
そのとき由利子さんは…
【母・由利子さん】
「娘と同じぐらいのお子さんを持たれているご両親が悲しみの淵にいらっしゃるんだと。そういうご両親がいらっしゃるんだと思ったときに、すごく複雑な気もち」
手術は成功。
亡くなったドナーからさほちゃんへ命のバトンが渡されました。
さほちゃんです。
15歳になりました。
【母・由利子さん】
「高校1年生になった姿を見せていただけるとは移植ができたことで、こうして成長の時計がずっと続いて、今も時を刻んで生きているんで素晴らしいなと思いますね」
日に2回たくさんの薬を飲むなど移植後の生活には制約もあります。
でもそれ以上にできることが増え、日々を生きています。
【さほちゃん】
「ありがとうですね。こうやっていろいろ学校行って、本読んで、ギターやって、本読んで、アニメ見て、いろいろ楽しいことができているのは、ドナーさんのおかげなので感謝ですね」
ゆりこさんが大切にしているものを見せてくれました。
出てきたのは、手紙です。
実は、ドナー家族との交流も続いていました。
さほちゃんのドナー。事故で亡くなったメイソン君。
毎年送ってくれるクリスマスカードには必ずその姿がうつっています。
【母・由利子さん】
「元気であることを祈っているっていう心臓が今でも鼓動していることに感謝しているという言葉を頂いていてもう一人のお母さんというかさほの幸せを願ってくださってる方なんでありがたい存在ですね」
由利子さんは、今、少しずつ自身の体験を伝えています。
円安などの影響で、海外での移植費用は、現在当時の3倍のおよそ5億円以上と言われています。
患者たちは国内で移植を待つのが現状です。
当時より、ドナーは増えていますが、足りていません。
【母・由利子さん】
「私たちには4つの権利があります」
臓器を「あげる」「あげない」「もらう」「もらわない」4つの権利があり、免許証やマイナンバーカードで「提供する」「しない」の意思表示ができますが、国の調査では8割の人が記入していません。
【母・由利子さん】
「私にとっては、希望があり未来のある医療です。私の話をきっかけによかったら(移植医療について)考えてもらえたらと思っています」
国内で移植を待つ人はすべての臓器を合わせるとおよそ1万6000人。
そのうち移植できる人は年間およそ600人。
移植を待ちながら今も1週間に9人が亡くなっています。
<参考メモ>
いつ自分がドナーの決断をする場になる、もしくは患者になるかもしれない中、移植医療について知り、考え、「イエス」でも「ノー」でもいいから意思表示をして、家族で話をしておくことが大切
●日本では、守秘義務があり、ドナーと患者はわからないので交流はできない
●文化や制度の違いなどもあり、アメリカではドナーは英雄と言われている