栄養豊富で「海のミルク」とも呼ばれるカキ。今、旬を迎えているこの“冬の味覚”に、異変が起きています。

11月19日、鈴木憲和農水相が視察に入ったのはカキの生産量・日本一の広島県。
県内各地で養殖のカキが大量死し、深刻な被害が広がっているというのです。

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鈴木憲和農水相:
何年前にこういうひどい状況があった?
森尾水産・森尾龍也代表
ないですね。二十数年で初めて。

(中身が入っていないカキ)
(中身が入っていないカキ)

水揚げされたカキは一見大ぶりですが、本来身がパンパンに詰まっているはずが、中は空っぽ。

島村水産・島村広司社長:
空ばっかりでしょ。生きていたらこういうふうにちゃんと口がつむってる(閉じている)んですよ。死んだら口が開いて中身が無くなっている状態です。
今年は9割死んでいるので。生きているカキが3つ4つくらいしか…。全部口を開けている。死んでいなかったら大豊作なんだけどね…。

広島県産のカキは、国内生産量の6割以上と全国トップ。

しかし、この生産者が養殖するカキは9割ほどが死滅しており、他の場所でも死滅率が7割から9割にのぼっているといいます。

カキ“歴史的不漁”の原因は?ふるさと納税の一時停止も

この“歴史的不漁”の原因は何なのでしょうか。

広島県の水産海洋技術センターは、猛暑による高い海水温や、雨が少なく海水の塩分濃度が高まったことなどが原因で、カキが弱ったのではないかとの見方を示しています。

「さぁこれからおいしい季節」という時に、冬の味覚に訪れた危機。

広島県呉市は、生カキを返礼品とする「ふるさと納税」の受付を一時停止。
すでに全国から1738件、2464万2000円を受け付けていましたが、生カキの返礼品を送れなくなった寄付者には事情を説明し、随時対応しているといいます。

さらに『サン!シャイン』が、豊洲で仕入れる魚介が自慢の鮮魚店を取材すると…、

江戸川市場 新兵衛・篠﨑幸雄さん:
このカキは、北海道の厚岸から仕入れたものです。

北海道産は入荷していたものの、例年なら定番の広島県産はゼロでした。

“異変”…サケ、イクラ、ホタテも生産量激減

異変はカキだけではありません。年末年始などにも欠かせないサケも不漁に陥っているといいます。

江戸川市場 新兵衛・篠﨑幸雄さん:
サケが不漁ということなので、サケ自体が少ないからイクラも筋子も高くなる、値段が上がっちゃうという形ですね。

また、佐賀県唐津市と九州大学の共同開発で誕生し、ブランド化を進めていた完全養殖の 「唐津 Qサバ」。
今シーズンも2万尾を出荷する予定でしたが、9月から10月にかけ大量に死んでいるのが見つかり、唐津市は当面、出荷を停止すると発表しました。

そして、北の“海の幸”・ホタテにも異変が。
ホタテの養殖で全国トップクラスの産地、青森県の陸奥湾の生産者は…、

後潟漁業共同組合 工藤琢磨さん:
ほぼ死滅しちゃってて…全滅してる人もかなりいますし。(生産量が)多い人で(例年の)1割2割くらいしかいってない人ばかりですね。

青森県のホタテの漁獲量は2020年の8万トン以上から、去年には3万1326トンまで減少。
大打撃の原因は、やはり「高い海水温」です。

陸奥湾ではこの夏、26℃度以上の水温が1カ月ほど続いたことで、稚貝がほぼ全滅したといいます。

都内にある青森県の食材を扱うお店の一番人気は、陸奥湾のホタテなどを味噌で味付けて、卵でとじた郷土料理「ほたての味噌貝焼き(900円)」。しかし、オーナーはこう語ります。

鮮魚と地酒屋 漁介 高田馬場店・蔦林直樹オーナー:
(ホタテが)もう「ない」って言ったほうがいいと思うんですよ。今は、在庫を取り合う形になってきてしまっていて。
とりあえず忘年会・新年会、春くらいまでは何とかストックはしてますけども。そこからはまたちょっと考えないといけないですね。

在庫がなくなればメニューから消える可能性もあるというのです。

視聴者からも“悲鳴”…魚介が“値上がりラッシュ”

この“冬の味覚に広がる異変”に、視聴者からもさまざまな実体験が寄せられました。

「いつも行ってた旅館のバイキングでカニ食べ放題がない。海鮮を楽しみに行ってたのに」(40代女性)
「手巻き寿司の具を購入しようとした時、海鮮物が高い。手巻き野菜寿司になりました」(10代)
「100円寿司に行っても100円のお寿司はほとんどない」(20代女性)

松村未央アナウンサー:
特に被害が深刻だった広島のカキですが、原因は「海水の高水温と高塩分が長く続いたこと」ということですが、天達さん、これはどういったことですか?

天達武史気象防災キャスター:
今年瀬戸内海では梅雨が6月に明けているんですよ。海水温がものすごく上がってしまって、さらに7月に雨がほとんど降っていない。だから海水温が平年より高かったところに、さらにまた高い状態が続いてしまったと。
また瀬戸内海は割と穏やかなので、雨が降らないと海が混ざらないんですよね。
しかもこの時期は普通台風が近づきます。今年はほとんど台風が近づかなかったんですよ。海水が混ぜられていないので流れ込む水の量が減って、塩分濃度が非常に上がってしまったと。ダブルパンチどころかトリプルパンチです。

谷原章介キャスター:
青森のホタテは「もう少し深いところで育てれば、水温が下がるから大丈夫ではないか」という対策の話を聞いたんですけど、瀬戸内海のマガキはそういう対策ではダメですか?

天達武史気象防災キャスター:
海が深いところだと育たないんですよね。浅いところで生育させないといけないので、天候はすごく影響すると思います。

松村未央アナウンサー:
マガキは塩分をあまり好まないので、二重の負担がかかり大量死につながったということで、冬の食卓、私達も工夫をしながら乗り越えていく必要がありそうです。
(「サン!シャイン」11月20日放送より)