防衛省のシンクタンク「防衛研究所」は20日、中国の安全保障政策に関する年次報告書「中国安全保障レポート2026」を発表し、「中露の戦略的協力が中国の作戦能力増強を、露朝の接近が北朝鮮の核ミサイル能力の増強をもたらす」と警戒感を示した。
16回目の刊行となる今回のレポートは、中国が新興国や途上国を取り込んで自らの価値観に基づく国際秩序形成の動きを加速するなか、中国・ロシア・北朝鮮の”不均衡なパートナーシップ”に焦点をあてている。
中国は、台湾や南シナ海・東シナ海といったインド太平洋地域ではロシアと合同軍事演習や合同パトロールなどを実施し「戦略的協力」を発展させてきた一方、対外的イメージも考慮してロシアのウクライナ侵略などへの直接的な協力には距離を置いている、と分析している。
ロシアについては、ウクライナ侵略によって国際規範の効力を低下させながら西側諸国に核兵器の使用や北朝鮮の軍事能力向上といった「恐怖のカード」を突きつけ、ロシアへの対抗が慎重になることを期待している、と指摘した。
北朝鮮は、ロシアへの派兵や兵器の導入の見返りに軍事技術の提供だけではなく現代戦の経験も得たとして、レポートでは朝鮮半島での戦力強化の動向が一層複雑化した、との警戒感を示している。
中露朝には「戦略的な不一致がある」と分析し、3者関係は形成されていないと指摘しつつ、北朝鮮は時には中国との経済協力を強め、時にはロシアとの軍事協力を行うという戦略を維持していくとの見方を示し、9月3日に中国が開いた軍事パレードで中露朝の首脳が一堂に会したことを挙げ、「『日米韓vs中露朝』という陣営化対立の構図が北東アジアで強まるかもしれない」と警鐘を鳴らした。