宮崎市で、18日からあるアート展が始まりました。
言葉ではなく、アートを通してだからこそ伝わる思いとは。

(竹下凜アナウンサー)
「アミュプラザうみ館6階、映画館の上のフロアで行われているゆめいろステーション。リアリティの中にも個性が光る作品や、理想の街をつくったものもあります。どの作品も自由な発想に溢れていて、つい『どんな気持ちで作ったんだろう』と気になってしまいます」

今回で4回目の開催となったアート展ゆめいろステーションには、絵画や貼り絵、立体物など68の作品が展示されています。

制作したのは、知的障害者や肢体不自由な人たちが通うみやざき中央支援学校の児童・生徒です。
この日学校では、中学1年生が段ボールを使って理想の街をつくっていました。

(先生)
「どこに貼ろうか〜どこに貼ってもいいよ」

完成した作品が、こちら。
カラフルな建物で埋め尽くされたワクワクの詰まった街が出来上がりました。

そして、中学3年生がつくったこの作品は

(塚本くん)
「(Q.作品を作るとどんな気持ちになりますか)楽しくてうれしい気持ちになります。(Q.一番きれいにできたところは)ここです。ハートのところです」

(細木くん)
「(Q.これを作るときに難しかったところは)画用紙をくるくる巻いて止めるのが難しかったです。(Q完成した時はどんな気持ちでしたか?)うれしかったです」

出来上がったのがこちら。
2人を含む16人の力作が一つになったアートは、色使いや細かな部分の形などそれぞれ工夫されていて、魅力いっぱいの作品に仕上がっています。

アートを通して障害や支援学校について知ってもらい、誰もがともに生きることのできる「共生社会」実現のきっかけにと開かれているこの作品展。

担当の小豆野雅子教諭は、作品を見ていろんな想像を膨らませてほしいと話します。

(小豆野雅子教諭)
「私たちが想像するはるか斜め上をいくような色を使ったり、形にしたり、そこにその色を置くんだ、というのは私たちも気持ちが広がっていくような作品作りをしているので、(作品を見た人の)これでいいのか、といった発想の転換であったり、自由な心の開放を目指したいと思っています。作者であるその子自身の『らしさ』を感じてもらえたらうれしいなと思って作品展を企画しています」

こうしたアート活動の中から国の内外で活躍するアーティストも生まれています。

みやざき中央支援学校のOBで県内在住の画家・中武卓さん。
2022年にパリで開いた個展では、出品した14の作品が完売、自由な発想で描かれた作品が高い評価を受けました。

中学時代の恩師・長曾我部徹さんは、中武さんの作品に心を打たれ創作活動を支え続けています。
中武さんは、週に1回長曾我部さんのもとで絵を描きます。

(長曾我部徹さん)
「花を描いているのは中学時代から。教室にある花を描くというのが自然と習慣化されて、いつもはうちの庭の花とかを描くことがほとんどです」

中武さんの絵について長曾我部さんは・・

「しゃべれないから、いろんな気持ちが(絵に)出ているっていうのも言えるかもしれません。僕たちは普通に『おはようございます』とか『いい天気やね』とか会って話したりする彼はそういう言葉を言わないが、そういう気持ちや『今日は晴れて気持ちがいいね』というのがないわけじゃないですか。それが言えなくて(心の中に)いっぱいあったらどうだって想像したら、ひとつのアウトプットの場になっているのかもしれないなって」

この日も普段通り、1時間ほどで作品を描き上げた中武さん。

先生「今日の出来は?」
中武「今日楽しかった」
竹下「一番楽しかったところはどこですか」
中武「(指さしながら)シュッ、シュッ」
竹下「茎の線を描くところ?」
中武「茎です」

長曾我部徹さん
「(評価に対して)嬉しいですとは言わないけど、家族などの周りの人が喜んでいるというのは感じているので、必ず何かに還ってくると思う」

ゆめいろステーションに並ぶ作品も、それぞれの思いが詰まったものばかりです。
セロファンテープを細く割いて表現した雨と黒い雨雲を晴らすための銃が描かれた「闇を打つ2つの銃」。

自分の好きなものを忠実に表現したいと、図鑑や画像を見比べながら描いた作品「宇宙」。

言葉を介さないアートだからこそ制作者と見る人をつなぐことができます。
お互いを知ることから始まる「共生社会」。アートはその渡し舟となるかもしれません。

テレビ宮崎
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