シリーズでお伝えしている『見やぶれ特殊詐欺』。
今回はSNSで知り合った「婚約者」や「恋人」から多額の振り込みを依頼される、いわゆるロマンス詐欺。
なぜ騙されてしまうのか。
取材を進めると、被害者を何度も執拗に騙す巧妙な手口が明らかになった。
「結婚資金500万円を融資してほしい」と銀行窓口へ
名寄市内の金融機関に10月、男性が来店した。
「結婚式代と指輪代として500万円融資してほしい」
融資を求めたのは名寄市内に住む60代の男性。
東京在住の女性と結婚するための資金、500万円をフリーローンで融資してほしいとの相談だった。
男性は離婚していて、子どもはすでに独立。
東京に住む女性とはSNSで知り合ったという。
「何度か会っていて真剣交際だった」

当時、窓口で対応した北洋銀行名寄支店の中村佑希さん。
すぐに怪しいと感じたという。
「結婚式場を決めてから費用の概算が出てくると思う。どこから500万円という数字が出てきたのかわからなかったのでかなり怪しいなと」(北洋銀行名寄支店 中村佑希さん)
中村さんは上司と相談し、男性に警察を呼ぶと告げると態度が一転。

女性とのやり取りはSNS上のみで、実際には会ったことがないと話しはじめ、ローンの申し込みを取り下げた。
「本当に悲しい気持ちになりますし、騙している側に対して、本当に憤りを感じます」(中村さん)
男性はこれまでにもわずか2か月ほどの間で約900万円を騙し取られていたことが判明した。

実際には会わず、画面上だけで話が進むロマンス詐欺。
典型的な被害だった。
「登録した電話以外は受けないようにしている」(札幌市民)
「そんな甘い話はない。すぐ詐欺だと思わないとだめ」(知人が詐欺にあった男性)

「SNS型投資ロマンス詐欺」直前に被害を回避したケースも
分かっていても騙されてしまう詐欺被害。
直前で被害を回避したケースもあった。
札幌市にある北海道銀行大谷地支店の小林和美支店長。
騙されていた70代の男性をギリギリのところで思い止まらせることができた。
「借りていたお金を返したい」
「様子がおかしいというか、少しそわそわしているような感じで、後ろから見ていてちょっとおかしいなと感じまして」(北海道銀行大谷地支店 小林和美支店長)
男性の様子が気にかかった小林さんは、一旦受け付けた振り込みの手続きを保留した。

すると、スマートフォンを手に男性が再び現れ、振り込み先を変更するよう求めた。
男性は、SNS上で数か月前に出会った女性に投資を勧められ、振り込みに訪れていた。
小林支店長は、典型的な「SNS型投資ロマンス詐欺」だと説得し、振り込もうとしていた220万円を返した。
「そんな人を騙すような人じゃないとものすごくその方を信頼している感じだった。これはもう詐欺だなと」(小林支店長)

少しでも疑問に感じたら相談を
詐欺被害者に共通しているのは、当事者間の「秘密」を頑なに守っていることだという。
冷静な第三者の介入で防げることが多いという。
「銀行だけでは限界があるのでご家族の関与が抑止に繋がるのではないか」(小林支店長)
少しでも疑問に感じたら相談する。
周囲の目が詐欺被害を防ぐきっかけになりそうだ。
