仙台の“新たな顔”となるか

仙台が次の時代に向けて打ち出す“文化拠点”が、ようやく姿を現した。
仙台市が国際センター北側に整備を進める音楽ホールと震災メモリアルホールの複合施設について、市は11月18日、基本設計の中間案とともに初の完成イメージ図を公表した。巨大な吹き抜けと重層的な空間が連なる、仙台の文化景観を塗り替える新施設の全貌が浮かび上がってきた。

世界的建築家・藤本壮介氏が手がける“仙台の新たな象徴”

建設地は仙台市青葉区青葉山の「せんだい青葉山交流広場」。地下鉄東西線・国際センター駅の北側で、周囲には豊かな緑が広がる。

設計を担うのは、大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」を生み出した世界的建築家・藤本壮介氏。宮城では石巻市の複合文化施設「マルホンまきあーとテラス」を手がけたことでも知られる。

南東方向からの外観イメージ 提供:仙台市
南東方向からの外観イメージ 提供:仙台市
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「たくさんの/ひとつの 響き」

新施設は地下2階・地上4階、建物面積約1万500平方メートル、延べ床面積2万7400平方メートル。
コンセプトは 「たくさんの/ひとつの 響き」。多様な活動が共存しながら響き合い、時に一つの流れとなってつながっていく。過去と未来、人と人が交わる場所として構想されている。

2Fフロア(災害文化エリア)提供:仙台市
2Fフロア(災害文化エリア)提供:仙台市

“圧巻の吹き抜け空間”文化と震災の記憶が交わる場に

施設の中心となるのは、1階ロビーから各フロアを貫く大規模な吹き抜け空間だ。
諸室やロビーが立体的に接続し、来館者が自然と行き交う設計。交流イベントロビーのイメージ図には、光が広く差し込む開放的な空間が描かれ、建築そのものが「人の交流」を促すつくりになっている。

3Fフロア(練習室)提供:仙台市
3Fフロア(練習室)提供:仙台市

仙台市はこの場所を、“文化芸術×災害文化”が多層的に交わる場として位置づけ、「仙台ならではの文化を創造し、世界へ発信する」としている。

4Fフロア(テラス展望)提供:仙台市
4Fフロア(テラス展望)提供:仙台市

2000席規模の音楽ホール 舞台は“転換可能”で多目的化

メインとなる音楽ホールは約2000席。
舞台はコンサートだけでなく、舞台芸術など多用途に対応できる可変式を採用。国内外の大型公演にも対応できるスペックを備える。

大ホール(正面 舞台より)提供:仙台市
大ホール(正面 舞台より)提供:仙台市

郡和子市長は会見で、
「別々の機能を持ちながら、一つにもつながる。この施設の特徴を生かした取り組みを広げたい」と期待感を示した。

屋外エリア 提供:仙台市
屋外エリア 提供:仙台市

工事費は548億円へ膨らむ見通し ふるさと納税活用も検討

一方で、見過ごせないのが“巨額の投資”である。
市は今回、建設工事費が548億円に達する見込みを明らかにした。これは当初想定より約200億円増。しかも、この金額には物価上昇分・外構工事費・土壌汚染対策費などが含まれていない。今後、さらに増額となる可能性もある。

外観(南西方向からの鳥瞰イメージ)提供:仙台市
外観(南西方向からの鳥瞰イメージ)提供:仙台市

郡市長は財源について、ふるさと納税や地方債も検討していると説明したうえで、
「残念という声もあるかもしれないが、致し方ない投資だと思う。不断の見直しが必要だ」と述べた。

小ホール 提供:仙台市
小ホール 提供:仙台市

年間来場者54万人 経済効果47億円を試算

市は年間来場者数を約54万人、経済波及効果を約47億円と試算。全国の類似施設の運営実績から、事業費は年間18億円ほどと見込んでいる。

大ホール(コンサートホール形式時の舞台)提供:仙台市
大ホール(コンサートホール形式時の舞台)提供:仙台市

開館は2031年度 基本設計は2025年度末に決定へ

開館目標は2031年度。現在の中間案をもとに、2025年度末までに基本設計をまとめる方針だ。

青葉山に“仙台の新しい文化の顔”が誕生するまで、あと6年。
杜の都が次のステージへと踏み出す、大規模プロジェクトの行方が注目される。

大ホール(プロセニアム劇場形式時の舞台)提供:仙台市
大ホール(プロセニアム劇場形式時の舞台)提供:仙台市
仙台放送
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