歴史的な円安が“家計の味方”100円ショップを直撃している。
川崎市の住宅街に店を構える「100円ショップ越後屋」では、棚いっぱいにあった食品は減り、代わりに雑貨などが多く陳列されている。
今後の事業継続のポイントについて、流通アナリストの中井彰人さんに聞いた。
「100円」縛りは厳しい
ーー円安の影響をどう見る?
原材料やエネルギー等を輸入に依存する割合の大きい日本としては、非常に厳しい環境が続いています。
国内の消費マーケットについては、マイナスの影響があるかもしれないと懸念をしているところです。

ーー100円ショップへの影響は?
海外で製造して日本に持ってくる商品が多いので、「100円」という単価の縛りがある意味では非常に厳しいです。
普通であれば値上げをしていきますが、100円の単価を守ろうとすれば利幅が縮小するので、当然、量が減ったり、小さくなったりします。
ビジネスモデルの変更
100円ショップ越後屋では、カップ麺の商品数が4分の1に減少し、コピー用紙は1パック100枚から60枚に減らして販売するという。
こうした中、事業の継続について中井氏は、100円にこだわらず「ベストコスパショップ」のような形に考え直す必要があると話す。

ーー100円ショップは生き残れる?
「100円ショップ」というタイトルに固執すると商品の調達が難しくなるため、100円のほかにも200円、300円、500円といった商品を混ぜながら品揃えをしていくのが良いと思います。
消費者が求めているのは、必ずしも100円という値段ではなく、「コスパが最も良いショップ」との認識の方が強いと思うので、商品の価格帯を増やしていくことで、商品が豊富になっていきます。
100円ショップにこだわらず、「ベストコスパショップ」のような形で品揃えを見直せば、生き残る可能性はあると思います。

ーー生き残りのカギは?
そもそも値段に上限がついていること自体がおかしいので、原価が上がったら価格転嫁をしなくてはいけません。
そういった意味で、100円ショップと呼ばれる業態はビジネスモデルを変えていく必要があります。
時代に合わせて変えていけるかどうかが生き残りのカギだと思うので、「会社の規模」というよりは、「変わることができる会社」かどうかが重要です。
「円安」と「寡占化」の二重苦
業界内の競争が厳しさを増し、円安の終わりが見えない中、越後屋では、85円ほどだったカップ麺の仕入れ値が100円を超え、このままでは仕入れは難しくなるという。

ーー個人経営と大手経営の今後は?
大手の売り上げ上位の会社は着実にシェアをアップして、寡占化が進んでいることは間違いありません。
業界内の競争は非常に厳しくなっていて、当然ながら資金力のある大手がシェアを拡大しながら中小を圧迫している面があります。

そこに「円安」というコストの上昇要因が加わって、さらに厳しくなるという二重苦となっています。
そのため、100円ショップが生き残るためには、大手企業か個人経営かは関係なく、100円にとらわれているビジネスモデルを微修正できるか、どのような施策を打ち出せるかが最も大きなカギだと思います。