傷だらけの総合格闘家・近藤世里菜選手
「自分は器用なタイプじゃないし、むしろ不器用なタイプなんですけど、やり続ければできるまでやれば何でもできます」。今治市出身の総合格闘家・近藤世里菜選手(29)はそう語る。
骨折、網膜剥離など数えきれないほどの怪我を乗り越えながら、なお戦い続ける理由とはー。
「闘志むき出し」立ち技から寝技まで練習に励む
パンチやキックなどの立ち技から、関節を決める組み技や寝技まで!闘志むき出しで練習に励む今治市出身の総合格闘家近藤世里菜選手(29)。総合格闘技とは打撃あり、寝技ありの文字通り格闘の「総合力」で戦う競技で、MMAとも呼ばれる。(Mixed Martial Arts)
近藤世里菜選手
(Q.MMAの魅力は?)
「全部満遍なくできるところが良いところだと思います」

「間違い」で出会った総合格闘技
今治市の高校で柔道を始めた近藤選手。卒業後は自衛隊に入隊し、沖縄で日々の訓練や仕事に励んでいた。総合格闘技との出会いは6年前。
近藤世里菜選手:
「最初、総合格闘技って知らなくて、キックボクシングでミットだけ上手くなりたくて沖縄のジムに行ったんですけど、入ったジムが総合格闘技のジムで間違えて入った」
きっかけはまさかの「間違い」。それでも周りの選手から刺激を受け、去年プロデビューを果たした。

マックとリングのかけもち…バイトと練習の日々
近藤世里菜選手:
「お待たせしました。てりやきのセットです。なにかご利用ありましたらお声がけください」
リングから降りると、先ほどまでの表情とは打って変わり、笑顔でアルバイトに向き合う。ファイトマネーやスポンサー料が主な収入の格闘家。競技だけで生計を立てられるのはほんの一部の選手で、近藤選手もアルバイトの収入が生活の中心だ。
近藤世里菜選手:
(Q.仕事中心がけていることはありますか?)
「お客様との会話を心がけるようにしています。練習前にバイトをするので(お客様との会話で)心が安らいだり気持ちが落ち着きます」
近藤選手の1日は、朝6時から11時までバイト、その後午後1時から3時まで練習。そしてまた午後4時から7時までバイトし、終わってから夜10時半まで練習をするというハードな日々を過ごしている。

「同じ体重だったらボコボコにされてますね」男性選手も舌を巻く
バイトが終わったらすぐ練習!近藤選手に止まっている時間はない。
選手兼指導者・藤川智史さん
「本当に頭が下がるくらい練習。練習の虫みたいな。練習ばっかしてますね」
女子の競技者が少ない総合格闘技。スパーリングの相手はいつも男性だ。
スパーリングした男性選手:
「体重が自分より15~20kgくらい違うが、体力も力も強いので…」
スパーリングした男性選手:
「同じ体重だったらボコボコにされてますね」
近藤世里菜選手:
「めっちゃきつい…(でも)自信に繋がります」

度重なる骨折などのケガで母親の反対も
総合格闘技は試合中に失神や流血もあり、近藤選手も骨折や網膜剥離など、競技継続が困難なケガを何度も負った。母親の反対もあった。
近藤世里菜選手:
「目の手術も3回してるし、骨折とかも色々ケガもしてきて、近くで見てるのでやってほしくないというのはあるらしいんですけど、今回初めて試合見に来てくれるので、勝つところ見せるしかない」

「母親の前で覚悟を示す戦いができた」
近藤選手は先月、香川県で開かれた総合格闘技の大会に出場。今回の試合は59kg契約で食事制限などで19kgの減量で試合に挑んだ。
試合は5分2ラウンド。第1ラウンドは、近藤選手が優位に試合を進めるが、相手選手の間合いに入ってしまい連打を食らう。しかし持ち味の気持ちの強さで耐えて、再びマウントをとり、そのまま試合終了。判定の結果はドロー。それでも応援に来てくれた母親の前で、覚悟を示す戦いを見せた。

「やっぱ好きやけん頑張れるかなって」
近藤世里菜選手:
「自分は器用なタイプじゃないし、むしろ不器用なタイプなんですけど、やり続ければできるまでやればなんでもできます。やっぱ好きやけん頑張れるかなって。あとは応援してくれよる人がいっぱいおるけん頑張れる」
大けがを乗り越え目指す先は…
近藤世里菜選手:
「チャンピオンになりたいです」
現在戦っている団体でのチャンピオンを目指して。傷だらけのファイターはきょうも戦い続ける。

