「これやばいぞ!」山林から住宅へ一気に燃え広がった炎 

2025年3月23日に愛媛県今治市長沢で発生した大規模な山林火災。
山地の樹木を焼いた炎は時間の経過とともに一気に拡大し、住宅など建物にまで延焼する事態に。

近隣住民:
「これヤバいこれヤバい!もうそこに火が飛んどんでもう逃げた法がいいです」
「こんなに早く(火が)回るとは思いもしなかった」

飛び火の影響もあって当初の火元だった長沢地区だけでなく朝倉地区や桜井地区、そして今治市の隣の西条市にまで燃え広がりました。

自衛隊や近隣府県からの応援で懸命の消火活動

愛媛県によりますと消火活動に携わったのは今治市消防のほか、自衛隊や8府県からの応援を含む延べ6600人。
一方、住民への避難指示は今治市と西条市合わせて3848世帯、約7500人にのぼりました。

自衛隊などの応援を受けるも住宅に延焼続ける
自衛隊などの応援を受けるも住宅に延焼続ける
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出火から9日で鎮圧宣言 愛媛では平成以降最大規模の山林火災に

今治市・徳永繁樹市長:
「本日11時をもって火災は鎮圧したことを発表させていただきます」

出火から延焼の恐れがなくなる鎮圧までに9日、そして最終的な鎮火には23日を要しました。

住民:
「もう長かったですね、本当に。ほやけどね消防の方がね、皆さん家庭もあるのに大変だろうなといつも感謝しておりました」

焼損面積は約481.6ヘクタール、この火災で4人が負傷し27の建物が全焼などの被害に遭う愛媛県内では平成以降最大規模の山林火災となりました。

山火事は400ヘクタール以上を焼失
山火事は400ヘクタール以上を焼失

「もうやめようかと思う農家を」火災は多くの人の生活を変えた

この山林火災は多くの人の生活を変えました。

農家の住民:
「もう辞めようか思いよる農家を」

ボランティアの支援を受ける住民:
「ありがたいですね。色んな事を力に頑張りたい」

親族の無事を確認できて安堵の涙を流す人、家や倉庫など暮らしを支える糧を失いながらも、ボランティアの力も借りながら再び前に向かって進もうとする人。被害にあった住民たちは少しずつ被災地が復興に向かって立ち上がります。

ボランティアの力を借りて復興を進める
ボランティアの力を借りて復興を進める

延焼の要因には”樹冠火”や”真砂土”などの影響も

そして5月。
愛媛大学名誉教授の江﨑次夫会長をはじめ、今治市や愛媛県、専門家らで構成される、復興・復旧計画の策定に向けた検討会が始まりました。

今回の山林火災による広範囲な延焼には様々な環境的な要因もありました。
四国森林管理局などの調査では、木の上部の枝葉が重なりっていることで、つぎつぎに燃え広がる樹冠火によって火が一気に広がり延焼したことが判明。

さらに、検討会では花崗岩が砂状になった真砂土によって、土壌が水や養分を蓄えにくく落ち葉が乾燥しやすくなっていたことや、木々が大きく育たず、地表の炎が枝葉に達しやすかったという分析も報告されました。

「樹冠火」の影響で火が拡大した可能性
「樹冠火」の影響で火が拡大した可能性

「もう少し早い段階での応援要請も…」消火体制への意見も

また、消火態勢についても…
     
愛媛大学大学院地域レジリエンス学環・芝大輔准教授:
「(他市町の活動は)結果的には3日目を迎えた時点。もう少し早い段階での要請という選択肢もあったんじゃないかなと」

今治市が県内全域の消防に応援を要請したのは2日目の夜。
しかし、山火事発生から約3時間後には県下の消防本部の応援態勢は整えられていて、より早く他の市町に応援を要請する選択肢があったのでは、とする意見もあがりました。

もう少し早い消火の応援要請の選択肢もあったのでは
もう少し早い消火の応援要請の選択肢もあったのでは

「治山ダム」や「尾根沿いの防火帯」など5つの基本方針を提言

11月25日、検討会は5回に渡る会合を経て今治市に復旧・復興計画の報告書を提出しました。報告書で示されたのは復旧・復興に向けた5つの基本方針です。

「二次災害を防止する森づくり」では、保水力が低下した土壌からの土砂流出を防ぐため、山を流れる渓流の勾配をゆるやかにする「治山ダム」などを整備することを指摘しています。

県東予地方局森林林業課・吉原千裕主幹
「まだまだこの一帯、上の方でも真っ黒なままの状態ですので出来るだけ早く工事を施工したい」

出火元となった長沢地区では、2026年3月下旬の完成を目指してこの治山ダムの工事が現在進められています。

また、「林野火災に強い森づくり」では、防火性の高いウバメガシやヤマモモなどの植樹や尾根沿いに防火帯を設けるなどとしています。

報告書では尾根沿いの防火帯など5つの基本方針
報告書では尾根沿いの防火帯など5つの基本方針

「あの時の判断としてはベストな判断」消火の初動体制の整備も

そして消防の対応は適切だったのか…

今治市・徳永繁樹市長
「このあたりは(今治市)消防がしっかりと検証したところ、あの時の判断としてはベストな判断が出来ている」

徳永市長は、今治市消防による応援要請は適切なタイミングだったとしつつ、報告書に沿って応援要請を含めた出動基準の数値化など初動体制の整備を改めて行っていくと言及しました。

「あの時の判断としてはベスト」
「あの時の判断としてはベスト」

山火事の原因は?”火の気はない場所”からの出火

今治市と西条市にまたがり広範囲に被害をもたらした今回の山林火災。その出火の原因は。山林火災の火元と見られるのが今治湯ノ浦インターチェンジから南に約700mの山あいです。

住民:
Qこの辺りって火の気はある?
「ないです」

火の気がない場所からの出火。その原因について警察や消防が付近の住民や土地所有者などに聞き取りを行い、半年にわたって調査を進めてきましたが…

今治市・徳永市長
「タバコ、放火、いろんな可能性があるという風なことでひとつひとつ潰して参りましたけど、特定に至らなかったということが最終報告でございます」

今治市は出火原因を「不明」とする報告書を公表しました。

「火の気はない場所」とかたる通報者
「火の気はない場所」とかたる通報者

山林火災の教訓を生かして…私たちの心構えが何より重要

3月の山林火災を振り返って今治市の徳永市長は。
「今年も火災の危険性が高まる季節を迎えています。本市におきましても林野火災の教訓を生かし二度と大規模火災を発生させないことを肝に銘じ対策に取り組んで参ります」

全国的に山火事が多発し、その恐ろしさを改めて知った2025年。
本格的な冬を迎えた今、二度と同じ被害を繰り返さないためには、行政の取り組みだけでなく、私たち自身の日頃の心構えこそが何よりも重要です。

山火事を発生させない心構えを
山火事を発生させない心構えを
テレビ愛媛
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