一時期はブームとなった料理や湯沸かしもすべて電気で行うオール電化。ただ、いま”敢えて”ガスに回帰する動きが見られるという。なぜなのだろうか?
災害の激甚化、頻発化が進行
気候変動の影響などにより自然災害の激甚化、頻発化が目に見える形で進んでいる日本。
静岡県牧之原市周辺では2025年9月、国内最大級の竜巻によって甚大な被害に見舞われ、被災直後に住民に困っていることをたずねると、間髪入れずに「電気」と返ってきた。
水道が使えることに感謝しつつ、風呂に入れないことが理由だという。
オール電化からガス併用へ
2018年1月に大規模な停電が発生した静岡県小山町周辺。
この停電は災害ではなく送電線の故障が原因だったが、厳しい冬の寒さの中、オール電化の家に住む人は暖を取るのにも近隣の家を頼るしかなかった。
こうした中、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて、発電と給湯を同時に行う家庭用燃料電池システムのエネファームが注目されていて、2009年1月の発売以来、累計販売数は2024年12月末の時点で54万台を超えた。
実際に静岡ガスでも販売台数が年々増え、2023年は約500軒がオール電化からガスへと切り替えていて、営業本部の杉山剛己マネージャーは「災害対策など意識の高まりは我々もすごく感じている。その中でエネルギーを分散する、ガスと電気の両方を使える状態にして分散することを対策として考えている顧客が増えてきたと感じている」と話す。
災害の備えに補助金も
静岡市駿河区に住む60代の夫婦はこれまでガス給湯器を使用していたが、「給湯器だけ買うよりはエネファームの方がお得。災害にも安心という意味で検討しコスト面でもいい感じだったので購入を決めた」と、買い替えに合わせて2025年7月にエネファームへと切り替えた。
仮に停電が発生した場合でも1週間程度は生活することができ、ネックだった価格面も2025年度から国が設けた補助金制度によって抑えることができたという。
夫婦は「ずっと静岡で地震のことなど言われてきたので、一応、そういう(防災)意識はちゃんと持っていて、その中に、これ(エネファーム)がはまってきたという感じ」と振り返った。
ポータブル電源などの代替手段も備えて
一方、防災アドバイザーの高荷智也さんは停電対策としてエネファームの有効性を認めつつ、「コンセントをさせる蓄電池、ポータブル電源などを購入して、そのポータブル電源をエネファーム(から供給される電気)で充電する。ポータブル電源から最大1500wまでの家電の電力を使うことができるので、それで大型の家電を動かす形のエネファーム+αで準備をしてもらうことで、より現実的に使用できると思う」と、代替手段を構築しておくことが重要だと指摘する。

古くから言われる通り、「備えあれば憂いなし」を念頭に、メリットとデメリットを見極めながらいざという時に困らないようにしておくことが大切だ。
(テレビ静岡)
