学校・病院や飲食店で感染者が増加
「新規陽性の方の数が反転してまた上がった、という状況。もともとの陽性の方の数がここのところずっと高いので、ここで上がっているということはとにかく気にしていて、上がり続けないように、と注意しているところ」
国立国際医療研究センターの大曲貴夫センター長は、危機感をにじませた。
10月15日に行われた東京都の「モニタリング会議」では、感染状況について、新規陽性者数と感染経路不明者数ともに増加比が100%を超え、増加傾向にあるとの分析が出された。
感染経路については、最も多い家庭内感染が先週の30.2%からほぼ横ばいの31.8%だったが、今週は病院や大学の寮など複数のクラスターが発生したこともあって、保育園や学校、介護施設、病院などの施設内感染が先週の16.7%から21.7%に増加した。
次いで、職場9.7%、会食9.1%、接待を伴う飲食店等7.4%となっていて、職場や会食での感染割合が減った反面、施設と接待を伴う飲食店などの感染割合が増えている。

さらに、先週に引き続き大曲氏は「休憩室」について述べ、注意を促した。
「休憩室は、多くのところがそうだが狭い。窓もないところも意外とあり、空調も悪いと。具体的にリスクが上がるのがどういう時かというと、そこに複数人がいて、近くに座ってご飯を食べる、その時にはマスク外してますよね。という状況で一定時間、15分とか30分とか一緒にいるのはやはり危ない。そこをリスクを減らそうと考えると、やはり人数を減らそうという話になると思う」
と指摘。さらに、休憩室に窓が1つしかないといった場合は窓とドアを開ければ空気が流れる、とも。
「言ってみれば簡単なことだが意外と気がつかないことが多い」
大曲氏が言うように、身近なところでの工夫が大事なのだろう。

病院でのクラスターも発生…厳しい現状続く
また、東京都医師会の猪口正孝副会長は、医療現場の現状について次のように述べた。
「今週は病院でのクラスターが結構発生している。もし病院で感染すれば重篤化するし、死亡率も残念ながら高い状況。そういうことを避けるために病院側はものすごく気を使っている。この状況が続いていることを是非ご理解いただきたい」
さらにこう続けた。
「生活全てがプレッシャーの中でやっている。今、院内感染でクラスターをおこしているのは全てがコロナ病棟ではなく、普通の一般病棟。だから普通の病棟の皆さんも相当苦労している」
「陽性者以外にも、陽性者と同様の感染防御対策と個室での管理が必要な疑い患者を、1日あたり都内で150人程度受け入れている。これは個室が150人分使われているということ。医療提供体制としては相当な圧迫を受けている」
強い負担が長く続いている苦しい状況を“ボディーブロー”という言葉も使い、改めて訴えた。

その反面、15日の会議では感染状況、医療体制とも総括評価は先週と変わらず上から2番目に据え置いたが、現状の新規陽性者数は第1波のピークとほぼ同じ水準だ。
先週も都の幹部の「発射台が高い状態」という発言について書いたが、そのような中で年末の忘年会シーズンが近づいてくることから、会議では「年末に向け、大人数での会食の機会が増えることが想定されるが、このような行動に伴い感染リスクが増大、新規陽性者数がさらに増加することが懸念される」という呼びかけもあった。
先週は“下げ止まり”だったが、今週は増加比が100%を超えたことから“高止まり”といえる。激増とならず、まずはこの高止まりでとどまれるのかどうか、「マスク着用」「手洗い」「3密回避」の徹底が重要だ。
(執筆:フジテレビ社会部 都庁担当 小川美那)