高市首相は、台湾有事で日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる具体例として「戦艦を使った武力行使も伴うものなら存立危機事態になりうる」との考えを示した7日の衆院予算委員会での答弁について、10日の衆院予算委で改めて問われ「特に撤回・取り消しをするつもりはない」と述べた。立憲民主党の大串博志議員の質問に答えた。
大串氏が、中国によって台湾への「武力行使が行われれば存立危機事態になるという踏み込んだ発言を総理として初めて行った」と指摘したのに対し、高市首相は、7日の衆院予算委での立憲・岡田克也元副総理からの質問が「テレビ番組で取り上げられた台湾海峡を巡る情勢に関する様々な想定について議論するものだったので、事態の推移によっては武力行使に発展する場合もあり得るということを申し上げた」と、答弁の前提をまず説明した。
そのうえで、「実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて政府が全ての情報を総合して判断すると明確に申し上げた。存立危機事態にあたるか否かは、これに尽きるものだと考えている」と強調した。
大串氏は、7日に高市首相が「台湾を完全に中国・北京政府が支配下に置くためにどのような手段を使うか、単なるシーレーンの封鎖かもしれないし武力行使かもしれないし、サイバープロパガンダかもしれない、いろんなケースがあると思うが、戦艦を使って、武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースであると考えている」と答弁した部分について、「国名・地域名・事態・状況を具体的に話したうえで、『存立危機事態にあたり得る』という答弁は、極めて重い」と述べ、7日の高市首相の答弁について「軌道修正された方がいいのではないか」と質した。
高市首相は、「最悪のケースを想定して答弁した」と強調したうえで、「いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して政府が全ての情報を総合的に判断するものである」と繰り返し、「政府の従来の見解に沿ったものであり、特に撤回・取り消しをするつもりはない」と述べつつ、「あえて(最悪の)ケースを挙げたが、今後は慎ませていただく」と、答弁内容ではなく国会質疑への応答要領を軌道修正した。
大串氏は、小泉防衛相にも答弁を求めたが納得せず、「日本が戦争に進むかどうかの大きな論点だ」として、集中審議を行うよう求めた。