東京・池袋のホテルで、82歳の男性を刺して死亡させた罪などに問われた26歳の女に対し、東京地裁は20日、懲役6年の判決を言い渡した。

女は2022年1月、東京・池袋のホテルで、82歳の男性から約3万円を盗んだ上、カッターナイフで胸と太ももを刺して死亡させた罪などに問われていた。

この事件には、「知的障害」と「性の搾取」という特異な背景があった。

路上で売春を持ちかけ…

判決によると藤井遥被告(26)は2022年1月21日、東京・池袋の路上で82歳の男性に売春をもちかけ、近くのラブホテルに入った。藤井被告は被害者が入浴中に男性から現金3万1160円を盗んだが、男性が盗まれたことに気が付き、トラブルに。男性は藤井被告に胸と右の太ももを、刃渡り7センチのカッターナイフで突き刺され。出血性ショックで死亡した。藤井被告が問われた罪は、窃盗、傷害致死、銃刀法違反だ。

発生当初は“パパ活”事件などと報じられた 画像はイメージ
発生当初は“パパ活”事件などと報じられた 画像はイメージ
この記事の画像(3枚)

藤井被告は法廷で、「間違いありません」と起訴内容を認めていて、検察側は懲役9年を求刑していたが、東京地裁が言い渡したのは求刑を3年下回る懲役6年だった。

オンラインゲームで知り合った男

東京地裁は判決で、「ホテルで現金を盗んでいることに気づいた男性にとがめられて口論となり、カッターナイフを突き刺した。命が奪われた結果は重大だ」と指摘。犯行そのものは厳しく批判している。

さらに判決は、藤井被告が地方から東京に出てきた経緯について、オンラインゲームを通じるなどして知り合った男に好意を抱き、2021年夏頃から東京で一緒に暮らすようになったと指摘。東京での生活については、「同人(※同居していた男)らが手配した客や被告人が自ら見つけた客に対して援助交際等と称して売春を行い、その際に機会があれば客の財布等から現金を抜き取るなどして生活をしていた」と述べている。

知的障害につけ込まれ…性搾取

判決はさらに、藤井被告の精神鑑定を行った医師の証言から「軽度の知的能力障害及び重度の注意欠如多動症といった精神障害を有しており、それらの特性により、不適切な環境に身を置き犯罪に巻き込まれやすい傾向や、予想外の事態に直面した際に混乱、困惑して突発的、衝動的に場当たり的で不適切な行動をとりやすい傾向があったとされる」と述べている。

東京地裁は懲役6年を言い渡した
東京地裁は懲役6年を言い渡した

こうした知的障害などにより、被害者とのトラブルという予想外の事態に直面した際に、「選択肢の乏しい状況に追い込まれ、突発的、衝動的に被害者を刺突するという行動に出たことがうかがわれ」る、と認定した。

さらに、「被告人は、その恋愛感情を利用されて売春を繰り返すなかで本件犯行に至ったという面が見受けられる」とも述べた。

その上で、「障害の影響のために社会適応が困難になり、このような不健全で不安定な生活環境に身を置かざるを得なかったとも考えられる」として、「このような背景には、ある程度同情の余地がある」と指摘。求刑を3年下回る、懲役6年を言い渡した。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。