2022年7月8日、安倍晋三元総理が凶弾に倒れて死亡した事件から3年あまり。10月、奈良地裁で、銃撃したとされる山上徹也被告の裁判員裁判が始まった。冒頭陳述などによると、山上被告は、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をしたことから、教団に恨みを募らせたことが犯行の動機となったという。
こうした裁判を、同じ「宗教2世」は複雑な思いで見つめている。

宗教2世の苦悩

山上被告と同じく旧統一教会の宗教2世、冠木結心さんは、「私も教団に家庭や人生を壊された一人。山上被告の思いを理解できてしまう一面がある」と語る。

高校時代には気づけば、母親が入信していた。

夫との不仲で孤独を抱えている母を「支えてあげたい」という一心で、自らも信者となった。
周囲との亀裂はみるみる広がった。

友人や同僚が当たり前の青春を楽しむ中、「純潔こそ神の望み」などの教義によって、異性と話すことでさえ母親に咎められた。

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飲酒なども、「堕落につながる」として固く禁じられた。

教団の勧めで結婚も…

21歳の時、教団の教えに従い、「合同結婚式」に参加し、韓国人男性と結婚したが、夫からの度重なる暴力で数年後に離婚。再び教団の勧めで、別の韓国人男性と再婚し、韓国に渡ったが、相手は定職もなく多額の借金を抱えていた。

大家から借家を追い出され、不衛生なプレハブ小屋で暮らしたこともあった。

そうした貧困は次第に心身を蝕んだが、教団は一切、救いの手を差し伸べてくれなかった。

脱会を決意したのは、2012年の教祖・文鮮明氏の死だった。

偉大だったはずの教祖が、普通の人と同じように病死したことを知り、教えが間違っていたと認識。2人の娘とともに逃げるように日本へ帰国した。