天皇皇后両陛下は、11月8日から2日間の日程で「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席するため三重県を訪問される。水産資源の保護・管理と海などの環境保全を目的としたこの大会には、毎回、天皇皇后両陛下が出席されてきた。
今回は、20年前の平成17年に神奈川県横浜市で開催された「第25回大会」に出席された上皇ご夫妻のご様子を取材した2005年12月18日放送「皇室ご一家」(第1353回 天皇・皇后両陛下 海づくり大会へ ~横浜市~)を振り返る。
なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。上皇ご夫妻を「天皇皇后両陛下」などと記載する。
障害者支援施設「横浜らいず」
天皇・皇后両陛下は、11月19日と20日の両日、「第25回全国豊かな海づくり大会」ご出席のため、神奈川県横浜市を訪問されました。
障害者支援施設「横浜らいず」では、現在18歳以上の64人が生活しています。また、お年寄りのためのデイサービスセンターも設けられています。
ストレッチルームで歩行や起立訓練をしている人たちに優しく励ましの声をかけられた両陛下。
デイサービスセンターでは、お年寄りたちが絵手紙や陶芸、機織りをしていました。ここではパソコン教室も開かれるなど、多くのプログラムが用意されています。
両陛下は「上手にかけましたね」「どうぞお元気でね」などとやさしく話しかけていらしゃいました。
日本新聞博物館
両陛下はこの日、神奈川県庁近くにある日本新聞博物館も訪問されました。
横浜市では、明治3年に日本で初めて日刊の新聞が発行されました。館内では、江戸時代後期のかわら版から現代までの新聞の変遷を時代ごとに展示しています。
陛下は「記者の海外への駐在はいつ頃からですか」などと盛んに質問していらっしゃいました。
第25回全国豊かな海づくり大会 歓迎レセプション
この夜、横浜港に面したホテルでの海づくり大会のレセプションに出席されました。
乾杯の後、出席者と和やかに歓談された両陛下。
この席には、大会の絵画と習字コンクールの入賞者たちが招かれていました。レセプションの前に作品をご覧になった両陛下は、受賞した人たちに「おめでとう」と声をかけていらっしゃいました。
全国豊かな海づくり大会 式典行事
翌20日、海づくり大会の式典がパシフィコ横浜国立大ホールで行われました。大会が政令都市で開かれるのは初めてです。
水産資源の保護と海の環境を守ろうと始められたこの大会。今年は「光る海・未来を映す 大きな鏡」のテーマの下、全国の水産関係者ら2000人が式典に出席しました。
《天皇陛下 おことば》
横浜市において開催されることは、そのような東京湾を豊かな海に再生させることに、首都圏に住む多くの人々の関心を高める契機として、意義深いことと思われます。この大会が、海に対する関心を更に高め、多くの人々が豊かな海づくりを目指して協力していくことに資することを願い、大会に寄せる言葉といたします。
長年、水産業に貢献してきた人々の表彰です。
この日会場の周辺では、ミニ水族館や漁師による魚のさばき方など様々なイベントが行われ、大会を盛りあげました。
《最優秀作文の朗読》
私の通っている西柴小学校には、特設クラブとして、「西柴アマモ隊」というものがあります。そのアマモ隊は、結成されてからいろいろな活動に参加してきました。そのアマモ隊が結成される元になったのは、私が4年生の時にクラスの目標となった「友だちいっぱい 夢いっぱい 命いっぱい」です。
最後に地元の子供たちが「海をきれいにしよう」と呼びかけ、海洋少年団員らが手旗信号でメッセージを伝えました。
この後、両陛下はパシフィコ横浜に隣接する臨海パークでの放流行事に臨まれました。
まず大漁旗を掲げた漁船などの海上パレード。
続いて両陛下による稚魚の放流です。最初にマアナゴとマコガレイを。
2回目には、マダイとホシガレイの稚魚を放流されました。
放流行事の最後に両陛下は、漁業後継者の親子にアワビとサザエなどの稚貝を手渡されました。
横須賀沖で稚貝を放流する親子の船をいつまでも手を振って見送られた両陛下です。
称名寺と金沢文庫をご視察
横浜市郊外にある名刹・称名寺(しょうみょうじ)。
海づくり大会ご出席の後、両陛下は、称名寺と隣接する県立金沢文庫を見学されました。
称名寺は、鎌倉時代中頃の1259年に二代執権・北条義時の孫、実時が創建した寺です。
池を中心とした浄土式庭園。両陛下は、紅葉が見頃のこの庭園をゆっくりと散策されました。
続いて県立金沢文庫へ。
ここは、称名寺の文化財を保管している書庫です。現在は、国宝や重要文化財を含む8000点あまりを収蔵しています。
称名寺の本尊・弥勒菩薩立像を見つめられる両陛下。
金沢文庫にある古文書4000点あまりの全てが、国の重要文化財に指定されています。
両陛下は、鎌倉仏教の貴重な絵画や書など、一点一点を熱心にご覧になりました。
晩秋の横浜で、多くの人々と交流を持たれるとともに、歴史や文化にふれられた天皇・皇后両陛下です。
(「皇室ご一家」第1353回 平成17年12月18日放送)
