伊東市議会は10月31日、田久保眞紀 市長に対する二度目の不信任を議決し、田久保市長の失職が決まった。学歴詐称問題に揺れた約5カ月を振り返る。
田久保市長の就任から間もない6月初旬。
すべては1通の告発文から始まった。
「東洋大学卒ってなんだ!彼女は中退どころか、私は除籍であったと記憶している」
そこには田久保市長の学歴詐称を指摘する文言が記されていた。
これを受け、正副議長に卒業証書とされる書面を見せた田久保市長。
だが、疑念は拭えず6月25日の市議会本会議では「東洋大学法学部を平成4年3月に卒業しているのか?」との質問があがる。
これに対し、田久保市長は「この件に関してはすべて代理人弁護士に任せているので、弁護人から公式に発言の無い限りは個人的な発言は控える」と、当初は告発文を“怪文書”と切り捨て、まともに取り合わなかった。
ところが、議会側が百条委員会の設置方針を固めると「前に見せているような卒業アルバムや証書など、とりあえず手元にあるものはそういう風に(公開)していこうかなと思う」と発言に変化が見られるようになる。
しかし、迎えた7月2日の会見に約束したはずの卒業証書は持参しなかった。
にもかかわらず、「一度卒業という扱いになって、なぜ除籍になっているのかはきちんと事実関係に基づいて確認していかないと(いけない)」と“本物”との姿勢を崩さず、代理人の福島正洋 弁護士も「あれが普通に考えて偽物とは思わないと思う」と強調。
7月7日の会見でも田久保市長が「私は本物だと思って、各方面、必要だと思った方に見せている」と口にすれば、福島弁護士は「私の目から見てあれが偽物とは思っていない」と言い、同月18日には「偽物ではないかという疑惑もある」と問われると、田久保市長は「いえ!」と語気を強めた。
こうした中、東洋大学は8月6日にホームページを更新。
「本学学則では、卒業した者に、卒業証書を交付することとしており、卒業していない者に対して卒業証書を発行することはありません」
公式声明を発表したが、田久保市長は意に介さず「卒業できていない人間に卒業証書を渡さないのは当然だと思うので、そこはきちんと確認するべき」と、大学側に責任を転嫁するかのような発言に終始した。
このように一貫して強気な態度を通した田久保市長だったが、市議会の百条委員会は調査の結果、「東洋大学から提出された記録により、市長が保有する卒業証書とされる書類は正規に発行されたものではないことが明確となった。東洋大学から提出された追加の記録をつぶさに確認することで、市長が大学を卒業したものと勘違いしていたとする主張自体がおよそ成立することはありえないことであると判定づけることができた」と、市長の発言や認識は虚偽であると認定。
ただ、田久保市長の発言の矛盾は他にもある。
市長選では新図書館の建設反対を掲げ、ハコモノ行政からの脱却を訴えていたが、就任後には温泉カフェに図書館を併設させる構想を市民との対話集会で披露し、「伊東で出来ないかどうか、実現の方向性を探っている」と、すでに別の図書館構想の実現に向けて自らが先頭に立って動き出していることを示唆。
このことを指摘されると「ハコモノというのは、あくまでもすべての建物を否定するものではない。建てても活用されなかったり建てたのに費用対効果が見合わないものを
ハコモノと呼んでいるだけで、すべての建物を否定する、公共施設そのものを否定することではない」と反論した。
一方で、市長選で争点となった元々の新図書館計画については、7月31日に「水面下で激しく動いている」と、何か大きな陰謀が渦巻いているかのごとく発言。
伊東市がホームページ上で「田久保市長就任の翌日である5月30日に入札を中止し、現状は白紙の状態となっております」と、田久保市長の発言を否定する異常事態となっている。
また、新図書館計画と共に“水面下”での動きを問題視したメガソーラー計画も、県の元副知事で、この問題が発覚した当時対応に当たっていた静岡市の難波喬司 市長が二度にわたって田久保市長の発言を否定し、伊東市も「事業者は開発に必要なすべての許可を取得している状況ではないため、現状、工事の進捗は見られません。また、近年、事業者からの連絡もございません」と火消しに追われた。
さらに、田久保市長が就任以来、空席が続く教育長ポストについても「(市議会9月定例会)最終日には教育長の人事が上がるようにということで私の方では進めていた」と主張したものの、西川豪紀 教育部長は「現状、特段誰に教育長に就いてもらえるか全く決まっていない状況」との見解を示し、「人事案を出すところまで進んでいなかったということか?」と聞かれると「その通り」と市長の発言を打ち消している。
このように様々な問題が表面化する中、市議全員から不信任を突き付けられた田久保市長が選択したのは議会の解散だった。
田久保市長は「伊東市が改革の道を進み、そして刷新されていく、つまりは衰退の道から再生の道へ至る過程において、今のこのあり方で良いのか改めて市民の皆さんに信を問いたい」と声高に訴えたが、迎えた10月19日の市議選では定数20に対して、“反田久保派”が19人当選。
民意は田久保市長を支持することなく、31日に二度目の不信任決議案が出され、可決するに至った。
 
     
       
         
         
        