対価を得るための性交渉、違法性は?
被告の女性は、顧客である夫の性欲処理に商売として応じていたに過ぎず、そのことが婚姻共同生活の平和を害するとはいえないと主張。
多額の年会費を払って会員になった男性会員に対して、失礼のないよう振る舞わなければ客を紹介して貰えなくなる恐れがある。特に理由もなく性交渉を断ることができず、対価を得るために性交渉に応じていただけで、違法性はないとした。
一方、妻は、被告の女性は高収入を得たいが為に自分の意志で交際クラブに所属しており、違法性がないとはいえないと主張した。
裁判所は、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、誘惑の有無や自然の情愛によって生じたのかに関わらず、他方の配偶者の権利を侵害し、その行為は違法性を帯びる、との最高裁判決を引用。
「理由も無く性交渉を断れなかった」との被告女性の主張については、「交際クラブが性交渉を義務としていた事実は認められない」と判断した。
被告女性には選ぶ自由があったなどとして、違法性を阻却する事情はないとし、妻側の主張を認めた。
損害の有無と額
妻は、夫と被告女性の不貞行為で適応障害になり、多大な精神的な苦痛を受けたとし、慰謝料の額は300万円をくだらないと主張した。
裁判所は、妻は夫の不貞を知った後、1か月間パニック状態に陥り、3か月間は食事も睡眠もほぼ取れず、起き上がれない日々が続いたと認定。
体重は減少し、体調不良を子どもたちに隠すことができず、自殺を考えて遺書まで作成したという。心療内科を受診し、適応障害とも診断されている。
それでも、子どもたちの「父と一緒にいたい」という気持ちを尊重し、離婚しない道を選んだ。
夫と女性が会っていた自宅近くのホテル周辺には、いわゆる“パパ活”をしているようなカップルがいることがあった。そういった人を見かけると、喉が締めつけられるような感覚になり、咳が出たり、動悸がする状態が続いていると、裁判所は認定した。
その認定事実を元に、裁判所は、「イヤイヤ期の長女の育児を継続し、家族のために自身の時間や力を費やしていたにも関わらず、その傍らで夫と被告が不貞行為をする関係にあったことにより、甚大な精神的苦痛を被った」と認定した。
慰謝料は150万円
東京地裁は10月、妻と夫は離婚するまでには至っていないが、夫と被告が会っていた頻度、期間に鑑みて、夫と被告の不法行為で妻が被った精神的苦痛を金銭的に評価すると、150万円はくだらないと判じた。
被告に対しては、弁護士費用15万円を加えた、合計165万円の支払いを命じた。
