2025年8月の豪雨災害で約2メートルもの浸水被害を受けた霧島市隼人町の温泉施設「西郷どん湯」が、10月28日に82日ぶりの営業再開を果たした。200年の歴史を持つこの温泉施設は、地域住民らの期待を集め、早朝から多くの常連客でにぎわいを見せている。
2メートルの浸水から復活へ
8月8日、霧島市や姶良市を中心に鹿児島県内を襲った豪雨災害。「西郷どん湯」も約2メートルの浸水被害を受け、施設内は大量の泥で覆われる甚大な被害を受けた。

「色々な人にお世話になって援助してもらって大変感謝している」と話すのは、西郷どん湯の中村良美さん。ボランティアの協力を得ながら、泥の撤去や電気設備の修理など、再開に向けた復旧作業が進められてきた。
浸水直後の取材では、浴場やその周辺が大量の泥で覆われていた状況だったが、現在は泥がきれいに除去され、脱衣場の床の張り替えや温泉をくみ上げるポンプの修理なども完了した。
待ちわびた常連客が朝風呂を満喫
10月28日午前6時、再開を待ちわびた常連客たちが続々と「西郷どん湯」を訪れた。湯船には自慢の掛け流しの温泉が張られ、再開を祝った常連客たちはさっそく朝風呂を楽しんだ。
「ひどかったから被害が。川向かい(の温泉)に通っていたが、こっちが同じメンバーで来るので楽しみ」と常連客の一人。別の常連客は「私はもう赤ん坊のころから入っている。1日3回ぐらい入っていた」と語り、この温泉との深い絆を示した。朝風呂を楽しんだ常連の女性に湯の具合を尋ねると「ちょうど良かった」と笑顔で答えた。

復旧進む霧島の温泉施設
霧島市内では他の温泉施設も復旧に向けて動いている。妙見温泉にある「きらく温泉」の露天風呂は、災害後に流入した大量の土砂が災害ボランティアにより手作業で取り除かれ、9月末に営業を再開している。
一方、交通面ではまだ課題が残る。JR肥薩線では吉松ー隼人間で運休が続き、復旧のめどは立っていない。また姶良市の国道10号にかかる網掛橋では全面通行止めが続いているが、こちらは11月中旬には通行再開となる見通しだ。
無料開放で地域に貢献
「西郷どん湯」では11月6日まで温泉を一般に無料開放する予定で、宿泊は11月からの予約分を受け付けているという。
「この役になってからは一番ダメージが大きかった。あとに続く人にバトンタッチをしないといけないから」と語る西郷どん湯温泉組合の勝目政隆理事長の言葉からは、200年の歴史を次世代につなぐ決意が感じられる。
82日ぶりの再開で見えてきたのは、この場所がつむいできた歴史と地域住民との深い絆だった。
(動画で見る:常連客でにぎわい 200年の歴史ある温泉施設「西郷どん湯」復活)
