宮崎市高千穂通りで車が歩道を暴走し、2人が死亡、4人が重軽傷を負った事故から、28日で10年です。
遺族は28日、事故の現場で花を手向けました。
加害者の裁判を通して、遺族はより罪が重い危険運転致死傷罪の適用を求めましたが、法の壁が立ちはだかりました。
加害者に科せられた罪は妥当だったのか、遺族は今も考え続けています。
(森山裕香子記者)
「10年前のきょう、歩行者にとって安全な場所であるべきこの歩道を、1台の車が暴走しました。大切な人を失った遺族は、毎年欠かさず現場を訪れ、花を供えます」
今年も事故現場を訪れた藤本優さんと妻の洋子さん。
藤本さんは妹のみどりさんを亡くしました。
10年前の10月28日、宮崎市の中心部、高千穂通りで事故は起きました。
鹿児島県の当時73歳の男が運転する軽乗用車が、歩道をおよそ640メートルにわたり、時速最大およそ60キロで走行。
歩行者や自転車を次々とはね、2人が死亡し4人が重軽傷を負いました。
亡くなった藤本みどりさんは、旅行のチケットを受け取りに行った帰りに事故に遭いました。
妹を大切に思い、一緒に人生を歩んできた兄の優さん。
かけがえのない妹を失い、10年が経った今も悔やんでいます。
(遺族 藤本優さん)
「何年たっても…だめですね。なんでほんとにあの時に、その日にかぎって(みどりさんを)家まで(送り)届けなかったかなと。それが一番悔いが残ってるんですよ。だからもし、天が一言だけ、一つだけ願いごとを聞いてやると言ったら、事故に遭う1時間前にタイムスリップして、ちゃんと(みどりさんを家まで送り)届けて」
軽乗用車を運転していた男は、危険運転致死傷の罪に問われました。
(遺族 藤本優さん)
「妹はちゃんとルールを守って、歩道を歩いていて、信号待ちをしてたでしょ。車が後ろから来るなんて思いもしないじゃないですか」
裁判では原因について、「てんかん」を認識した状態で車を運転した「故意」か、「認知症」による「過失」かが争点になりました。
過失運転致死傷罪か危険運転致死傷罪か…
(裁判官)
「被告人を懲役6年に処す」
裁判所が出した結論は、事故の原因が「てんかん」とは認められない、つまり「危険運転致死傷罪は認められない」というものでした。
遺族は控訴を求めましたが、検察は断念。
(遺族 藤本優さん)
「これを危険運転致死傷罪として裁けないのであれば、刑事事件とはいえ、法律はいったい何の存在意義があるのでしょうか」
(遺族 藤本優さん)
「当然、私は危険運転に該当すると思っていました。なぜなら、車道ではなくて歩道を走ったんですよ。しかも通行量の多いところですよね。なのになぜ、それ(危険運転)が採用されなかったのか、自分が死ぬまで心の中にあると思います」