高市首相は24日午後2時から、衆議院で初めての所信表明演説に臨んだ。
高市首相は演説の冒頭「私は、日本と日本人の底力を信じてやまない者として、日本の未来を切り拓く責任を担い、この場に立っている」と切り出した。
【経済財政政策の基本方針】
そして、「今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。そして、日本列島を強く豊かにしていく。世界が直面する課題に向き合い、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す。絶対にあきらめない決意をもって、国家国民のため、果敢に働いていく」と、首相就任の決意を改めて強調した。
その上で「政治の安定なくして、力強い経済政策も、力強い外交・安全保障政策も、推進していくことはできない。この思いを胸に、『日本再起』を目指す広範な政策合意の下、自由民主党、日本維新の会による連立政権を樹立した。さらに、国家国民のため、政治を安定させる。政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案を受け、柔軟に真摯に議論していく。国民の皆様の政治への信頼を回復するための改革にも全力で取り組んでいく。それが国家国民のためであるならば、決してあきらめない。これが、この内閣の不動の方針だ」と、高市内閣の在り方を示した。
【物価高対策】
物価高対策について高市首相は「この内閣が最優先で取り組むことは、国民の皆様が直面している物価高への対応だ。暮らしの安心を確実かつ迅速に届けていく。既に、経済対策の策定に着手するよう指示を行った。野党との真摯な対話と合意を積み重ねながら、速やかに対策を取りまとめ、必要な補正予算を国会に提出する。国民の暮らしを守る経済対策・補正予算となるよう、与野党で知恵を結集したい」と述べて、政府としての最優先事項が物価高対策であると改めて強調した。
また、自民党が参院選の公約に掲げた2万円から4万円の現金給付について「国民の理解が得られなかったことから、実施しない」とした上で「いわゆるガソリン税の暫定税率については、各党間の議論を踏まえ、今国会での廃止法案の成立を期す。軽油引取税の暫定税率も、早期の廃止を目指す。これらの廃止に伴い必要となる国及び地方自治体の安定財源を確保しつつ、廃止までの間も、補助金を活用することで、価格引下げに対応する」と述べた。
この他にも、中小企業・小規模事業者対策として「生産性向上支援、事業承継やM&Aの環境整備、更なる取引適正化等を通じ、賃上げと設備投資を強力に後押しする」と述べ、「自治体向けの重点支援地方交付金の拡充」や「冬の間の電気・ガス料金の支援」に加えて「給付付き税額控除の実現に向けた制度設計の早期着手」などにも言及した。
【人口政策・外国人対策】
所信表明演説の中で高市首相は、「日本の最大の問題は人口減少であるとの認識に立ち、子供・子育て政策を含む人口減少対策を検討していく体制を構築する。人口減少に伴う人手不足の状況において、外国人材を必要とする分野があることは事実だ。インバウンド観光も重要だ。しかし、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じていることも、また事実だ」と指摘した上で、「排外主義とは一線を画すが、こうした行為には、政府として毅然と対応する。政府の司令塔機能を強化し、既存のルールの遵守を求めるとともに、土地取得等のルールの在り方についても検討を進める。そのため新たに担当大臣を置いた」と外国人対策に言及した。
【外交・安全保障】
また、外交政策については「我々が慣れ親しんだ自由で開かれた安定的な国際秩序は、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、大きく揺らいでいる。同時に、我が国周辺では、いずれも隣国である、中国、北朝鮮、ロシアの軍事的動向等が深刻な懸念だ。こうした国際情勢の下、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と語気を強めた。
その上で「日米同盟は日本の外交・安全保障政策の基軸だ。日米両国が直面する課題に対し、しっかりと連携し、日米同盟の抑止力・対処力を高めたい。私自身、トランプ大統領が訪日する機会に会って、首脳同士の信頼関係を構築しつつ、日米関係を更なる高みに引き上げたい」と述べて、27日に来日予定のトランプ大統領との首脳会談への意気込みを示した。
一方で、「沖縄県を含む基地負担軽減に引き続き取り組む。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進める。また、強い沖縄経済を作る」と米軍基地問題を抱える沖縄県への配慮も見せた。
また、韓国やASEAN諸国と「更なる関係強化」を図るとした。
中国との向き合いについては「日本にとって重要な隣国であり、建設的かつ安定的な関係を構築していく」としつつ「経済安全保障を含む安全保障上の懸念事項が存在することも事実だ。日中首脳同士で率直に対話を重ね、「戦略的互恵関係」を包括的に推進していく」と述べた。
ロシアに対しては「ロシアによるウクライナ侵略について、力による一方的な現状変更の試みを許してはならない。日露関係は厳しい状況にあるが、日本政府の方針は、領土問題を解決し、平和条約を締結することだ」とした。
その上で高市首相は、「我が国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要だ。このため、国家安全保障戦略に定める『対GDP比2%水準』について、補正予算と合わせて、今年度中に前倒して措置を講じる。また、来年中に『安保関連3文書』を改定することを目指し、検討を開始しする」と強調した。
【憲法改正・皇室典範改正・昭和100周年】
高市首相は24日午後2時から、衆議院で初めての所信表明演説に臨み、自民党結党以来の悲願であり、自らも実現への高い意欲を示す憲法改正について「私が総理として在任している間に国会による発議を実現してもらうため、憲法審査会における党派を超えた建設的な議論が加速するとともに、国民の間での積極的な議論が深まっていくことを期待する」と述べた。
また皇室典範の改正を巡っては「安定的な皇位継承等の在り方に関する各党各会派の議論が深まり、皇室典範の改正につながることを期待する」とした。
その上で「今年は昭和100年、来年は昭和100周年に当たる。昭和は、戦争、終戦、復興、高度経済成長といった、未曾有の変革を経験した時代だ。記念式典等の関連施策を通じ、この機会を国家的な節目と捉え、先人の叡智と努力に学ぶとともに、平和の誓いを継承し、国際社会の安定と繁栄への貢献につなげる機会としたい」と述べた。
そして演説の結びとして、「『事独り断む可からず(さだむべからず)。必ず衆と与に(もろともとともに)宜しく論ふ可し(あげつらふべし)』古来より、我が国においては衆議が重視されてきた。政治とは、独断ではなく、共に語り、共に悩み、共に決める営みだ。私は、国家国民のため、各党と真摯に向き合い、未来を築いてきたい。どうか、共に日本の新たな一歩を踏み出しましょう」と、本会議場に集まった与野党全ての国会議員に語りかけた。