宮城県知事選(10/26投開票)に6期目を目指して立候補した村井嘉浩氏(65)に単独インタビュー
「変化し続ける県政で人口減少に挑む」と語る村井氏。20年にわたる県政の成果と課題、そして次の10年をどう見据えるのか。
【前編】では、立候補の理由、多選への考え方、人口への対応、DX施策の狙いや働き方改革、税源確保の考え方を中心に聞いた。
ハイライト(要点)
・立候補の理由:病院再編の完遂と半導体誘致の交渉を「自分がやり切るため」と説明
・多選について:成果を見せるのが責任であり、「やり残し」を自ら進めたいと語る
・人口減少対策:「DXによる生産性向上」で新たな突破口を探る
・デジタル施策:県庁の業務効率化を市町村や民間へ波及。情報発信もアプリで最適化
・子育て支援:市町村が担う分野の凹凸を県が均し、DXと財源確保で後押しする方針
・デジタル化:中小企業や介護現場にもDXを広げ「本当の働き方改革」を進める
・税源と福祉:まず稼ぐ力を高め、増えた税収を福祉・教育へ還元する順序を重視
Q. 立候補を決断した理由/多選批判もあります
やり残したことがある。私がやるのが一番早く、うまくいくと考えました。特に仙台医療圏の病院再編は、仙台市に病院が集中して過当競争となり、黒川郡や名取・岩沼などでは救急搬送が遅れる状況があります。地域全体の医療体制を最適化する構想は、摩擦もありましたが“あと少し”で形になります。これを完遂したいと思いました。
また、台湾のPSMCの誘致は破談になりましたが、宮城の工業用地が世界に知られる契機となり、有力な半導体企業と交渉中です。ここまで築いた関係を、自分の力でやり遂げたいと思っています。
Q. 5期20年を振り返って、どのように総括されますか?
人口減少への対応は、最初の任期からずっと課題でした。これからはジェットコースターのように減る時代に入ります。減ってからでは遅い。だからこそ20年かけて産業構造の転換を進めてきました。第三次産業中心から製造業の比重を高め、雇用の受け皿を増やしてきた結果、今ようやく成果が見え始めてきたと感じています。
Q. 人口減少にどう立ち向かうのでしょうか?
従来の4本柱①産み育てやすい社会づくり、②若者の流出抑制、③U・Iターンの促進、④外国人材の受け入れ。これらを続けながら、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加えていきます。
デジタル技術で一人当たりの生産性を1.2倍、1.3倍にできれば、10人分の仕事を8人でこなす社会に近づけます。Google社と協定を結び、県庁の事務処理を“1週間かかっていた仕事が数時間で完了”できるよう改善しました。これを市町村や民間企業にも広げたいと考えています。
Q. 少子化対策よりも、豊かな人口減少社会の構築に重きを置く?
そうではありません。子育て支援は非常に大切です。ただ、保育や教育などは市町村の業務が中心で、県は国に要望して制度や財源の確保、地域間の格差を均すことが役割です。DXは県が主導して広げるべき分野で、両輪で進める考えです。全体を見渡して、県としての役割を果たしていきます。
Q. 少子化対策で6期目でまず取り組むことは?
デジタル身分証アプリ「ポケットサイン」を軸に、出生家庭へ「パパママポイント」を付与することにしました。子育て世帯への情報発信や相談支援をアプリ経由で双方向に行い、連絡先が変わっても行政から支援情報を確実に届けられる仕組みです。
Q. 政治手法が「トップダウン」との批判もあります。
県の仕事のほとんどは職員が自ら考えて進めています。私が矢面に立つのは、県民の批判が出るような数%の案件です。そこだけを切り取ると「トップダウン」に見えるかもしれませんが、人口減少時代を生き抜くためには、変化をし続けないとだめだという危機感があります。批判が出ても、まず方向性を示して議論を呼び起こし、意見を聞いていくのが正しい姿だと思っています。
Q. 6期目の公約で掲げるDXの具体像 5期目との違いを教えてください。
県庁の業務で効果が出始めています。建設現場では顔解析で体調を自動判定し、異常があれば上司に通知。福祉施設ではベッド下のセンサーで夜間の体調変化を検知して共有する仕組みがあるそうです。
小規模事業所ほど導入が難しいため、行政が支援して展開する仕組みをつくりたいと思っています。
Q. 「稼ぐ力を高めてから福祉に回す」という方針の狙いは?
社会保障には現金が必要で、一度始めたら止めることはできません。だからこそ、まず産業と雇用を伸ばして税収を確保してから、その果実を福祉・教育に配分します。根拠となる財源をしっかり示さないのは無責任だと考えています。
プロフィール
氏名:村井 嘉浩(むらい よしひろ)/65歳
経歴:大阪府出身。県議を経て知事現職(2005年初当選)
※肩書・経歴は取材時点。インタビュー収録日:2025年10月6日
編集注
・本文は候補者の見解であり、数値・評価は本人主張に基づきます。
・語句や表現は意味を損なわない範囲で整文しました。
・公平性のため、全候補を同フォーマット・近似文字量で掲載します。