宮崎県内でコメの収穫が最盛期を迎える中、店頭価格は過去最高水準に迫り、消費者の負担が増加している。生産者側も人手不足や資材高騰で経営難に直面しており、綾町ではコメ作りの大変さを伝える体験会が開催された。
コメ価格、過去最高水準に迫る

農林水産省によると、スーパーでのコメ店頭価格の平均は、10月5日までの1週間が5キロあたり4205円となり、前年同時期と比べて887円高騰した。これは5月に記録した過去最高値と同じ水準となっている。
生産者の経営難と消費者の負担

消費者はコメ価格の高騰による家計への負担増加を感じている。一方で、生産者も人手不足や資材(苗代など)の高騰により、コメを作り続けられるかどうか不安を抱えている状況だ。
綾・早川農苑の代表を務める奥誠司さんは、3年間で人件費が約1.25倍、苗代が1年で1箱200円値上がりしたと話す。
コメ作りの大変さを伝える体験会
このような状況を踏まえ、綾町では生産者が消費者にコメ作りの大変さを伝える取り組みが行われている。奥さんが代表を務める綾・早川農苑では、今年から消費者向けに、田起こしから収穫までを行うコメ作りの体験会「田んぼで泥んこプロジェクト」を開始した。

このプロジェクトは、コメ作りの「魅力」と同時にその「大変さ」も理解してもらい、コメの価格について考えてもらうことを目的としている。

綾・早川農苑 代表 奥誠司さん:
普段が安すぎる。このままだったらコメ農家が無くなる。コメ専業は厳しい。

初めて開催された体験会には11の家族が参加した。参加者は6月に泥遊びやジャンボタニシ取り、7月には手作業での田植えを体験。10月13日には、7アールの田んぼで黄金色に実った稲の収穫作業を見学した。

コンバインで稲が丁寧に刈り取られていく様子を見た後、籾から、乾燥、脱穀、籾すりを経て、ようやく玄米となることなどを学んだ。
参加者の声

体験会に参加した子供:
(コメ作りは)難しいことだったから、面白かった。

体験会に参加した人:
あとはもみ殻をとって食べられると思ったが、まだ乾燥させないといけないということも知れる機会にもなり、苗植えの前から遊んだりできたのでいい体験になった。

体験会に参加した人:
食べるまでにこんなに時間がかかるんだよ、というのを子供が分かってくれていたら嬉しい。

また別の参加者は「どういった流れでコメを作っているのか、大変さも分かったので、値段を考慮できる経験になった」とし、適正なコメの値段について「(5キロ)4000円くらいですかね」と答えた。
生産継続のための価格設定

コメをいくらで販売できれば作り続けられるかについて、奥さんは…
綾・早川農苑 代表取締役 奥誠司さん:
キロ800円は割ったら厳しい。5キロで4000円から5000円。今後のことも考えて、日本人が日本人としてコメをずっと食べていくことを考えたら、その数字は下げない方がいい。
増産と継続性の両立への懸念

政府のコメ増産の方針については、「いつでもコメが食べられる状況にするため賛成」とする奥さんだが、人手不足や需給のバランスを保てるかについては不安を抱えている。
綾・早川農苑 代表取締役 奥誠司さん:
増産体制にしたとしても、高齢化もある。本当に農家が農業できるのか。しっかりコメ農家が継続できるような価格設定にしないと今後増産体制にしてもダメ。

消費者は家計の負担を減らしたいと願う一方で、生産者の立場からは、これ以上コメの価格を下げられないのが現状である。
(テレビ宮崎)