静岡市の中心部に位置しながらフロアが埋まらず苦難の船出をした商業施設・けやきプラザは大胆なテナント戦略が奏功し、大幅な経営改善を成し遂げている。
幅広い世代が来店
家族連れや学生など、幅広い世代の出入りが多くにぎわっている印象のけやきプラザ。
JR静岡駅から静岡鉄道のターミナルビルに向かう途中、市の中心街にある商業施設だ。
開業3年目となった今でこそ多くの人でにぎわっているが、当初はテナントの空きも多く赤字だった。
どうやって収益の大幅な改善を成し遂げたのだろうか?
閉館繰り返した苦難の歴史
現在、けやきプラザとなっているこの建物にかつてあったのがSHIZUOKA 109。
若者文化の象徴として2007年にオープンすると、主に女性客をターゲットに一世を風靡した。
しかし、オンラインショッピングの台頭などにより状況が一転。
徐々に客足が遠のき、わずか10年での閉館を余儀なくされた。
そして同年秋、施設を運営する東急モールズデベロップメントは衣料品店の比率を下げ生活雑貨や飲食店に重きを置いた静岡東急スクエアをオープンした。
ところが、2020年に新型コロナウイルスの流行が拡大し、緊急事態宣言が出されたことなどにより中心市街地の人通りが激減。
2021年3月に静岡マルイが51年の歴史に幕を下ろすと、東急スクエアも2023年に撤退を決断した。
“用事がなくても立ち寄りやすい”施設へ
こうした中、新たに開業したけやきプラザは「当初、地下1階のみの開業で、全6フロアのうち僅か約20%の稼働で収入面は非常に厳しい状況だった」と、静岡伝馬町プラザの疋野守一 取締役は振り返る。
空きテナントが目立つ中で空調費や管理費などの固定費が経営を圧迫し、初年度は数千万円規模の赤字となった。
そこで、現状を打開するために打ち出したのが大胆なテナント誘致戦略だ。

疋野取締役によれば多くの人に来館してもらうことを最優先事項に定め、「地域の人に日常的に気軽に利用してもらいたいというコンセプトで運営しているので1階に100円ショップを誘致した」という。
建物の顔とも言える1階部分に100円ショップ大手のダイソーが手がける3つの雑貨店を誘致したのに加え、別のフロアにもディスカウントストアやゲームセンターを呼び込み、“用事がなくても立ち寄りやすい”施設へと変貌を遂げた。
さらに、静岡マルイの跡地に国内屈指の品ぞろえを誇るホビーショップ・駿河屋が進出したほか、飲食店や専門学校、オフィスなどが入る複合ビル・M20が開業したことで、けやきプラザ前を通行する人の数は2024年、コロナ禍以前に近い水準へと回復した。
次の一手に期待集まる
けやきプラザの収支は黒字化に手が届くところまで改善されていて、疋野取締役は「経営が軌道に乗ってきたら中長期的に戦略を練りながら、もう少しトレンド感の強い市街地としてのテナント誘致や街中の賑わいを創出するようなイベントの開催に力を入れていきたい」と先を見据える。
一方、静岡経済研究所の田原真一さんは「スクラップアンドビルドが進み従前の形に戻るというよりはまた新しい街の形を模索していくところにあると思う。周辺の商業施設と連携しながらうまく回遊性を高めていく仕掛けが必要」と戦略を評価しつつ、次なる一手に期待を寄せる。
人口減少が止まらない静岡市で、大型商業施設をどのように再生させて生き残っていくのか…時代と共に変化するニーズを的確にとらえたビジョンと戦略が求められている。
(テレビ静岡)
