静岡市の中心部にある商業施設・けやきプラザ。開業から3年目を迎える中、当初はテナントの空きが目立っていたものの、大胆な方針転換により収益面が大幅な改善を見せています。
鈴木櫻子 記者(10月5日):
日曜日のけやきプラザに来ています。ご覧のように家族連れや学生など幅広い世代の出入りが多く、にぎわっている印象です
新静岡駅のすぐ近くにある「けやきプラザ」。
利用者:
ちょっと高いダイソーなど、東京に行かないと買えないものがあるので足繁く通っている
利用者:
昔はある程度、年がいってないと行けなかったが、小さい子が入れる施設があって入りやすい
利用者:
ちょっと寄り道したい時とか他を見て無い物がある時は来る
開業3年目となった今でこそ老若男女多くの人でにぎわっていますが、当初はテナントの空きも多く、赤字でした。
現在、けやきプラザとなっているこの建物にかつてあったのが「SHIZUOKA 109」。
若者文化の象徴として2007年にオープンすると、主に女性客をターゲットに一世を風靡しました。
しかし、オンラインショッピングの台頭などにより状況が一転。
入口鎌伍 記者(2017年):
10代から20代の女性向けファッションの流行の発信拠点と言われたSHIZUOKA 109もきょうが最後の営業日となりました。ご覧のようにレジを待つ人で長い列ができています
徐々に客足が遠のき、わずか10年での閉館を余儀なくされました。
SHIZUOKA 109・大郷洋一 総支配人(当時):
今後はより一層幅広く日々の生活に根差していけるような、少しだけでも日々の生活が豊かになるようなお手伝いを新しい商業施設としてしていきたい
運営する東急モールズデベロップメントは2017年秋、衣料品店の比率を下げ、生活雑貨や飲食店に重きを置いた静岡東急スクエアをオープン。
ところが…
山口順弘 記者(2020年4月):
この時間、こちらの道路は歩行者天国となっていますが、奥の商業施設への人の流れがないため普段とは違い、閑散としてしまっています
2020年に新型コロナウイルスの流行が拡大し、緊急事態宣言が出されたことなどにより中心市街地の人通りが激減。
2021年3月に静岡マルイが51年の歴史に幕を下ろすと、東急スクエアも2023年に撤退を決断しました。
こうした中、新たに開業したのが「けやきプラザ」です。
ただ…
静岡伝馬町プラザ・疋野守一 取締役:
(開業)当初は地下1階のみの開業で、全6フロアのうちの約20%の稼働で収入面で非常に厳しい状況だった
空きテナントが目立つ中で空調費や管理費などの固定費が経営を圧迫し、初年度は数千万円規模の営業損失となりました。
そこで、現状を打開するために打ち出したのが大胆なテナント誘致戦略です。
まずは多くの人に来館してもらうことを最優先事項に定めました。
静岡伝馬町プラザ・疋野守一 取締役:
なかなか他の商業施設で1階に100円ショップが入っている店はないが、地域のお客さんに日常的に気軽にご利用いただきたいというコンセプトで運営しているので、1階に100円ショップを誘致した
建物の顔とも言える1階部分に100円ショップ大手のダイソーが手がける3つの雑貨店を誘致したほか、別のフロアにもディスカウントストアやゲームセンターを呼び込み、“用事がなくても立ち寄りやすい”施設へと変貌。
さらに、静岡マルイの跡地に国内屈指の品ぞろえを誇るホビーショップ・駿河屋が進出したほか、飲食店や専門学校、オフィスなどが入る複合ビル「M20」が開業したことで、けやきプラザ前を通行する人の数は2024年、コロナ禍以前に近い水準へと回復しました。
これにより、けやきプラザの収支はようやく黒字化が手に届くところまで改善されています。
静岡伝馬町プラザ・疋野守一 取締役:
経営が軌道に乗ってきたら中長期的に戦略を練りながらもう少しトレンド感の強い市街地としてのテナント誘致や、街中のにぎわいを創出するようなイベントの開催に力を入れていきたい
専門家はけやきプラザの戦略を評価しつつ、次なる一手に期待を寄せます。
静岡経済研究所・田原真一さん:
スクラップアンドビルドが進み、従前の形に戻るというよりはまた新しい街の形を模索していくところにあると思う。周辺の商業施設と連携しながらうまく回遊性を高めていく仕掛けが必要
流行り廃りが早く、人口が減少の一途をたどる中、大型商業施設をどのように再生させて生き残っていくのか…時代と共に変化するニーズや客層を的確にとらえたビジョンと戦略が求められています。