クマによる被害がこれまでに無い状況となっている。福島県の会津地方で一日に3件、人がクマに襲われる被害が発生した。背景には、クマが人里におりざるを得ない深刻な状況も窺える。
■喜多方市 路上に倒れている男性
10月16日午前4時ごろ。喜多方市山都町の道路上で60代の男性が顔などから血を流し倒れているのを、新聞配達の男性が発見した。
60代の男性は午前2時半ごろに歩いているところをクマに襲われたとみられ、重傷とみられている。
助けを求められた近隣の女性は「うちに柿の木があるから、それが心配で。だから柿の木の枝を落としてもらおうかなって、いま考えている」と話す。
■昭和村 新聞を取りに行って
さらに昭和村でも。午前5時40分ごろ、村内に設置された新聞受けを訪れた50代の男性がクマに襲われた。
近くの畑にはクマの足跡が残されていて、足跡をたどると川に逃げたと見られる。
近くの住民は「家から出る時に様子見ながら。あたり周辺見て出るようにしないと行けないな」と話す。
■会津若松市 バイクに乗った男性が
捕獲用のワナが設置されたのは、会津若松市大戸町。午前6時20分ごろ近くの市道でバイクを運転していた男性が、親子と見られるクマ3頭と遭遇。
驚いた男性が転倒したところ、体長1メートルのクマに襲われ顔などをケガした。
会津若松市鳥獣被害対策実施隊の鈴木つよしさんは「クマがどこに出てくるか分からない。だから気を付けてもらうしかない。危険だということを、みなさんに理解してもらいたい」と話す。
■木の実が凶作 人里へ
会津地方で相次いで発生したクマの人的被害。2025年に入ってからの被害人数は15人となり、これまでで最も多くなっている。
16日に発生した3カ所の被害現場には、ある共通点があった。それがクマのエサとなる果物や木の実の存在。
クマの生態に詳し福島大学食農学類の望月翔太准教授は「今年に関しては、やはり山の実のなりが少ない。特にクマの場合は、脂肪分をつけなければ冬眠ができないので、脂肪分をつけようと人里の方にやってくる」と説明する。
福島県の調査では、クマのエサとなる木の実がいずれも「凶作」に。この秋は、エサを求めてクマが人里近くに多く出没することが予想されている。
望月准教授は「クマは寒くなったから冬眠するわけではなく、エサをちゃんと食べられて満足したから冬眠をする。エサが無いとクマがずっと満足をせずに、エサを求め続けて、なかなか冬眠をしないということもあり得る」と指摘した。
■遭遇しないための注意点
望月准教授によると、少なくなっている山のエサを雄クマが食べ、追いやられた母子クマが人里にきている状況があるという。
この時期はエサを求めていることから、庭先になっている果物や野菜の収穫を急ぐこと、生ゴミやペットフードを放置しないことなどが大切だという。
また、遭遇しないための準備が重要になる。
例年とは異なり、日中でもクマが活発に行動するようになっている。クマの目撃情報を確認したうえで、山に入る際や山に近い河川敷を歩く際は、クマ鈴やラジオを携帯して音を出しながら行動を。
万が一遭遇してしまったら、逃げたり大声を上げたりするのは逆効果、クマが追いかけてくるおそれがあるので、クマを見ながらゆっくり後ずさりして距離を取ることを意識してほしい。
クマに対する最大限の警戒が引き続き求めれる。