令和のコメ騒動で米の価格が高止まりする中、日本酒をつくる際に必要となる酒米も値段が高騰しています。現場で何が起こっているのか取材しました。
■“日本酒”にも値上げの波…酒米の価格が高騰
新潟市中央区の酒店『都屋』。
【都屋 坂上重成 社長】
「ここまでは緩やかに4~5%のイメージで上がっているが、1~2割上げると宣言している蔵もあるみたい」
県内の酒蔵を中心に、こちらの店では取り扱う300種類以上の日本酒にも値上げの波が訪れているといいます。その要因となっているのが酒をつくる際に必要となる酒米の高騰です。
【都屋 坂上重成 社長】
「備品や水道光熱費も上がっている。そういったものが全体的に上がっているのが影響。特に酒米」
■主食用米への転換で“酒米”生産者減少
酒米の精米を請け負う長岡市のエコライス新潟で倉庫を見せてもらうと…。
【エコライス新潟 豊永有 代表取締役】
「例年、この時期は酒米で満杯になっているが、今年はさすがに半分以下」
保管されている量は例年の半分ほどに。その背景には昨今の主食用米の高騰がありました。
【エコライス新潟 豊永有 代表取締役】
「おととしまでは酒米のほうが高かった。それがコシヒカリ・こしいぶきの方が高くなったので、酒米を作る方が減った」
これまで酒米はコシヒカリと比べて60gkあたり500~1000円ほど高かったといいますが、それが逆転。
さらに時間をかけて乾燥させる必要があるなど手間がかかるため、酒米から主食用米の生産に転換した農家が多いといいます。
さらに、価格高騰の背景には酒米ならではの特徴も。
【エコライス新潟 豊永有 代表取締役】
「普通の精米機はコメとコメをすりあわせて白米にするが、酒米はものすごく大きい砥石にぶつける。大吟醸用のコメだと70時間くらい機械を回し続けて削っていく」
日本酒をつくる際の雑味を避けるため、酒米の精米はタンパク質や脂質を含む表面をよく削らなければなりません。
コシヒカリの玄米と比べてみると、精米後の酒米は粒が小さくなっているのが分かります。
【エコライス新潟 豊永有 代表取締役】
「半分くらい削るというのは、その分、倍に近い値段になるので、去年までの価格と比べると一升瓶あたり1500~2000円近く値上げしないと採算が取れないと思う」
■酒づくりやめる蔵も「悪いスパイラルに入っている」
ただ、高騰分をすべて商品の価格に転嫁するわけにはいかないため、そもそも酒づくりをやめる蔵も出てきているといいます。
【エコライス新潟 豊永有 代表取締役】
「なかなか技術の伝承もうまくいかなくなり、良い酒がつくれなくなるという悪循環。悪いスパイラルに入っているような気がする」
食卓だけでなく、伝統的な日本酒文化にも影を落としているコメの価格高騰。
県が9月議会に提出した補正予算案には、今年産の県産の酒米の購入費用の補助に3億7000万円が計上されています。
文化を絶やさないための仕組みが求められます。