富山県内で9月末、10代から20代による違法薬物の密売グループが摘発された。この事件では、若年層を中心とした密売人がSNSを通じて薬物を販売するという手口が明らかになり、県内での若者の薬物使用増加に警鐘を鳴らしている。

人目につきにくい場所に拠点を構える密売グループ

「まさかこんなところまで来て。やっているとは思わなかった」と近所の住民は驚きを隠せない。違法薬物が保管されていたのは、黒部市の人目につきにくい場所にある建物だ。付近住民によると、この建物は約20年前から空き家だったという。

密売グループは黒部市の建物だけでなく、富山市の倉庫も薬物保管の拠点として使用していた。

県警は両拠点から大麻、MDMA、コカイン、覚せい剤など、約200点もの違法薬物を押収した。

富山市の倉庫近くに住む人は、「深夜や早朝に若い人が車や自転車などで出入りしていた」と話してくれた。
10代の少年も加わる若年層の密売組織
この事件では、密売人や利用客ら10代から50代の9人が摘発された。捜査関係者によると、富山市の無職、小沢亜瑠容疑者(21)がリーダーとして、薬物の仕入れや密売人への指示を行っていた。

密売グループは小沢容疑者と10代から20代の6人で構成されていた。小沢容疑者が16歳の少年や高校生らを密売人として使い、一連の取引を指示していたという。
SNSと匿名通信アプリを活用した手口

密売人たちはSNSで違法薬物を示す「隠語」を使って客を募り、さらに匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」へと誘導していた。実際の薬物の受け渡しは深夜などに直接手渡しで行われていたという。
県警本部組織犯罪対策課の横山武彦次席は、「スマホ1台さえ持っていればSNSや秘匿性の高いアプリでやり取りができる。SNSに対する知識をしっかり持ち、自身を守る。薬物には手を出さないでほしい」と警告している。
増加傾向にある若者の薬物使用
県警によると、県内で違法薬物の使用や所持などで検挙された人数は増加傾向にあり、昨年は80人と過去最多を記録した。このうち約6割が10代から20代の若者だという。

特に若い世代による「大麻」使用での検挙が深刻化している。SNS上では大麻を示す隠語や絵文字の書き込みが増えているとのことだ。
大麻は「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれ、より依存性の高い覚せい剤などを使用する入り口になるという危険性が指摘されている。
背景にある若者の「生きづらさ」
7日に富山市で開かれた講習会では、薬物依存症に詳しい専門家が登壇した。薬物依存症センターの松本俊彦センター長は、家族や友人関係で悩みや生きづらさを抱える若い世代が薬物依存に陥るケースが増えていると訴えた。
松本センター長はさらに、「子ども時代から苦労した経験がある人は薬を使った後も重症化しやすい。医療や保健福祉で支えていくべき」と述べ、薬物使用の背景にある社会的な問題にも目を向ける必要性を強調した。