社会や技術の変化に合わせて、新たなスキルを習得するリスキリング。「学び直し」とも言われていますが、なんと50歳以上の人の7割以上が、定年後のリスキリングに興味を持っているとの調査結果が。

「リスキリング」に取り組むシニア世代。76歳の「大学心理学部2回生」に関西テレビの新人・西中蓮アナウンサーが密着しました。

■教室の一番前の席に「76歳の大学2回生」

続いて向かったのは、宝塚市にある甲子園大学。大学といえばやはり若者が多いイメージですが、本当にシニアの方がいるのでしょうか?

【西中アナ】「いらっしゃいました。一番前の席。あの方じゃないでしょうか」

熱心に授業を聞く女性が最前列に座っていました。

【西中アナ】「70代と聞いていたんですけど、50代後半から60代前半に見えます。とっても若々しい感じで。おいくつですか?」
【岡田喜代子さん】「76歳になります。学校にいる時はすごい若い気持ちでいるんですよ。家に帰って鏡の前に立つとびっくりします」

明るく笑う岡田喜代子さんは、現在、心理学部の2回生。毎日難しい講義を受けているそうですが、どうしていま大学に?

【岡田さん】「私、中卒だったんですよ。それがものすごいコンプレックスで。仕事辞めて絶対高校に行くって決めてて」

■70歳で理容師の仕事を辞め定時制高校に入学 その後大学へ

中学卒業後、埼玉県で50年以上理容師として働いていた岡田さん。70歳で仕事を辞め、娘さんのいる関西へ引っ越すと同時に、定時制高校へ入学。その後この甲子園大学を選んだのには理由があるそうです。

【岡田さん】「理容師をやってたので、『私もしかして人が好きかも?』って思ったんですよ。先生にお伝えしたら、『大学に心理学があるから、そういうところで勉強してみたらどうですか?』って」

何度もオープンキャンパスに通って心理学を学べる甲子園大学への入学を決めた岡田さん。この大学は、35歳以上の社会人が入学する場合、入学金全額に加えて授業料は半額まで免除される制度もあり、現在、5人の社会人が学んでいます。

しかし岡田さんは、高校から推薦入学したため、入学金(25万円)や授業料(97万2500円)は全額支払っているそうです。

【岡田さん】「高校で推薦入学を受けて入ったので、それ(35歳以上の社会人の減免制度)が受けられなかったんですよ。社会人ではないから」

■「女の子からは『あーちゃん』って呼ばれてます」と岡田さん

いつも同じ学部のお友達とお昼ご飯を食べている岡田さん。西中アナも、大学の学食で岡田さんオススメの唐揚げ丼をいただきながら話を聞きました。

【西中アナ】「みなさんからなんて呼ばれてるんですか?」
【岡田さん】「女の子からは『あーちゃん』って呼ばれてます。家で孫たちが『おばあちゃん』の『おば』を取って、『あーちゃん』って呼んでて、それが安心感があるって言ったら、『あーちゃん』って言われて(笑)。学校でも家でもあーちゃん」

西中アナに「馴染めるか心配だったか?」と聞かれ、「それは大丈夫そうだったでしょ?」と同級生に尋ねた岡田さん。同級生の2人にも話を聞きました。

【同級生の村越さん】「最初に見た時、岡田さん学校のスタッフかと思った」
【同級生の坂手さん】「私も誰かのお母さんかなと思った」
【岡田さん】「誰か『おばあちゃんが間違えて入ってきてる』って言ってた」

■同級生「いなかったら心理学部の2回生こんなに仲良くなかったと思います」

最初は同級生も年齢差に戸惑った様子でしたが…

【同級生の坂手さん】「私は高校4年間通ってたから、大学入学する時にみんなより1個上やからどうしよう。馴染めるかなって思ってたけど、入学式であーちゃん見た瞬間どうでもよくなって」

今では溶け込むどころか、学部にとって、いなくてはならない存在だそうです。

【同級生の坂手さん】「友達の間のつなぎをとってくれたり。あーちゃんおらんかったらこんなに友達できてなかったと思うから」
【同級生の村越さん】「岡田さんいなかったら逆に今の心理学部の2回生こんなに仲良くなかったと思います」
【西中アナ】「本当にみんなの橋渡し役。すごいじゃないですか」

■友人と勉強会も「2時間半教えてくれた」に「人生を変えてくれた」と同級生

午後の授業を終え、放課後はお友達と勉強会です。

【岡田さん】「前期の試験前は1週間の間、毎日2時間から2時間半教えてくれた。だから成績が取れたの」
【西中アナ】「岡田さんにとって、村越さんはどういった存在?」
【岡田さん】「もうなくてはならない存在。自分の血族よりも濃いかもしれないって変かな?いい人に巡り会ったなって思います」
【村越さん】「何回もおっしゃってます。私がいなかったら大学辞めてたって」

一方で、村越さんにとっても、岡田さんは「人生を変えてくれた存在」だといいます。

【西中アナ】「逆に村越さんにとって岡田さんはどういった方?」
【村越さん】「こういう年齢差があることによってしか学べない人生での経験談とか、私がこれから人生を生きていく上で、学んでいくことを岡田さんからお聞きできるので、私にとっても大変大きなメリット」

【村越さん】「中学校・高校とほぼほぼ不登校の人間だったので、不安に思いながら生きてたらいい人に巡り会えたなって」
【西中アナ】「岡田さんとの出会いが村越さんの性格も変えてくれた?」
【村越さん】「そうです。ある意味私にとっての運命の人のような存在ではある」
【岡田さん】「まぁうれしい!」

■家族も「すごいなと。できることはサポート」

学校が終わって、岡田さんのご自宅にもお邪魔しました。一人暮らしの自宅には、もちろん勉強机が!

【岡田さん】「勉強したりご飯食べたりパソコンしたり」
【西中アナ】「ぎっしりと本が。心理学とかあるんですけど」
【岡田さん】「英語が難しくて英語に関する本が。本だけはいっぱいあるんですよ」

すると、お孫さんのゆうさくんが遊びにきました。大学では勉強に励む岡田さんも、家では優しいおばあちゃん。そんな岡田さんの大学進学をご家族はどう思っているのでしょうか?

【岡田さんの娘】「単純にもうすごいなって。そこまでして行くっていうのはすごいなって思ったので、できることはサポート。本当に人生を謳歌してる感じですね」

■岡田さん「准学校心理士」目標「何でも話聞いてくれるおばあちゃんに」

家族の後押しと、たくさんの縁に恵まれた岡田さんには、さらなる夢があるそうで…

【岡田さん】「准学校心理士って資格が絶対取りたいなって思うんですね。小学校とか中学校の片隅におばあちゃんがちょこんと座ってて、『あのおばあちゃんのところに行くと、何でも話聞いてくれるのよね』っていうおばあちゃんになりたいんですよ」
【西中アナ】「素敵ですね」
【岡田さん】「そういうおばあちゃんになりたいなっていう夢があるんですけど。元気でいたらやってみたいですよね」
【西中アナ】「叶いますよ。あんなにいろんな方に協力されてるじゃないですか」

岡田さんは夢に向かって学び続けます。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年10月3日放送)

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