会期が残りわずかとなった大阪・関西万博。富山からも行かれた方が多いと思います。
その万博の会場に特別な思いで足を運んだ小学生親子の二人旅に密着しました。
万博で発見したのは「美味しい未来」です。
閉会を惜しむように、連日20万人を超える人が訪れる大阪・関西万博。「未来社会の実験場」をテーマに様々な社会課題の解決策が提案されています。
この日、富山から訪れた山本陽介さんと長男の大海くんです。
2人には万博で確かめたいことがありました。
山本さんは朝日町の泊漁協の漁師。
20年前に子供の頃から好きだった海の仕事に就くことを決意し、転職して漁師になりました。
大海くんは小学5年生。学校が休みの日はこうして父親の仕事を手伝っています。
*大海くん
「楽しいよ」
Q:お父さんの仕事すごいと思う?
「うん。すごいと思う」
Q:自分もやりたい?
「うん。まず船の運転したい」
Q:じゃあ将来の夢は?
「ユーチューバー」
Q:漁師じゃないの?
「ユーチューバーになってパパの魚がおいしいよって言う動画を撮りたい」
Q:大海くんなりの漁業のイメージがあるんですね。
「それで売りたい!」
さて、そんな2人が万博会場で訪れたのが日本館。
日本の伝統技術の考え方や最新テクノロジーを駆使して持続可能な循環型社会のつくり方が表現されています。
その一角、「あれ藻・これ藻・それ藻」と書かれたコーナーに並んでいたのは、植物「藻類」に扮したハローキティ。
新たなエネルギー源としての活用や自然環境を改善する働きなどその可能性に着目した展示、中には山本さん親子にとって馴染みのワカメやモズクもありました。
*大海くん・山本陽介さん
「モズクは初めて聞いた」
「お父さん、採ってますよ」
「採ってた?」
「大海、小さいころ食べたことあるんだよ。気づいてないだけ…」
その「藻類」がいま、危機的な状況に…。
*山本陽介さん
「モズクもそうだし、ワカメもそうだし、当たり前のように昔はたくさん生ってて採れたものが採れないんですよ」
灰付けワカメで知られる山本さんの地元朝日町では、古くからワカメ漁が盛んに行われていましたが、近年その面影はありません。
高級食材のクロモズクもこのところ生育不漁が続いています。
*山本陽介さん
「継いでくれればうれしい。だけど環境が変わってきている。子供たちが大きくなって漁業者になった時に。やっていけるのか、すごく不安はある」
そんな山本さんに光明が指したのが、ベンチャー企業ウニノミクスの朝日町への進出決定でした。
ウニノミクスは海洋環境の変化により増加したウニを集めて陸上で養殖し、商品価値を高めて販売する企業。
ウニが海藻を食べつくし、「藻場」と呼ばれる豊かな漁場が失われつつある海の救世主としての役割が期待されています。
そのウニノミクスが制作した企業紹介の動画に山本さん親子が出演。
そして、ウニノミクスが商品を供給する回転寿司チェーンの最大手「スシロー」の万博会場内の店舗で動画が上映されることになり、山本さん親子が見に来たというわけです。
「まわるすしは、つづくすしへ」
ここで提供されるのは、地球温暖化による海水温の上昇に適応し、最新技術で養殖した魚やウニノミクスのような海洋環境の改善を図る持続可能な漁業から生まれた、いわば未来の魚たちです。
「おいしい…」
*スシロー未来型万博店 FOOD&LIFE COMPANIES広報室 林麻夕美さん
「きょうはご来店ありがとうございます」
店の広報担当者が、山本さん親子にメッセージをくれました。
「これからも美味しいお寿司を食べ続けていくために、こんな技術で将来魚が獲れるとか様々な企業が研究されて、私たちも未来は明るいということを表現したいと思ってますし、どうやって持続可能にしていくか日々考えていますので、みんな頑張っているから、大海くんも大人になって魚を獲る仕事になるかもしれないけど、一緒に頑張っていこうね」
*大海くん
「はい」
*山本陽介さん
「素晴らしい。自分が思っていること、この変化、未来のことが本当に不安で、持続可能な未来につながるような取り組みをしていければいいと思います。本当に勉強になりました」
*ウニノミクス 石田慎太郎社長
「今後も寿司がおいしく食べられるというのが『万博のレガシー(遺産)』として起こってほしいと思っている。そのためには日本の海で魚が獲り続けられるようにということを願って、我々のような取り組みで海の環境改善がもっともっと起こっていて 今の状態が維持されている。もしくは今よりもっと元気になっているような未来があるのが必要なのかなと思っています」
2025年大阪・関西万博で示された未来社会が、この先やってくることを願わずにはいられません。
未来を生きる子供たちのためにー。
*大海くん
「万博のスシローの寿司がおいしかったので、また食べたいです」