2025年夏、静岡県出身選手が日本新記録を出しました。一躍ロサンゼルス五輪の大本命に躍り出た日本最速スイマーはケーブルテレビの営業マンです。いかにして最速記録を出したか取材しました。
愛知県豊田市に本社があるケーブルテレビ局。
ここで窓口業務などをこなす入社3年目の営業マン・松本周也(25)。
接客業も板についた若手社員のホープが2025年夏、凄いことをやってのけました。
7月に行われた競泳・静岡県選手権・50m自由形。
この日、驚愕のタイムが生まれます。
5レーンの松本はスタートからトップ独走。
後続の追い上げを許さず21秒64でフィニッシュ。
これが6年ぶりとなる日本新記録!
さらに、アジア新記録となったのです。
この快挙に社内は…
職場の同僚:
日本新記録は日本トップなので、みなさん祝福の拍手でした
松本周也 選手(25):
インスタのフォロワーが1000人くらい増えました。(Q.いろいろな人に自分を知ってもらいたい?)自分は種目をチェンジして、自由形に変えてから伸び始めたので…1つじゃないよとみんなに覚えてもらいたい
出身は下田市。
才能が開花したのは伊東高校でした。
4つの泳法をすべて泳ぐ個人メドレーで全国2冠を果たすと、その後、高みを目指して中京大学に進学。
この種目で国内トップクラスの成績を残してきました。
しかし、彼が出した日本新記録はメドレーではなく自由形。
ここに至るまでには、ある出来事が…。
メドレーは金メダリストの萩野公介などスター選手がひしめく激戦区。
力の差を痛感していた中、2025年3月の代表選考会でまさかのミスが…。
中京大水泳部・草薙健太コーチ:
レースから帰ってきたら珍しく「やってられない!」と言っていて、様子がおかしいのはレースを見てあんなに遅いわけはないから「どうした?」って聞いたら「ゴーグル取れました」と。本当に本人は悔しかったみたいで「こんな思いしたくない」と
代表落選。
この経験が大きなターニングポイントになりました。
下田市出身・松本周也 選手(25):
正直(大会の)数が限られてきている。代表になれることが限られてきてるので、1回1回大切にしたいなと思っている
そして、決断します。
メドレーから自由形への転向です。
元々、彼の自由形には水の抵抗が極めて小さいフォームという強みがあり、自由形に特化したトレーニングを積めばさらなる成長の可能性がありました。
ただ、メドレーは彼の代名詞。
種目の変更は簡単ではありませんでしたが、挫折が背中を押したのです。
まず決める、そして、やり通す…。
迷いを振り切った彼は強化に没頭します。
苦手の筋力トレーニングにも向き合い、3カ月でウェイトが10kg以上アップ。
これによってスタート台を蹴る力が磨かれ、より水平方向への飛び出しが可能になりました。
また、爆発的な推進力を生み出すため大きな負荷をかけたトレーニングも…。
中京大水泳部・草薙健太コーチ:
1.5mで一気に加速して、(10mの)タッチは4秒台になるように
食生活も見直し、仕事にも力を入れ、社会人アスリートとして心身ともに充実した日々を送ってきた彼にとって、日本新記録は偶然ではなく必然だったかもしれません。
そして、今回ある人からサプライズメッセージを預かりました。
伊豆伊東高校水泳部・戸塚雅晴 監督:
周也、日本記録おめでとう!高校時代にこの食卓で努力しながらご飯を食べて練習に打ち込んでいて、最近体も大きくなって、そういうことを思い出して頑張ってくれているのかなと思います
高校時代の恩師・戸塚監督。
ひとり暮らしだった彼を自宅に招き、食事の世話もしていました。
伊豆伊東高校水泳部・戸塚雅晴 監督:
次のロサンゼルス五輪では日本代表になって、地元の子供たちに夢を与えてくれるような選手になってほしい
下田市出身・松本周也 選手(25):
第2の父と言ってもおかしくないくらいずっと一緒にいました。高校の時を思い出せるようなエールだったので、初心の気持ちを忘れずにこれからも頑張っていきたい
多くの期待を背負った日本最速の営業マン!
目指すは3年後のロサンゼルス五輪。
松本周也、25歳。
伊豆から羽ばたいたスイマーに注目です。