連日のように、全国で相次いでいるクマの出没情報。

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特に報告が相次いでいる北海道では、9月までの目撃件数が3646件にのぼり、2024年の同じ時期に比べ大幅に増加。人的被害は4件で2人が亡くなっています。

クマが頻繁に人里に現れる原因のひとつと考えられているのが、観光客による“餌付け行為”です。
クマは、一度 人間の食べ物の味を覚えてしまうと、人から奪おうとしたり、車や家屋に侵入したりするようになってしまい、人の生活圏との距離感を縮めている可能性があるといいます。

さらに、人とクマの距離感”が近づいたことで、近年は“人を恐れないクマ”が増えているのです。

世界自然遺産にも登録され、今も年間100万人もの人が訪れる全国有数の観光スポットである知床。500頭近いクマが生息しているとされていますが、これまで人を襲うことはほとんどなかったといいます。

しかし、8月に登山客にも人気の羅臼岳で、26歳の男性とその友人が下山中にヒグマに襲われ死亡する事故が発生。
人が襲われた死亡事故は、世界自然遺産登録後、初めてのことだといいます。

羅臼岳登山口の山小屋を管理する 四井さん:
人はあんまり怖くないっていう個体が出てくると、今回みたいな最悪のタイミングで…事故が起きたと思うんだけど。
彼ら(被害者)が登っていった時間と、ほぼ同じ時刻に、「クマスプレーを貸して下さい」っていうお客さんがいて。その説明をしているときに、きっと(被害者は)登って行っている。そのときに声をかけられれば良かったのかも知れないけど…声をかけらなかったというのは、ちょっと悔しい。
もしかしたら、本当にこの先、人慣れしてしまったクマっていうのはどんどん出てくるのかという危惧はある。

『サン!シャイン』は、30年以上にわたりクマと人の共存に努める「知床財団」のパトロールに密着。取材で見えてきたのは、失われつつある人とクマの“距離感”でした。

連日クマが出没…環境省が監視カメラ設置

パトロール隊がまず向かったのは、「カムイワッカ湯の滝」。
温泉が流れる滝を登って行ける人気スポットですが、度重なるヒグマの目撃により、連日「終日利用中止」となっていました。

公益財団法人「知床財団」 玉置創司 事務局長:
「カムイワッカ湯の滝」が、ヒグマの出没で利用が止まりました。
カムイワッカは、今月(9月)に入ってすごくクマが動きだしていて、カムイワッカのお湯にクマが浸かっちゃったりしている。

冬眠に備えるため、今の時期は食料を探して動き回っているというクマ。
観光地を訪れた人がクマと遭遇しないために、パトロールは欠かせない大切な仕事です。

――どの辺りに出たんですか?
玉置創司 事務局長:

上の方ですね。ここから “一の滝”っていうところが見えていますけど、“三の滝”の右岸だから、登っていくエリアのところに出て見えたと。

さらに、玉置さんが“人慣れしたクマ”による被害が、特に懸念される場所があると案内してくれたのは、道路の近くを流れる 清流・イワウベツ川。
この川では、クマが魚を捕る様子が頻繁に目撃され、その姿を見ようと多くの人が訪れるといいます。

観光客らがクマに近づきすぎることなどを防ぐため、9月12日に環境省が監視カメラを設置しました。

美しい景色を楽しみに来る人も多く、玉置さんは観光客らにクマへの注意を促しながらパトロールを続けます。

玉置創司 事務局長:
できれば車から出ないでくれと。それがコントロールがきかなくなると渋滞になって、クマも逃げる場所がなくなるというか。実際に大勢に囲まれても、襲ってこないなって学習をすると、人との距離が分からない個体が生まれてくると。

「知床は我々人間が“おじゃましている場所”」

さらに、別の場所へパトロールを続けていると…、突然、車内の無線が鳴り響きました。
先ほどのイワウベツ川周辺でクマが現れ、人が集まってしまったといいます。

現場に急行すると、クマが出たことにより集まっていた観光客の姿はもうありませんでしたが、川の中に目を向けると…、ゆっくりと歩く大きなヒグマの姿が。

公益財団法人「知床財団」 玉置創司 事務局長:
クマですね!右側、川のところ。成獣クラスですね、大きめですよね。メスじゃないかな…魚がいないか探している感じですね。

近くには環境省のレンジャーも待機し、クマの動向を見守っています。

静かに撮影を続ける取材班に、玉置さんからもう少し下がるよう指導が飛びました。クマとの適切な距離は「50m」。気づかないうちに少し近づきすぎてしまったようです。

玉置創司 事務局長:
これは環境省が自然公園法の中で、著しく接近することとか、近距離のつきまといというのを禁止するために法改正をしたもので。50m以内だと(クマから)見えちゃうし、お互い姿が見えないのが一番いいと思いますけど、そんなに近くに行かないようにという意味で、50mというのが適切な距離なのかなと。

クマは10分ほどエサを探しながら移動した後、取材班の前から去っていきました。
今回は、環境省のレンジャーが人を近寄らせなかったため、混乱などは起きませんでしたが、過去にはクマの数m近くにいた観光客が転んでしまった事例もあったといいます。

玉置創司 事務局長:
距離の話だったり、環境省が設置した監視カメラの話は、ある程度距離を見つめ直す機会として、検討策としての第一歩だろうなと思います。

失われつつある、人とクマとの距離感。
それを少しでも取り戻すために、私たちができることはあるのでしょうか。

玉置創司 事務局長:
知床半島は、もともとヒグマのすみかに、我々人間がおじゃましている場所であって、謙虚な気持ちというか、人側もヒグマに対してやっていけない行為があると、ぜひそのこともわかっていただいた上で、知床を訪問していただければ非常にありがたいと思います。
(「サン!シャイン」 10月2日放送)

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