特集です。瀬戸内海の小さな島を巡って外国資本による土地の取得が、いま取りざたされています。多島美として知られる瀬戸内に何が起きているのか緊急取材しました。
広島からも訪れる人が多い人気の観光スポット“瀬戸内のハワイ”と呼ばれる山口県の周防大島から船でおよそ10分。
離島・笠佐島。
釣りのスポットとしても知られています。この島の住民は、わずか7人。
この、のどかな島に異変が起きています。
25年前から笠佐島で別荘を所有している八木秀也さん(79)です。
【島に住民票 八木秀也さん】
「土地を中国人が買った、知らない間にできるんですよね。(島の)裏で造成しているのは噂で聞いているけど」
中国人が取得したとされる土地は、人々が出入りする船着場や住宅とは反対側に位置しています。
八木さんの案内で取材班が船で向かうと、山の中に開けた土地が…工事用の重機で土地を整備しているように見えますが、建物は建っていません。
【島に住民票 八木秀也さん】
「聞く話では別荘地と聞いているんですけど、別荘地にしても(この土地は)電気は通っていても水がないんですよ。水をひくのは難しいと思う。私は別荘地にはしないと思っています」
周辺には新たに設置されたとみられる電柱もあります。
土地の登記簿を調べたところ、中国・上海に住所を持つ中国人らしき人物が所有していることがわかりました。
中国のSNSには笠佐島に関する投稿も…“安いね、どうやったら買えるの?”
”どうやったら買えるの?” “すごく欲しい” さらに… “買いなよ”
“買ったら中国国旗を差すのを忘れないで” 島の住民は、不安を抱えています。
【島民は】
「私ら住んでいる人は別に何をされたとか、被害を被ったとかはありません」
(Q:心配や不安は)
「そりゃあ、ありますよ。皆中国の人になったら私ら(日本人)の方が少ないじゃない」
また、安全保障の観点からも懸念は尽きません。
【島に住民票 八木秀也さん】
「ここに住むために土地を買うならいいんですけど、何をするかわからない。すぐに岩国の基地があるでしょ、呉があって。中国の有事の時に、中国人が買った土地は中国(政府)が自由にできる。怖いですよね」
笠佐島のある周防大島町では議会でも外国資本の土地購入について議題に上りました。
【周防大島町 白鳥法子 議員】
「住民登録をせず、外国人が土地等不動産を取得した場合、その実態を町はどのように把握することができているのでしょうか」
【周防大島町・藤本淨孝 町長】
「登記情報には所有者の国籍や土地の利用目的は記載されておりませんし、現在の国の法令では外国人の土地所有に関する制限は限定的なものとなっており、地方自治体が独自に制限を設けることも適切ではないと考えております。適切な機会を捉え、例えば町村会などを通じて、県や国へ積極的に要望等を行ってまいりたいと考えております」
藤本淨孝町長は「国で検討されるべき」と述べるにとどめました。
そんな中、島民らは自分たちにできることをしたい、と動き始めています。
「笠佐島を守る会」を結成し、島での活動拠点をつくりました。
【島に住民票 八木秀也さん】
「(島を)活性化することで守れるんですよ」
【笠佐島を守る会のメンバー】
「人の出入りが少しずつでも回復すればいいですよね。美しい場所ですし、島の方々と交流をもちながら、島をどうやって守れるかを島民と考えていきたいと思います」
一方、中国人に土地を売ったとされる不動産会社はTSSの取材に対し
「ちょっと今取り込んでいるから、申し訳ないけど」
Q:いつごろ対応できる?
「無理です」
Q:いろいろ報道があるが・・・
「嘘ばっかり嫌ですから、結構です。全部嘘です」
外国資本による日本の土地購入問題…今、国民の関心が高まっています。
<スタジオ>
ここからは、この問題をカイセツします。
取材にあたった胡子記者の取材メモによるとこちら今回の中国人の土地の売買は法的には問題ないとみられていますが、購入された土地が長期間放置され、何に使われるかわからないという状況に、島民の皆さん不安を抱えている現実があるようです。
匹田さん、やはり自分たちが住んでいるところで一体どのように土地が利用されるようになるのかというところは当然心配されるところですよね。
【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「外国人に限らず、日本人同士であっても、よそから来た人が、利用目的がわからなくて不安っていうのは、よくある話なんですけれども、一方で私個人の意見としては納税者でない人が土地を保有するってのに対してちょっとなんか反対の意見を持っています。やはりこの日本の土地って、治安だとか環境とか、そういったものを含めての価値だと思うので、土地だけを買ってしまうってなんかいいところ取りをされているような感じがします。
当然、この安易な排斥主義は否定しなくてはなりませんが、この国の安全を考えたときにこの辺りをどう考えていくのかというのは当然必要な問題かと思います。
その中で、こちら!政府も動き出しています今年7月には「外国人との秩序ある共生社会推進室」という、外国人による土地の取得などの課題に取り組む組織を新設しました。
関係省庁が横断的に問題の実態把握や制度の見直しに取り組んでいくということです。
来月4日投開票の自民党総裁選でも、外国人政策が論点になっていて、外国資本による不動産の取得規制についても活発な論戦が行われています。
今後、どのような具体論が出てくるのか、注目されます。