5年に一度の国勢調査が始まっています。国勢調査は日本に住むすべての人と世帯を対象に行われる重要な統計調査ですが、調査員のなり手不足にどの自治体も頭を悩ませています。
そんな中、勝山市では90歳の調査員が活躍していると聞き、密着取材しました。
「ネットでもいいし手書きでもいいし郵送されてもいいし、書き方はここに色々書いてありますので」
勝山市の飯田章さんは、90歳の国勢調査員です。これまで行政の様々な調査に携わり、国勢調査は今回で6回目のベテランです。
調査がスタートした9月20日も朝から町内を歩いて回りました。飯田さんの担当は自宅周辺の約60軒。国勢調査員は原則1軒1軒、対面で資料を手渡し説明しなければなりません。
訪れた家の人と気さくに話をしながら、調査をお願いします。
飯田さん：「記録するのは1枚につき4人までになっているけど、ご家族何人ですか？」
住人：「11人です」
飯田さん：「え？11人？でれば今月中とあるけど、10月の初めに回りますのでね」「お父さん元気ですか？買い物で時々会うんですけど」
住民：「5年に1回やで忘れてまう。これ書くんやの」
飯田さん：「ネットでも手書きでも結構です」
住民：「ネットか郵送にします。飯田さん回ってくるの大変やで」
住民も「90歳までこんなことができるなんでうらやましいくらい。すばらしい」と驚きます。
飯田さんは製薬会社を定年退職後、町内で調査員をしていた先輩の後を引き継ぐ形で登録調査員になりました。現在は体力づくりも兼ねているということで、調査用の袋を手に軽快に歩いています。
日中は不在の家が多いことや、高齢者だけの世帯では対応が難しいことなど課題にも直面しています。
「高齢だと、なかなか自分で読み書きができないから手伝わないといかん」と使命感を感じている飯田さん。
今回の国勢調査では109人の調査員を必要とする勝山市。過去の統計調査の経験者や市の職員のOBなどに声をかけるなどしましたが、調査員確保に苦戦したといい、一般公募をするも20人しか集まりませんでした。
市の担当者は「昔なら60歳で定年退職して、調査員をやってもいいと引き受けてくれる人もいたが、今では75歳でも40％以上が働いていることもあり、引き受けてくれる人がだんだん少なくなっている。最後は誰にお願いしていいのか相手さえ見つからず、とにかく区長さんに“すがるように”お願いするしかなくなっている」と厳しい現状を話します。
調査員確保に苦労する中、飯田さんは、どのような調査も快く引き受けてくれる頼もしい存在です。「物腰が柔らかくとても真剣に取り組んでくれるので安心して任せられる」と市の職員も信頼しています。
歩きながら携帯を出した飯田さん「6000歩、歩いた」と誇らしそうな表情。調査票を手に留守宅などを繰り返し訪問する必要がありますが、体が続く限り、市から依頼された統計調査を引き受けたいと考えています。「5年後の国勢調査は、といったらそれは分かりませんねぇ」と笑顔で話してくれました。
実は、県内最高齢の国勢調査員は坂井市の93歳で、調査には初めて挑戦しているそうです。こういった高齢者の活躍が必要なくらい調査員の確保はどの自治体も苦労しているようです。1地区あたり4万円程度の報酬があるということですが、公募をしてもなかなか集まらないといいます。
また、オートロックのマンションなどが増えて直接面会できないことや、国勢調査員をかたった詐欺なども発生していることなどから回収が困難になっているケースもあり、調査自体も難しくなっています。
調査員の負担軽減のためにも、国はインターネットでの回答を勧めているということです。回答期限は10月8日です。
