8月20日、神戸市中央区のマンションで、24歳の女性がナイフで刺され死亡した事件。
逮捕された谷本将志容疑者は、事件の日まで3日間被害者を執拗に追い回しており、3年前にも同様のストーカー行為で、執行猶予付きの有罪判決を受けていました。

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なぜ再び犯罪は起きてしまったのか。「サン!シャイン」は、ストーカー行為で問題をおこした経験がある“元ストーカー”たちと、その更生を手助けする人物を取材。
更生支援団体も「困難な道のり」だという、“更生の実態”に迫りました。

ストーカーを止められない理由…

9年前に、ストーカー加害者の更生支援団体「ストーカー・リカバリー・サポート」を設立した、守屋秀勝さん。

医師や弁護士などと連携し、独自の「更生プログラム」を運営。現在、6人のメンバーが所属し、近況の報告やテーマに沿ったディスカッションを行っています。

かつて、一方的に好意を寄せていた女性にストーカー行為を繰り返していたと話すのは、晴樹さん(仮名)。

毎日のように女性の実家の近くをうろついたり、SNSをチェックするなど、女性の行動を監視。住んでいる場所を特定して、待ち伏せしたこともあったといいます。
これまで3回逮捕され、現在は執行猶予中です。

週1回ほど、仲間とともに、様々なプログラムに参加する晴樹さん。この日はディスカッション、テーマは、神戸市で起きたストーカー殺人事件です。

過去にストーカー行為を行った 晴樹さん(仮名):
今回の神戸の殺人事件に関しては、ストーカー心理とはちょっと違う。
僕もその…相手1人には執着しましたけど、他の人に執着したことはないんで。無差別に…しかも見かけただけっていう。で、執着に至るっていうのは、ちょっとあんまり理解できなくて。

本音を引き出そうと、聞き役に徹する守屋さん。更生に大切なのは「人との関わり」、できる限り多くの人で見守り、支えることが重要だといいます。

「ストーカー・リカバリー・サポート」 守屋秀勝代表:
同じ悩みを抱えたもの同士が、一同に集まって、様々な意見を出し合う。その中で間違ってもいいから、1つの問題に対してディスカッションをし合うっていうのは、ストーカーからの回復を、著しく早く促す効果があるんです。

しかし、更生は簡単なことではありません。晴樹さんは、執行猶予中の今も被害者に対して「申し訳ない」という気持ちには至っていないといいます。

過去にストーカー行為を行った 晴樹さん(仮名):
まだそこまで思えるほど回復はできてないです。
(ストーカー行為が)悪いことだとわかるけど、(逮捕されたときの)あの状態では、むしろ我慢した方なんですよ自分では。なんで、仕方なかったなっていう気持ちの方が大きいですね、今は。
やっぱり相手のことを知りたい気持ちはあるので、逮捕されない程度に、何か関連する場所に行ったりとかしたいな…。

「ストーカー・リカバリー・サポート」 守屋秀勝代表:
ストーカーっていうのは、たばこやお酒なんかと同じように、依存症の分類に入ると僕は思っているんですよ。
相談者の中には、依存対象者と接触できないっていうことで、守屋さん苦しいよ、助けてよって言って、LINEビデオ22時間ずっと繋ぎっぱなしで、叫び続けていた受講生もいるんです。そのぐらい顕著に、禁断症状が出てくるのが“ストーカー”なんですよ。

過去に自身もストーカー行為

実は、更生プログラムを行う守屋さん自身も、ストーカーをしていた過去がありました。
現在59歳の守屋さんは、30歳から20年間、6人の女性にストーカー行為を繰り返していました。

10年前に入院治療を受けたことがきっかけで、ストーカーの更生プログラムの重要性に気づき、今の団体を立ち上げたといいます。

現在は、タクシーの運転手として働きながら、会社から許可を得てストーカーのサポートを行っている守屋さん。加害者だけでなく、ストーカー被害を受けている被害者からの相談も後を絶ちません。

「3年後、自分生きているのか…」と不安がり電話をかけてきた被害者に、「生きていられるよ、死んだらあかんで!」と力強く言葉をかけます。

「ストーカー・リカバリー・サポート」 守屋秀勝代表:
加害者っていうのは、喉元過ぎたら、熱さ簡単に忘れちゃうでしょ?でも被害者の方は、そのことが原因で、人生棒に振ることってあるんだよ。一生涯拭いされない深い心の傷を負う人、たくさんいるんだよって。
今、こういった活動をやっていることが、逆にいい状態を維持するステージにつながっている。きょう1日、ストーカー行為をやらない。(その繰り返しが)何年、何十年たった時に、ストーカーから脱却したことにつながる。

ストーカー行為を行わない日々の積み重ねこそが更生だといい、更生プログラムを運営する守屋さん自身、そんな日々を10年続けているのです。

26年間1人の男性に執着「GPSを絶対に外せない」

取材中、守屋さんの元にLINEを通して1通のメッセージが。

「こんないい午後は人を殺したくなりますね」

不穏なLINEのメッセージの送り主は、26年間1人の男性に執着しているという女性。
守屋さんが受講生の中で特に気にかけているという、早苗さん(仮名・46)です。

早苗さんがストーカー行為を始めたのは、大学生だった20歳の時。
合コンで知り合った男性の容姿に一目ぼれして、早苗さん自らアタック。交際を始めたものの、2週間後、男性から突然、別れを告げられたといいます。

26年間1人の男性に執着している 早苗さん(仮名):
もう見た瞬間から王子様みたいだなと思って、好きになってしまったんですね。
「別れよ」って言われたんですけど、それだけのことなんですけど…、まだ20歳でしたので、逆上していっちゃったんですね。
ちょっと諦めきれなくて、ちょっと何10回とメールして、何10回も何100回お電話して、それで、とうとう携帯電話を変えられてしまったんですね。

別れた後も心の中から男性への思いが消えず、気が付けばストーカー行為を繰り返していた早苗さん。メールや電話だけではなく、ドアの前に張り紙をしたこともあったといいます。

その後、男性とは連絡がとれなくなり、今では、男性がどこで何をしているのか分からないといいますが、それでも…。

――どういう時に相手を思い出すんですか?
26年間1人の男性に執着している 早苗さん(仮名):

毎日です。まず寝たら、夢に出てくるんですよね。夢にできて、起きて「うわー」ってなって、会えないなと思ったり…。もやもやしているんですね、執着して。

46歳になった今も、変わらない男性への執着。
守屋さんが「会って何がしたいの?」と聞くと、「復縁したい、(かなわなければ)諦めます」と話しますが、その言葉とは異なり、守屋さんの元には連日のように早苗さんから不穏なメッセージが…。

「斧買いたいです」
「どうしても人を殺したいんです」
「チェーンソーでバラバラにしたいです」
「もう我慢できません。明日メッタ刺しにします」

今にも犯行を起こしかねないメッセージの数々。
不穏なLINEが送られてきた直後、スマホをチェックする守屋さん。実は、早苗さん本人の了承を得てスマホのGPSアプリから、その行動が確認できるようになっているのです。

早苗さんが家から離れていないことを確認し、電話をかけます。
「殺したらあかん」と言う守屋さんに、「もちろんです。その何回も言っていますよ。でもちょっと憎しみは、どうしたらいいのかわからなくて」と答える早苗さん。

26年たった今も、消えることのない憎しみの感情…。

26年間1人の男性に執着している 早苗さん(仮名):
ダメに決まっていますよね。(殺すなんて)しませんよ。しませんけど。しません、しません。出るだけで八つ当たり的なのあるんですよね。絶対そうなったらお縄になるのわかりますし。

「ストーカー・リカバリー・サポート」 守屋秀勝代表:
だけど、ごめんな。あなた発作でやる可能性は、僕は高いと思っている。だからGPSつけている、あなたは絶対に外せない。

更生への遠い道のり。
彼らにストーカー行為を繰り返させないために、どうすればいいのでしょうか?

「ストーカー・リカバリー・サポート」 守屋秀勝代表:
強制的な治療義務化、それとGPSの強制的な装着義務。そして、更生支援の強制的義務化。これをやらなければ、何の罪もない被害者がまた殺される可能性だってあるんですよ。本当にストーカー規制を抜本的に改正してほしい。
(「サン!シャイン」 9月30日放送)