大阪・関西万博の一環でオーストリアの靴職人が岩手県内に滞在し、古い布を裂いて織り上げる東北の工芸品「裂き織」の制作に取り組んでいます。
ヨーロッパの文化と日本の「もったいない精神」が融合した作品づくりのようすを取材しました。
滝沢市にある「裂き織」の工房でオーストリアの靴職人、マティアス・ウィンクラーさん(44)が作品づくりに励んでいます。
マティアスさんは、大阪・関西万博の一環で、EU=欧州連合が企画したアートプロジェクトに職人の一人として参加し、8月末に来日しました。
9月1日から「裂き織」製品の販売などを手掛ける「サッコラシェアグローバル」の石頭悦さんと共に、裂き織の技術を生かしたアート作品を作っています。
10月1日まで岩手県内に滞在して、古い衣類や新聞紙、ペットボトルのラベルなどを活用し、タペストリーなど6点ほどを完成させる予定です。
普段から古くなったじゅうたんなどを使って靴を作っているというマティアスさんは、使わなくなった素材を再利用する「裂き織」の文化が自分の信念に通じるといいます。
オーストリアの靴職人 マティアス・ウィンクラーさん
「(裂き織の)何も無駄にせず別の方法でその命をつなぐという、この精神と考えは私の信念に非常に近い」
作品づくりをサポートする石頭さんもプロジェクトを通じて「裂き織」の精神が世界に広がることを期待しています。
Saccora Share Global 石頭 悦CEO
「(裂き織は)日本人の持つ『もったいない精神』が形になったもの。ヨーロッパの方でも裂き織を色んな人に知ってもらえれば良い」
マティアスさんが制作した作品は10月から京都市で開かれるイベント「Design Week Kyoto」で展示され、10月3日からは万博のEU館で作品づくりの様子が映像で紹介されます。
オーストリアの靴職人 マティアス・ウィンクラーさん
「このプロジェクトで(絹や麻だけではない)さまざまな素材を使用できるという裂き織の側面や汎用性を示したい」
「もったいない精神」を大切に、さまざまな素材を使うことで裂き織の新しい可能性を追求したいと語るマティアスさん。
岩手での経験を生かし今後は裂き織の靴を作りたいと意気込んでいます。